大人二次小説(BLGL・二次15禁)
- FINAL FANTASYでぐだぐだ書く。
- 日時: 2017/01/20 22:08
- 名前: 月音
こんにちは、月音です。
今回はFFのBL小説を投稿させて頂きます。
ただ……一つ断っておきたい事がございます。
私、今のところ、FFのゲームをプレイした事が残念ながらありません。
シアトリズムのみです。
いえ、小説も攻略本も読みましたし、ストーリーもあらかた存じています。
DVDも見ました、CDも全部聞きました。
ただ時間が無く……プレイ出来ずにおります。
おまけに守備範囲がひどく狭いです。
ですので、設定がおかしかったり、口調が違ったりしてしまうかも知れません。
広いお心で読んで下されば、これ以上の幸福はございません。
……そうでした。
私はFFのストーリーやキャラクターも大好きですが、
それと同じくらいに曲が大好きです。
なので、曲に勝手に歌詞をつけています。
それも投稿していきたいと思います。
では、どうぞよろしくお願いいたします。
- Re: FINAL FANTASYでぐだぐだ書く。 ( No.22 )
- 日時: 2017/02/06 21:39
- 名前: 月音
題名英語三部作・パラレル
それは、私が私でなかった時のお話。
「レーノ兄!リナ姉とじゃなくて私と話そうぜ、と!」
「うるせぇな俺は取り込み中なんだぞ、と」
「そうですよ、静かにしてくれます?」
「何だ、真面目な話だったんだ。邪魔してごめんなさーい」
悪びれず謝る。本人は謝っているつもりなのだろうが、傍目にはそう見えない。タークスの仲間はもう慣れっこなので咎めないが。
「まあ、もういいぞ、と。で、何だ?何か用か?」
「あ、えっとね、私も仕事連れてってよ!もうずっと雑魚の掃討とか諜報とかしかしてないから、一発大きいモンスターの討伐したいんだ!」
「駄目却下」
「早ッ!何で何で!?レノ兄達ばっかりずるいよ、一杯敵さん殺せてさ、と!」
幼い子供のような無邪気さで残酷な事を言うものだ。それを愛らしそうに──鬱陶しそうに──見遣り、返した。
「まだ小さいお前には早過ぎる。大きいモンスター程危ないんだぞ?危険な目には合わせられねぇよ」
「それにタークスの仕事にモンスター退治は少ないでしょう。諜報の方がよっぽどタークスらしいです」
「レノ兄、リナ姉、私もう小さい子供じゃない!並みのソルジャーより強い筈でしょ?だからお願いだって!」
パンッと手を合わせて拝む。二人は困ったように互いの顔を見合わせ、首を振った。そこへルードがやって来て、口を挟んだ。
「過保護だな」
「うっせえよ、と」
「ルド兄さん!ほらほら、ルド兄さんはこう言ってくれてるよ?」
「任務へ連れ出していいという意味ではないが」
「ええ……でもさぁ……やっぱり寂しいんだもん……私だけ仲間外れみたいで」
しゅんと意気消沈する様子はやはり叱られた子供のようだ。レノは兄という立場故か、どうしてもついつい甘くなってしまうのだった。だから厳しく、とは思う。
「明後日」
後ろから声が聞こえ、一斉に振り向く。そこには主任、ツォンの姿があった。
「ソルジャーとの合同任務がある。それならお前が納得する強大な敵とも戦えるだろうし、それ程危なくもないだろう」
「主任……甘いぞ、と」
「ええ、でもそれじゃあスリルが足りませんよ……それに私、ソルジャー嫌いです」
「なら別に来なくても構わん。ただしそれなら後数ヵ月は大きな任務はないがな」
「ごめんなさい!行きます行かせて下さいお願いします!よっ、ツォンさん男前!」
「ツォンさんに何て軽口言うんですか!」
