大人二次小説(BLGL・二次15禁)
- FINAL FANTASYでぐだぐだ書く。
- 日時: 2017/01/20 22:08
- 名前: 月音
こんにちは、月音です。
今回はFFのBL小説を投稿させて頂きます。
ただ……一つ断っておきたい事がございます。
私、今のところ、FFのゲームをプレイした事が残念ながらありません。
シアトリズムのみです。
いえ、小説も攻略本も読みましたし、ストーリーもあらかた存じています。
DVDも見ました、CDも全部聞きました。
ただ時間が無く……プレイ出来ずにおります。
おまけに守備範囲がひどく狭いです。
ですので、設定がおかしかったり、口調が違ったりしてしまうかも知れません。
広いお心で読んで下されば、これ以上の幸福はございません。
……そうでした。
私はFFのストーリーやキャラクターも大好きですが、
それと同じくらいに曲が大好きです。
なので、曲に勝手に歌詞をつけています。
それも投稿していきたいと思います。
では、どうぞよろしくお願いいたします。
- Re: FINAL FANTASYでぐだぐだ書く。 ( No.14 )
- 日時: 2017/01/30 21:36
- 名前: 月音
私は一人で寝ていると、よく悪夢を見る。大切な人達が、私の前で死んでいき、恨みがましそうな目で私を見るのだ。もしくは、私が罪を背負ったあの日の事とか。辛くて辛くて仕様が無くて、いつも泣きながら起きる。この日もそうだった。ただ一つ違ったのが、夢から覚めさせてくれた人がいた事だ。
「大丈夫、大丈夫……お前は夢を見てたんだ。俺はお前を放り出したりはしないよ。安心しろ」
大きな温かい体で私を抱き締め、安心させるように耳元で囁きながら、ゆっくり何度も背中を撫でてくれる。泣きじゃくる私を嫌がりもせずあやしてくれる。私は彼に縋り付いて、支離滅裂な心の内を吐き出した。
「辛かったんだな。泣いてもいいんだ。泣いて辛くなくなるなら、泣け。俺が全部、受け止めてやるから」
私が泣き疲れて眠ってしまっても、彼はずっと傍に居てくれた。
「お兄ちゃん」
と。
そう彼を呼ぶ事にした。あの一件以来、彼にすっかり心を許したからだ。初めてそう呼んだ時は、ぽかんとした顔でたっぷり十秒は固まり、それから感動したのか叫びながら外へと走り出していった。マジで引いた。
それから私の身の上を話した。親兄弟はいない事、帰る所もない事、ずっと旅をしていた事。クラウドと会った時より滑らかに喋れるようになった私の話を聞いて、彼は悩んだようだった。だから言った。
「お願いします。ここに……おいて下さい」
「マジで?いや、嫌って訳じゃないけど、そんなに俺を信頼してくれてるのかよ」
「私を、助けてくれたから」
「え、あ、まあな。でも、なぁ……ま、お前がいいなら、俺はいいけど……一人暮らしだし」
かなり歯切れは悪かったけれど、許してくれた。やはりいい人だ。そうして、私はザックスお兄ちゃんの家で暮らす事になった。
それから何日かして。
ここの人々はいい人ばかりで、色々な事を教えてもらった。美味しい料理の作り方や、歌や、沢山。おかげで人並みに生活が出来るようになった。お兄ちゃんは皆を守れる英雄になると言って、武器の鍛練に励んでいた。時には私が相手になる事もあった。
「また?いいよ。結果、分かってるけど」
「へへん、俺は強くなったんだぜ?もうそんな減らず口は叩けないようにしてやる!」
私は罪を背負う前からずっと刀を扱っていたから、滅多に誰かに負ける事はなかった。勿論、お兄ちゃんが相手でも。
「クッソ〜!何でお前はこうも強いんだ?何回やっても勝てねえ!」
「まだまだだね。力だけじゃなくて、俊敏さも鍛えないと。後、状況把握力」
「お前、誰かに負けた事あるのか?」
「うん」
「誰に?」
「言わない。知らないだろうし」
へえ〜とニヤニヤしながら見つめてくる。無視。それより、もっと練習した方がいいと思う。結局、最後までお兄ちゃんには負けなかった。
