大人オリジナル小説
- 黒猫の思惑(BLスピオフ)完結
- 日時: 2021/12/31 23:38
- 名前: 白楼雪
※こちらは小説『黒猫の誘惑』のスピンオフ作品です。
※小説『黒猫の誘惑』はR18作品でしたが、スピンオフ作品の『黒猫の思惑』は冬木と関わる以前の桜夜の事。
あの日冬木と関わる前の桜夜の心情を綴った話ですので、年齢制限の必要なシーンはありません。
※更新は相も変わらず亀更新となるかと思います。
それでは、黒猫の思惑始めさせていただきます。
2021/12/31 年の終わりに、黒猫の誘惑のスピンオフ「黒猫の思惑」完結しました。
- Re: 黒猫の思惑(BLスピオフ) ( No.6 )
- 日時: 2021/11/06 03:56
- 名前: 白楼雪
店員はそれ以上何も言わず、琥珀色を含ませたグラスをテーブルに差し出す。
そのグラスを桜夜は瞳を細め見つめ、酒代として硬貨をテーブルに乗せた。
「まあ、そのうち御使いも受けるよ」
そう一言告げ、グラスを手に桜夜はカウンターを離れ奥の席へと向かった。
この仕事は、楽しい。
細い綱の上。薄いナイフの刃。それらを思わせる命のやり取りはいつも刺激に溢れていて、生と死を実感させてくれるのだから。
生ぬるいなんの変化もない生活を送るくらいならば、短い人生となろうとも生を感じて生きたいと桜夜は思うのだ。
だが、最近はその刺激にも物足りなさを覚えてきた。
刺激に慣れすぎたせいだろうか。命の価値が薄く安く思えるようになったのだろう。
再びこの仕事に喜びを感じるには、自身の命に重さを持たせなくてはならない。
重く失ってはならない価値を感じる事で、あの甘く痺れるようなやり取りが蘇るのだから。
「とはいってもなぁ。手頃なものもないし」
命に重みを持たせる上で、一番手っ取り早いのは執着だろう。
命あるから獲られるもの。死しては触れられないものが存在して、それに強い魅力を覚えられる。そんなものを見つけられれば、より生を求める事が可能となるものだ。
他にも命を失う恐怖というものもあるが、桜夜にとってそちらは望みが薄い。
普段から失う恐怖に触れた仕事を重ね、それに麻痺してきているのだから効果が薄いのは想像に難くない。
その事からやはり今求めるべきは、桜夜が失いたくない。生きたいと思えるほどに魅力的な何かだろう。
食事。酒。娯楽。女。どれもこれも飽きがきている。
他にもっと桜夜を楽しませ、欲を駆り立てるようなそんな物があれば。
奥の席へ向かう途中、近くのテーブルの賭事を流し見る。