「リナ姉堅苦しいぞ、と」
ツォンの提案にすっかり気を良くして、満面の笑みだ。明後日、何が起こるのか、まだ誰も知らない。
あれから二日。その日がやって来た。ヘリコプターでレノの隣に腰掛け、体をもたれさせている。その表情はどこか不安げだ。
「おい、大丈夫か?酔ったか」
「そんな訳ないでしょ……ただ、やっぱり怖いかも。敵がじゃなくて、ソルジャーが」
「…………」
まだタークスに入りたてだった頃、彼は見た目の女らしさから襲われた事があった。それがソルジャーだったのだ。
『止めて下さい!それが人を守るソルジャー
の仕事ですか!?』
『んだよ連れねぇなぁ。嫌じゃねぇだろ新入りちゃんよぉ』
『私の兄は、強いんです!あなた達なんて社長に言ってクビにして貰いますよ!』
『タークスだろ、どうせ。俺らは神羅カンパニーの花形だぜ?そんな汚い仕事ばっかしてるやつなんか、消せるっつの』
『っ!それ以上言ったら、怒るぞ、と』
『可愛いなぁそうやって吠えてるやつは!』
『殺れるもんなら殺ってみろよ』
『………』
『痛っ!んだとこいつ!優しくしてりゃつけあがりやがって!』
『……こっちの台詞だぞ、と』
『うわあああ!』
『ヒッ!そ、そんな事していいと思ってんのかよ!』
『…………』
『や、止めッ……!ウボァー』
彼はそいつらを半殺しにした。そして若社長のルーファウス神羅に自分から言いに行った。正当防衛だと見なされ事なきを得たが、心の傷は深かった。
「レノ兄……あんな人、そうそういないんだよね?ソルジャーが皆が皆、悪い人じゃない筈なんだ……分かってるんだけどな、と」
「ああ。俺の知り合いも参加してる。全然悪いやつじゃないぜ。それに、俺がいるだろ、と」
彼はレノかタークスの仲間がいなければ、ソルジャーのいる食堂やフロアには近寄らなかった。一見ちゃらんぽらんに見えても、心はナイーブなのだ。
「レノ兄……レノ兄は、私のこういう所がまだまだ子供だって思う?」
「いや、仕方ねえだろ。お前は強いぞ、そういう所」
「へへ……ありがとう」
頬を緩ませ笑う。二人は少し距離を縮め、現場へと向かった。
「ただイリーナを縮めてリナ姉ってのはどうかと思うけどな、と」
「おお!レノ久しぶり!てか誰だよその可愛い子!タークスにいたっけ?」
「初っぱなから煩いのが……」
「(ソルジャー怖いガタガタ)」
ヘリを降りると近づいて来たのは、レノの知り合いのソルジャー、ザックスだった。
「ザックス、こいつに手ェ出したら許さないからな、と」
「何でお前が?もしかして彼女?うっわ羨ましー!」
「……」
「なあなあ君、名前何て言うのかな?今度俺とデート一回とかどう?」
「っ……レノ兄……」
「こいつ怖がってんだろ、バカ犬が」
そんな茶番を見てルードはため息を吐いた。
早く仕事にかかれと言いたい。
「おい、班分けだ。話を聞いておけ」
「……レノ兄」
「ん、分かってるぞ、と」
何と幸か不幸か、班はイリーナ、ザックス、
そして彼だった。
「良かった……リナ姉いたら安心」
「何だか調子が狂いますね。そんな弱気なあなた、見たことありませんよ」
「ソルジャーがいなくなったら戻る筈」
「本当に怖いんですね」
「イリーナちゃんじゃん!久しぶりだなあ、
デート一回の約束は〜?」
「した覚えがありません」
そんな呑気な会話をしながら鬱蒼とした森の中を進む。彼は後ろの方で抜き身の刀を引っ提げて歩いていた。
「ほんっとイリーナちゃんは可愛いよ、神羅に咲く一輪のユリって感じだ!」
「はあ……」
「一回俺とデートしようぜ、な?こんな可愛いんだし、皆放っとかないだろ?俺にも慈悲をかけてくれって!女神様〜」