お兄ちゃんが出掛けていていない日や暇な時は、屋根に登って歌の練習をした。その内に町の人達の評判になり、歌っていると人が集まって来る事もあった。その時は投げ銭代わりにおかずを貰う。夕飯が豪華になって嬉しかった。
そんな日々を過ごしていたある日、唐突にお兄ちゃんが言った。
「俺、さ……神羅カンパニーにソルジャーとして就職しようと思うんだけど」
「………」
リーダーである私には分かっていた。彼がその内こう言い出すだろう事が。そして、神羅でクラウドを助け裏切り者として殺される事も。全て分かっていた。でも、止める事は出来ない。止めればメテオの衝突を防げないから。運命を歪めてしまうから。何も言い出せない私を心配そうに窺いながら続ける。
「俺は誰かを守りたい。英雄になりたいんだよ。お前が応援さえしてくれれば、俺は頑張れる。お前が行くなって言うなら、止めとくよ」
止められない。死なせたくない。矛盾した気持ちを抱く私は、どっちつかずな回答をした。
「お兄ちゃんは……晴天だから。晴れの日だから。誰かの心が曇ってたら、晴れさせてあげて。私の時みたいに」
ほっとした顔で自信たっぷりに笑う。その笑顔が見納めにならない事を、祈るばかりだった。
お兄ちゃんと寝るのも、最後になるのかも知れない。毎晩うなされる私を見かねて、一緒に寝てくれていたのだ。今日あった事や明日の事なんかを話しながら、うとうとする。この時間が一番安心出来た。
「……お兄ちゃん」
「うん?」
「ソルジャーって、強い?」
「勿論。だから行くんだよ」
「ねえ、お兄ちゃんは何番目かな」
「俺?一番に決まってるだろ。何せお前に鍛えて貰ってるんだからな」
「ふふ……うん、お兄ちゃんなら、一番になれるよ。英雄になれる」
「ありがとうな」
「私が保証する」
「そりゃ心強いぜ」
「……手紙、書いて、送ってくれる?」
「お前、ここに居るのか?」
「お兄ちゃんが帰って来るのを、待ってる」
「なら、絶対書くさ」
「ありがとう……」
他愛ない話を、ずっと続けていたかった。この温もりを失いたくなかった。それでも睡魔に勝てなくなって、離れたくないと、ぎゅっとお兄ちゃんの服を掴みながら、眠りに落ちていった。
お兄ちゃんが行った日、私は一人で歌った。お兄ちゃんの家にあったピアノを弾きながら。大切な人を見送る事しか出来なかった彼女の歌を。
1000の言葉。
歌いながら、涙がこぼれた。
- Re: FINAL FANTASYでぐだぐだ書く。 ( No.15 )
- 日時: 2017/01/31 21:17
- 名前: 月音
それからは、穏やかでも実りのない日々を過ごした。唯一のウサ晴らしは歌だったが、それも最近はめっきり意欲を失い、無意味に時間を過ごしていた。初めの内は来ていた手紙も来なくなった。もしかしたら、もう、死んでしまったのかも知れない。そんな疑いを抱いては打ち消し、抱いては打ち消していた。
そんなある日。
夕方頃にとんとんとノックが聞こえた。誰だろうと考えていたら、知らない男の声がした。これは、強盗かも知れない。念のため刀を持ち、扉の裏に隠れる。
「誰もいないのか。なら、邪魔するぞ」
男はそう言い、扉を開ける。長い白髪が揺れる。後ろから絞め技をかけようと忍び寄ると、誰かに後ろから引っ張られた。後ろ向きに倒れるかと思ったが、抱き止められた。その瞬間、懐かしい匂いに包まれる。
「はーいストップ。てか初対面のやつに攻撃しかけんなよ」
「ざ……ザックスお兄ちゃん!?」
仰ぐようにして確認する。眩しいくらいの笑顔はやっぱりお兄ちゃんだ。色んな思いが溢れてきて、私は泣きそうになりながらお兄ちゃんにしがみついた。
「馬鹿……馬鹿馬鹿!私、待ってた。約束したから、ずっと待ってた。でも、全然手紙来ないから、死んじゃったかと……!怖かったよ……なのに、どうしてそんな普通に笑えるかなっ……初対面の人なんてどうでもいいから、先に私に挨拶してよ!お兄ちゃん……」