ちゃらちゃらとイリーナを口説くザックスとそれに気の無い返事を返すだけのイリーナ。
と、彼がつと二人を追い越して前へ出た。
「……リナ姉に惚れるのは勝手だけど」
二人に背中を見せ話しかける。二人は何事かと見ているだけだ。
「もしリナ姉に迷惑かけたら」
にわかに殺気を放ち、ザックスに向かって刀を振り下ろす。彼の横に、今にも襲いかかって来そうなモンスターがいたのだった。そいつを半ばまで一刀両断してから、ちらとザックスを見て言った。
「……こうだから」
ザックスが笑顔のまま固まる。イリーナはモンスターに気付いた彼を誉めて、耳元で囁いた。
「ありがとう。ちょっと困ってました」
任務が終わってから。
「なあ」
「……?」
「レノに聞いたよ。ソルジャー嫌いなんだっ
てな」
「……うん」
「俺の仲間はそんな奴いないからさ、もっと知って欲しいんだ。だから、俺とトモダチにならないか?」
ザックスの提案に目を丸くする。どうしていいか分からずレノをうかがうと、笑って頷くだけだ。
「レノ兄……私、どうしたらいい?分からないよ、と」
「それを決めるのはお前だろ、と」
「私、が……」
目の前の男に視線を向けると、明るい笑み。
逡巡してから、彼は差し出された手を握った。
「よろしくお願いします、と」
「お?おお!こっちこそよろしく!」
「こいつがソルジャーと……」
レノは驚いた。隣にいたルードが言う。
「子供はいつか巣立つものだ」
「別に子供扱いしてた訳じゃねえけど」
「嬉しいんだろう」
「……まあな、と」
確かに嬉しかった。ザックスはいい奴だしこいつがこうして笑えるなら良い。ただ、少し妬いた。
すると彼が走って近付いて来た。
「レノ兄レノ兄!私、トモダチ出来ちゃったよ!しかもソルジャーの!ねえレノ兄、ありがと!」
「何で俺に?」
「レノ兄がいつも励ましてくれたから、私は立ち直れたんだぞ、と」
満面の笑みで抱き着いて来る弟が非常に愛らしい。ヤバイ。
「ああもうお前ってやつは!大好きだぞこいつ!おらおら〜!」
ぎゅっと抱き締め頭を小突く。イリーナとルードが全くこの兄弟は……というように苦笑しあった。何だかんだ言ってもこの二人が仲良く無い事なんて無かったのだ。彼が素直で単純過ぎるので、レノが勝手にやきもきするだけなのだ。
「本当に何と言うか……」
「人騒がせな兄弟だ」
そう言われているとは知らず、その兄弟はソルジャーが見ているのも構わず仲を深め合っていたのだった。
- Re: FINAL FANTASYでぐだぐだ書く。 ( No.23 )
- 日時: 2017/02/07 21:19
- 名前: 月音
続
きいきい、きいきい。
車椅子の車輪が軋む音がする。
きいきい、きいきい。
車椅子に座っているのは少年だ。
きいきい、きいきい。
車椅子を押しているのは青年だ。
きいきい、きい……。
車椅子が止まる。
着いたのは図書館だった。
少女と見間違えそうな程華奢な少年を車椅子から下ろし、立たせ、支える青年。
少年はふらつきながらも自分で立とうとしている。
二人はゆっくりと図書館の中に歩いて行く。
少年が手を振って、青年の支えを断った。
青年は頷き、二人はそこから別々の場所へ向かった。
少年はじっくりと沢山並んだ本を選定しようとする。
一つの本棚の前で止まり、すっと本を抜き出した。
ぱらぱらとページを捲り、読み始める。
腰まであろうかという長い髪を、細い指先で耳にかける。
途中でぱたりと本を閉じ、また歩き出した。
その行為を何度か繰り返し、やっと気に入っ
た本が見つかったのか、微笑んで頷いた。
小さな文庫本を小脇に抱え小走りで嬉しそうにどこかへ向かう。