半分驚いた八つ当たりで言い募るも、そこはそれ、海くらい広い器で受け止めてくれた。可愛くて仕方無いというようにぽんぽんと頭を撫でる。
「よしよし、悪かったな。ここんとこ忙しかったんだよ。ちゃんと生きてるし、元気も元気、超元気!だから、もう泣くなって」
「泣いてないよ……それより、挨拶」
「おう。ただいま!」
「お帰り、お兄ちゃん」
笑い合うと、ようやくお兄ちゃんが帰って来たという実感が湧いて来た。それと、放りっぱなしにしていた不審者の事も思い出す。見ると、彼は居心地悪そうに突っ立っていた。
「あ、悪い悪い。あのな、この白髪のやつはセフィロスって言って、俺の仲間。セフィロス、こいつがいつも話してる俺の家族だ」
「兄が、いつもお世話になってます」
「……ああ」
セフィロス。リーダーの力から、彼の事はよく分かる。まだ悪の道には走っていないようだ。輝かんばかりの銀髪、長身、クールでありながらどこか威圧感がある顔。さすがは英雄と呼ばれるだけの事はある。
「後、もう一人来る筈なんだけどな。遅いな……」
「お前が放り出して来たのだろう。俺はともかくアンジールはちゃんと連れて来い」
「何だよその上から目線」
「お兄ちゃん?後一人、って、どうして?そもそも、何で来たの?」
「それはな、……えっと……」
「仕事だ」
途端に口ごもるお兄ちゃんの代わりにセフィロスさんが答える。
「仕事、ですか?」
「ああ。この辺でモンスターが頻繁に出没するという情報が入り、派遣されて来た」
確かに、最近よく人が襲われるらしい。この間斜向かいの家に住んでいるおばさんが、おかげで山菜も採れないと嘆いていた。何となくそれだけじゃない気がするが、問い詰めたりなんて事はしない。
「そ、そうそう。でな、俺がここに立候補したんだ。こいつらをお前に会わせたかったし。だから、ここに俺とセフィロスとアンジールと、泊めてもいいか?」
「えっ!?」
人が苦手な私によくもそんな事を。いいも何も良くないに決まっている。だけど、それではお兄ちゃんも泊まれない。悩む。
「……はあ。お兄ちゃん、あざとい……仕方無い、いいよ。ただ、私がお兄ちゃんと寝るとしても一つ寝具足りないよね?誰かから借りてくるなりなんなりして来て。その人も連れて来るんだよ」
ぱあっと顔を明るくして頷き、外へ駆け出して行く。そもそもアンジールとかいう人は、まだ来ていない。道に迷ったのではないだろうか。
「悪いな」
言われて、はっと振り向く。セフィロスさんだった。気まずい。話題、話題……。
「いえ……あの、兄がご迷惑をおかけしてませんか。自分が気に入らないと頑固で動かない、なんて事、ないですか」
「ハッ、よく分かっているんだな。だが彼奴はそこまで愚かではない」
「それは……恐縮です」
良かった。仕事場では上手くいっているようだ。一安心だ。
それにしても……彼は。
やがてモンスターに成りきり、片翼の天使としてクラウドの前に立ち塞がる筈の彼。先程お兄ちゃんと話していた様子からして、本来は良い人だったのだと分かる。もし彼が自分自身を受け止め切れていたら?私が、彼の破滅を止められはしないだろうか。そう考えると、
『──まさか、運命を変えようなんて、しないよね』
キィンッと脳内に響く声。それに答えようと口を開くも、言葉が出ない。悔しかった。
「ザックスが」
突然、目の前の彼が言った。慌てて目線を戻す。
「お前に鍛えられていると言っていた。あのザックスが一度も勝った事がないという。一度手合わせ願えないだろうか」
あの男はいらない事をペラペラと……。だがまあ、私も興味はあった。英雄と呼ばれしその人と私、どちらが強いのか。
「構いません。少し、期待してましたし」
「なら、どこか適当な場所はあるか?」
「では裏庭へ」
広い裏庭に二人で向き合う。さあっと一陣の風が流れる。気は一時たりとも抜けない。
「それでは……いざ、尋常に、勝負っ!!」
言うが早いか走り出す。無闇に切り合うのは得策とは言えない。力、スタミナなら完璧に劣るからだ。ただ、私にはそれを上回るスピードがある。先手必勝だ。
胴を狙い横に薙ぐが縦に受け止められる。後ろに跳んで距離をとり、次は避けにくい突きで。それは彼が一振り大きく剣を払う仕草のみで中断させられた。くるりと回り込み、背中から斬りかかるも相手もついてきた。思ったよりも速い。更に二、三合切り結ぶ。
と、ここで彼の大太刀が、真横から首をめがけて唸る。私はまだ反動から立ち直れていなくて、バランスを崩したまま。片手も塞がっている。彼が勝利を確信し口角を上げたその時。
『やっと本気を出すのかい』
彼の大太刀は刀で受け止められていた。私の隠し持つ、二本目の刀で。彼が驚き、同時に闘志が燃え上がって来ているのが分かる。
「二振りの霊剣……護神剣と破妖剣。これらを使うのは、久方ぶりです。あなたに巡り会えて……良かった」
「ここまでとは正直思わなかったぞ。俺が正宗を使い、勝負が決まらない事などなかったからな。さて、ここからが……本番だ」
会話は終わり、ピリピリとした空気を感じ肌が粟立つ。深くて底がないくらいの恐怖に襲われながら、私は胸が高鳴るのを抑えられなかった。頬は上気し、息は荒くなり、剣を持つ手は震えてくる。武者震いだ。これほどまでの好敵手と会えたのは何時ぶりだろう。お兄ちゃんとやり合う時には出来なかった事が出来る。殺意──破壊衝動が、沸き上がる。
また先手を打ったのは私だった。先と同じく斬りかかると思いきや、寸前で体位を下げ足を払う。そのまま回転するように斬り上げれば、彼は危なっかしく避けに専念するはめになる。二刀流。それが私の本分だ。スピードが一番生かされる。刀をまるで扇子のごとく扱い、舞う。だがそれだけではない。彼も流石は英雄、避けるだけでなく隙を突き反撃してくる。斬撃が頬をかすめ、うっすらと血が滲む。それは相手も同じだった。何時しかそれは手合わせどころではなく、殺し合いとなった。美しく激しい死の舞踏。刀を合わせる度に気持ちが伝わる。互いに高まっている心が最高潮になり、必殺技を決めようとした瞬間──
「はいストップ〜。何で俺がこんなに仲裁役に回るんだ?らしくないよなぁ」
お兄ちゃんに、手を突き付けられ止められる。こんな戦いの間に入るのはかなり勇気がいる筈だ。それをさらりとやってのけるのは流石お兄ちゃんだ。
「お兄、ちゃん……」
緊張が切れ、すとんと座り込んでしまう。セフィロスさんは不服そうに正宗を収めた。
「何故止めた」
問うと、何時になく本気で怒っている真剣な瞳でお兄ちゃんがたしなめた。
「お前らな、あれは本気の殺し合いだっただろ。あのままいけば、どっちか死んでてもおかしくなかった。バカ?バカだろ?」
「バカじゃありませんよ、と。……冗談ですごめんなさい……」
「はいはい。お前は?」
「……悪かった」
お兄ちゃんに二人して怒られる。少し可笑しい。もういい大人なのに。視線を上げるとそこにも可笑しそうにしている男の人を見つけた。
「お兄ちゃん、あの人……?」
「ん、ああ、アンジール!置いてきてごめんなー」
「いつもの事だ、気にしてない」
体格のいい渋い人だ。セフィロスさんともまた違った感じ。お兄ちゃんと気が合うのが不思議なくらいだ。
「初めまして。いつも、兄がお世話になってます」
「これは丁寧に。だが、堅苦しいのはいらない。お前の兄はそうだしな」
苦笑するしかない。批難を込めた視線を送るとふいっと目を逸らされた。紛らわすように口笛まで吹き始める。子供か。許してしまいたくなる私は、充分馬鹿かも知れない。
- Re: FINAL FANTASYでぐだぐだ書く。 ( No.16 )
- 日時: 2017/02/01 21:27
- 名前: 月音
「話は変わるが。ザックス、お前の妹は相当な使い手だな。女にしておいては勿体ないくらいだ」
ん?