と、ふらりとバランスを崩してくずおれる。
驚いた周りの人々に何とか笑顔で答え、気丈にも助けを断った。
そこに青年がやって来、少年を助け起こしてその場を去った。
近くのベンチに腰かけると、少年の顔は青ざめ、辛そうだった。
無理をするのはいけないと叱られ、申し訳無さそうに微笑む。
心配そうな青年に本を手渡し、貸出手続きを頼んだ。
青年は苦笑し、走り出した。
それを笑顔で見送り、少年は目を閉じた。
自身の体力の無さを嘆き、迷惑をかけた事を詫びている表情だった。
ここでこの二人を紹介しよう。
青年は神羅カンパニーのタークスのエースことレノ。
少年はレノを実の兄のように慕っている、タ
ークスの一人だ。
少年は半年程前、以前危害を加えられた元ソルジャーに卑怯なやり方で捕まり、急性麻薬中毒者と化していた。
急に麻薬を多量に接種した所為で昏睡状態のまま、何度も犯され、麻薬を吸わされた。
脳も体もボロボロだった。
どうにか少年を助け出し、麻薬を体から抜いたはいいが、後遺症として身体機能は低下したままだ。
そして彼は、元ソルジャーの奴等に犯された記憶を失っていた。
レノ達は少年に、任務中の事故で内臓を損傷したので激しい運動は出来なくなったと伝えた。
以前のように戦闘はこなせず、一日の大半をベッドで過ごす。
性格も、体の弱りは心の弱りで、以前のような明るさは無くなった。
タークスの仲間とも二ヶ月程会っていない。
最近は調子が良いので図書館まで外出してみたのだが、やはり体が弱い。
少し歩いただけで目眩がする自分に嫌気が差す。
ふと目を開くと、そこに見知った人がいるのに気付き、声を上げた。
相手も少年に気付き、口をぽかんと開け、次いで瞳に涙を溜めながら走り寄った。
彼女はイリーナ。
タークスの一員で、少年の姉のような存在だ
った。
勢い良く抱き着き、声を上げて泣き出した。
彼女も待っていたのだ。
少年に会える事を。
あんなになった少年を見ていたイリーナは、
彼を心配し、それを言えずにいた。
悲しみと怒りが堰を切って溢れ出したのだ。
そんなイリーナの背を優しくさすってやりながら少年も涙を堪えていた。
寂しかったのは、どちらも同じだから。
二人を見付けたレノは思わず笑った。
頬に涙を伝わせながらも嬉しそうに互いの近況を報告している姉弟が、そこにいたからだ。
幸運な偶然に感謝した三人。
イリーナが言うには、ルードとツォンも来ているそうだ。
携帯電話を使い、二人を呼び出す。
やっと、二ヶ月振りにタークスが揃ったのだ。
しばらく彼らは話し込んだ。
少年は天性の明るさを取り戻し、冗談を言っ
たりして笑い合った。
堅物で真面目なツォンもルードも、この時ばかりは例外なく声に出して笑った。
だが、時は非情だ。
楽しい時程早く過ぎるもの。
やがてイリーナ、ルード、ツォンは仕事の為帰らなければいけなくなった。
元々が仕事の情報収集だったので、仕方が無い。
しかし、悲しい風はなかった。
かなり元気になっていた少年を見た彼らは心配が無くなった。
また一緒に任務が出来るかも知れないとも思
ったのだ。
大きく手を振り、昔の仲間は別れた。
一時だけだったが、安らぎを心に与えてくれた時だった。
少年はまた車椅子に座る。
後ろからレノが押す。
きいきい、きいきい。
夕日が町並みを、オレンジ色に染め上げている。
家々に明かりが灯り出し、子供達が家に帰る声が聞こえて来た。
きいきい、きいきい。
ゆっくりと車椅子で進みながら、少年は義兄に語りかけた。
今日は本当に楽しかったという事、イリーナに聞いた面白い話、あの時はああだった等。
微笑んで頷きながら車椅子を押すレノは、どこか寂しさを感じていた。
今日は会えたが、明日は。
明後日は。
彼はもう歩けない程体が衰弱しているのをレノは知っている。
回復はせず、衰えるのみ。
なまじ希望があるだけ、苦しいのではないだろうか。
少年は、そんな思いを知ってか知らずか、ありがとうと礼を述べた。
いつかのあの日、まだ活動的で輝くくらい元気だった少年がレノに言ったように。
『ルド兄さんはお兄ちゃんで、リナ姉はお姉ちゃんで、ツォンさんもお父さんみたいに思
ってる。でも、レノ兄だけは特別』
『レノ兄がいてくれたから、私はずっと幸せだった』
そう彼は言った。
澄み切った微笑みで、小さな声で、言った。
幸せだった、と。
その笑みの中に巧みに隠された一筋の悲しみには気付かず、レノは少年を抱き締めた。
薄桃色の唇に、ふわりと羽で撫でるような優しいキスをした。
頬に手を当てると、ひやりとしていたがどこか暖かみがあった。
仄かに赤みの差した透き通る程白い肌に、微かでとぎれそうな脈拍。
確かにここにあるが、今すぐにでも黄昏時の暗さに紛れ、消えてしまいそうな儚さがこの少年にはある。
兄からの接吻を目を閉じて受け、甘く、物悲しい吐息を漏らした少年。
開いた瞳には、来るべき未来を憂い、それに覚悟を決めたような色があった。
もう一度、幸せだったと呟き、少年はレノの袖を引っ張った。
早く帰ろう、と言うのだ。
仲睦まじげな二人を、段々と日が沈み、闇へと移り行く街が飲み込んだ。
ジェノバ。
星から来た災厄。
この危機の中心となった存在。
片翼の天使の母。
彼女がいる限り、災いは断たれる事は無い。
もしそれが私の大切な家族を傷付けるのならば。
それを命を懸けてでも封じるのが、今まで幸せを与えて貰った私の、最後の役目。
……皆、大好きだった。
またな、と。
あの日、運命の日、少年は死んだ。
否、存在が消えて無くなったのだ。
大いなる封印……己の命の代わりに人ならざるものを封印する儀式。
他人の為に自分を贄に捧げる儀式。
少年は全てを知っていた。
過去に起こった事、未来に起こる事、全て。
だが彼には、彼が介入した事によって起こる事象は知り得なかった。
運命を変える事は禁忌とされていた。
が、それにも、自分の物語が閉じられる事にも、迷いは無かった。
ただ、大切な人達が傷付かないか、それだけが心残りだった。
少年はそれを、あの日偶然彼らと出会った事で振り切った。
あの時偶然でも出会えたのだから、悔いは無くなった。
最後に祈りを込めて、封印の儀式の締めくくりである歌を歌った。
『この星から悲しみが消えますように。
この星から怒りが消えますように。
この星が愛で満ちますように。
この星でまた、出会えますように。』
祈りの声は生命の流れに乗り、星を巡った。
その声を聞いた者達は一様に涙を流した。
ある者は失った悲しみに。
ある者は怒った後悔に。
ある者は溢れた愛しさに。
ある者は再会の期待に。
こうして星の危機は去った。
少年を知っていた人々は忘れない。
星を、人々を誰よりも想っていた少年がいた事を。
誰よりも、何よりも幸せだった少年がいた事を。
そして彼らは疑わない。
またきっと、彼と出会える事を。
END
- Re: FINAL FANTASYでぐだぐだ書く。 ( No.24 )
- 日時: 2017/02/11 14:46
- 名前: 月音
君の名は。
の曲をモチーフにした二次小説です。映画は見てません。曲中心です。どうぞ。
前前前世
死闘の後。きらめく花々が咲き誇る泉に体を浸したまま、眠りから目覚めないお前はひどく美しい。負った傷は癒え、もうすぐ眼が覚める頃だと思う。彼女のおかげだ。あの生命の流れの中から救い出してくれた彼女に感謝しなければ。
死に値する程の重症を負って、体は生きたまま意識のみがライフストリームと同化してしまっていた俺。幸いにも体の方はこいつが神羅の追っ手に見つからない様に岩陰に隠しておいたらしく、近隣住民に助けて貰っていた。死体だと思って近寄れば、息をしていたので慌てて連れ帰ったのだと笑いながらじいちゃんは話してくれた。それでも一向に意識が戻らないので、扱いに困っていたそうだ。そんな俺を何年も世話してくれたじいちゃんとばあちゃんを、本当の祖父母のように思っている。
俺の意識は、ライフストリームの中をふらふらと彷徨っていた。俺は俺であると分かっていたし、俺は死んだのだと思っていた。だが、何故かザックス・フェアという人間だったという事を生命の奔流に任せて失ってしまう事はしたくなかった。思えば星が俺を生かそうとしていたのかも知れない。こいつを助けさせる為に。
時々、強い恨みを持って死んだ奴の魂を見た。薄緑に光るライフストリームの中でそいつらは黒く見えた。やがて俺はそいつらの思いを解き放つ方法を学んだ。ある時から急にそいつらが増えた。どうにか出来ないかと一人ずつ思いを解き放っていたら、彼女に出会った。彼女は古代種の生き残り、というものらしく、この中でも意識を保っていられた。俺がここにいるのを不思議に思い、考えたところ、俺がまだ死んでいないからではないかと言っていた。そんな馬鹿なとは思ったが、どうやらそうらしい。しばらく彼女に話を聞き、現在の状況を知った。俺がここに来てから沢山色々な事が起こったものだ。彼奴には悪い事をしてしまった。お前はお前でいいのに、わざわざ俺を重ねても意味が無いのに。それだけショックだったのだろう。本当の自分を見付けてくれて良かった。やはり、あの子様様だ。更に彼女は自分の力を使って俺の魂を体に戻してくれると言ってくれた。そうして彼を助けてあげて欲しいと。私は彼と会う時はこの姿で会いたいから、もう少ししてから、だそうだ。
その言葉に甘えて、一足先に現世へと戻った。起き上がると、感覚がまだ慣れていないからか変な感じがした。そこにばあちゃんが来た。俺を見て、細い眼を丸く見開いて、腰を抜かした。体を気遣いながら立ち、側へ寄ると、幽霊でも見たように仰天していた。
「あんたはもうこのままずっと目覚めないような気がしてたよ。本当に良かったねえ」
ばあちゃんは後にそう言っていた。心底嬉しそうに。
それから少しの間、じいちゃんとばあちゃんにお世話になった。本当はこれ以上迷惑をかけたくなかったし、早く彼奴の下へ行きたかったが、何より体が鈍っていたので無理だった。トレーニングをして二人の手伝いをして、確か数週間くらいはいた筈だ。やっと感覚が戻って来たので、二人に行かなければならない所があると言うと、おかしそうに笑われた。
「何年も寝てたあんたが、起きた途端行かなきゃならない所があるなんて、おかしいもんさ。まああんたは不思議な子だからねぇ。わたしらの事は心配せずにお行きよ」
「ワシの死んだ息子が使っとった“もおたあさいくる”とかいうやつをやろう。お前は死んだ息子にそっくりじゃ。息子もそるじゃあとやらを目指しとってのう……もう何年も前の話じゃよ」
俺は二人にあつく礼を言い、ミッドガルへ向かった。またいつか、帰って来るとそう約束して。
こうしてつい先程、俺はミッドガルに着いた。誰かに導かれる様に懐かしい街を歩き、そうして辿り着いた場所は教会で、そこには彼女の意識があった。彼は闘いの最中だと、一度私を媒介して彼の下に行って欲しいと言われた。つまりライフストリームに意識を取り込ませるらしい。一度死んだ俺には簡単に出来た。彼奴はセフィロスと闘っていた。詳細は語るに及ばないが、彼奴の力になれたなら良い。そして今に至る。
- Re: FINAL FANTASYでぐだぐだ書く。 ( No.25 )
- 日時: 2017/02/11 14:49
- 名前: 月音
まだ誰も、ここにはいない。俺とこいつと二人きりだ。床にぽっかりと大きく空いた穴に咲いた花とそこに溜まった水。ミッドガルでもここにしか咲かないらしい。水は清く澄み、ライフストリームと同じ雰囲気がある。まだ眼が覚めない。俺は大分長い間、この水辺にいる。あの頃と変わらない金色の髪を弄んだり、男にしては滑らかな白い肌に触れたりしていたが、段々とこのまま目覚めないのではないかと不安が募る。思わず彼女に問いかけた。
「エアリス……こいつ、大丈夫なのか?」
『大丈夫。そんなに不安なら、話しかけてみようか?』
「出来るの!?それならそうと早く言ってくれよ〜」
彼女がその手をこいつの額に置く。眼を閉じたまま、彼は呟いた。
「母さん…?」
一言目が母さん、とは可愛らしいものだ。思わず彼女も微笑み、続ける。
『また!何度目かな、「母さん」って呼ばれたの』
「いいじゃないの、慕われて」
からかうと頬を膨らまして言い返される。
『こんな大きな子、いりません』
「残念、お前の居場所、『そこ』にはないってよ」
だから、こっちへ帰って来い。会いたくて堪らないんだ。そっと体に手を置くと、ぴくりと瞼を震わせ、ゆっくりと瞳を開いた。
「……ザッ、クス……?」
夢を見ているかの様に定まらない眼でこちらを見る。その眼は昔と同じ、透き通った青色で、見る者を引き込む色だった。もっと見詰めたくて、顔を覗き込み、話しかけた。
「やっと目を覚ましたか」
「…………」
にかっと笑いかけるも、眼も合わせてくれない。視線の先を追うも、その度眼を逸らされる。
「ずっと待ってたんだぜ?それなのに何で眼も合わせやしないんだ?寂しいじゃねえか」
「……生きてた」
やっとの事それだけ言う。そういえば、俺はこいつが生きているのを知っていたが、こいつは俺を死んだものだと思っていたのだったか。
「ああ。どこから話すかな……それよりお前は大丈夫か?怪我は痛まないのか?」
「……ずっと、後悔していた。全部俺の所為で、あんたは……」
話が噛み合わない。まだぼんやりとどこかを見て、眼を合わさずに呟き続ける。
「夢でもいい……良くはないけど……謝りたかった。俺を、許してくれ……」
「夢じゃないって。ほら、俺はここにいるだろ?」
泉に体を浮かせたままのこいつを起き上がらせる。やっと本当に眼が覚めたのか、口をぽかんと開いて、こちらを見た。
「なんで……?だって、あの時お前は……」
「ギリで助かったんだよなー。俺、一回死んだんだろうな、本当。でもさ、あの子が助けてくれた」
「……エアリス」
「そう。だから俺は……っと?」
話を遮られた。あの頃より大きくなった体に抱き締められたのだ。長いこと泉に浸かっていた体は少し冷たく、震えていた。ぎゅっと腕に強い力が込められ、怒られた。
「遅い」
ふっと苦笑がこぼれた。固めの髪質の金髪に手をやり、軽く撫でた。
「これでもやれるだけ飛ばして来たんだぜ」
「……長かった。もう、何年経った?あれからすごく大変だった。お前がいてくれたらって何度も思ったんだ」
「悪かったな。でも、こうして来ただろ?お前を放り出したりはしないって約束、守れたって事でいいか?」
問うと、うん、と頷かれた。
「さっき……闘っていた時。声が聞こえたんだ。だから頑張れた。あれも、ザックス?」
「ああ、それはな……心が体を追い越して来たんだよ」
「心が、体を?」
きょとんとした顔で言い、次いで俯き、苦しそうに肩を震わせた。何が起こったのか分からなくてじーっと見詰めていると、堪え切れなくなったのか、大きく息を吐き出し、一拍置いた。そして、
「ふ……くっくっくっ……ふ、あははははははは!!」
激しく笑い出した。
「こ、心が体を追い越したって……やっぱロマンチストだよっ……くくっ……あのザックスだ、ほ、本当にザックスだ……!ははははははは!」
「お前は滅多に笑わないのにそれをこんなし
ょうもない所で使うなよ!それに結構本気だったから恥ずかしいっつの!」
「本気、本気だったんだ、ふふっ……あ、やばい腹痛い……」
今まで腹が痛くなるまで笑った事なんて、あったか?セフィロスと闘っていた時よりも苦しそうに息を詰まらせながら笑い続ける。すげえ恥ずかしい。けれど、俺の羞恥心くらいでこいつがこんなに笑ってくれるなら、安いもの、かも知れない。改めてこいつが戻って来てくれた事が実感出来た。二年前より大人びた姿。それでも内面はそれ程変わっていない。真面目で真っ直ぐで冷静で、優し過ぎてその所為で悲しんで傷付いて、でも前を見据える瞳に曇りは無い。
ああ、俺は本当にこいつが好きなんだと思った。髪や瞳を見るだけで胸が苦しくなる程に。やっと落ち着いたのか深呼吸をしている彼を優しく抱き寄せる。俺より小さい体は、腕の中にすっぽりと収まってしまう。こうすると、こいつの体温や鼓動が直に伝わって来て、多分こいつにも俺の体温や鼓動が伝わっていて、同じ時を過ごしているのが互いに分かる。無言でもその温もりで分かり合える。あんな別れ方をしてから何年も、一人で闘って来たのだろう。ずっと後悔していたと言っていた。俺だって後悔していた。放り出したりはしないなんて言っておきながら、似たようなものじゃないか。言いたい事は沢山あった筈だが、こんなに安心しきって体を預けて来るこいつを見ていたら、もうどうでも良くなって来る。ただ、離したくない。遥か昔から知るこの声に、生まれ変わって初めて今、何を言えばいい?俺達には、互いが存在している事を確かめる時間が必要だった。
「俺が一回死ぬまでのあの日々を、前世だとしたら」
しばらくしてから、囁くように言う。
「前世から俺は、お前を探し始めたよ。確かにライフストリームの中で、お前を探していた。死んでも生まれ変わってお前に会いに来たんだ」
「出た。ロマンチスト」
「ロマンチストだろうが本当なんだからいいだろ?それぐらい大好きって事だぜ」
「ザックス……」
リンゴみたいに顔を真っ赤にして照れながら微笑む。その不器用な笑い方をめがけてやって来たんだ。お前の声も涙も全部、愛してる。
「また会えて、良かった。ザックス、俺も、その……大好き」
眼を逸らしたまま俺にもたれかかり、そう言うお前は滅法可愛い。この笑顔を、二度と手離したくないと思った。
俺があの時生まれ変われて、じいちゃんとばあちゃんに拾って貰えて、ここでこうしてこいつと話せるというストーリーは、何億分の一の確率でしか無かっただろう。何億、何光年も世界が繰り返したとしても、一度あるかないか、くらいの確率だ。その一度を、俺は決して無駄にしたくない。想いは全部伝える。やりたい事は全部やる。死ぬ直前に、ああ、もうやり残した事はないなって思えるようにする。だけど。
「こっちこそ。待っててくれてありがとな」
もしお前の全部が全部バラバラになって散り散りになったって、また一から探し始めるさ。むしろまたゼロから宇宙を始めようか。
もう迷わない。
俺と対をなす名前の持ち主。
大切な大切な──
君の名は。
「クラウド」