続いて、セフィロスさんが話した事に引っ掛かりを感じた。それがお兄ちゃんの命運を分けた。
「だろ?どうだこのプライド神羅ビル。お前より強いかもなぁ?」
「お前と違って強かったから油断した」
「なっ!うわうわ何こいつウザい!」
ちょっと待てや。
いけない、落ち着け。
私が違和感を感じた部分がお分かりになっただろうか。ああ、私の逆鱗に触れてしまっている。
「お、に、い、ちゃあん?」
極上の笑みを作って呼び掛ける。不穏な空気を感じ取ったのか、怪訝そうに振り返る。
「何か大切な事、履き違えてるよねぇ?」
「な、何だよ?」
「セフィロスさん、アンジールさん……兄から私を何と聞きました?」
「一人暮しをしている間に会った、本当の妹のように思える人がいる、と」
ふうん。やはり一ヶ所を除いては普通だ。
「妹、ねぇ……それで間違いないですか?」
「あ、ああ」
有罪確定だ。
「ザックス・フェア……彼とは短い付き合いだった。さようなら」
本当に何も分からないのか、慌てふためき取り繕うように言葉を並べる。
「何だ何だ何だって言うんだよ!?早くもそんな死んだような言い方して……何かおかしな事言ったか?説明してくれぇ!」
その態度に更に怒りが沸く。堪忍袋の尾が切れた。人前だとも忘れ、怒鳴り込んでしまう。
「何ヵ月も一緒に過ごして人の性別間違えるような奴もう兄でも何でもないよ!一回死んでみる!?」
途端凍りつく場。しまった言い過ぎたか。と思うもそうではなくて。
「お前……男、だったの?」
うわ。
素だったなんて。
ぽかんとした顔で、状況が飲み込めないのか瞬きもせず、こちらを窺う。一緒に寝てても気付かないなんて。自己嫌悪に陥り踞って泣き出してしまった。
「嘘ぉ……何でこんな馬鹿な事……もうほんと私が消えればいいのに……ほんと馬鹿な奴等ばっか……うう……えぐっ」
「え、いや、ごめんな、泣くなよ……」
お兄ちゃんはお兄ちゃんで戸惑いながらも慰めてくれるし、残りの二人はそっと場を離れるし、本当に情けなくて泣けてくる。
「こんな女みたいな体と声、ずっといらないと思ってた……お兄ちゃんは分かってて、優しくしてくれてると思ってたのに……いっそライフストリームに飲み込まれてリセットされたい……」
そう嘆くと、優しく叱られる。
「例え冗談でも、死にたいみたいな事は言うな。それにな、俺はお前が、その……男だろうが、別に元々そんな変な気は起こしてなかったから、大丈夫だぞ?」
何処か的違いな事を言うから、笑ってしまうじゃないか。でももう仲直りというのは少し癪だから、慰めて貰おう。今まで待たせた借りもある。それくらい、許される筈だ。
「……私が男でも、変わらずに、接してくれる……?」
「勿論」
「じゃあ、仲直りしようか」
少しして、女々しいと分かっているけれど聞かずにはいられなかった事を聞き、望んでいた答えを貰った。大切なのはそこだから、本当はそれだけ聞ければ良かった。仲直りはすぐ出来た。しゅんとした顔で謝られる。
「ありがとう、ごめんな」
「いい。どうせ、お兄ちゃんだし」
「何だよそれ」
不服そうに頬を膨らませるから、吹き出してしまった。もう、本当にお兄ちゃんはお兄ちゃんだ。
「いいから、行こう?二人、待たせてるよ」
「ああ!」
「先程は取り乱してしまって、済みませんでした」
深く頭を下げてセフィロスさんとアンジールさんに謝る。みっともなかった。ほぼ初対面の人にあんな姿を見せるのは、初めてだった。
二人とも困った様に顔を見合わせ、それからふっと微笑んだ。
「別に気にしていない。俺も悪かった」
「ああ。当たり前だと思う」
「セフィロスもアンジールも、こいつには優しいっていうか素直っていうか……」
「お前より良い奴だからな」
「うわ……もう怒る気無くなるぐらいグサッて来たわ……」
本当にこの人達は仲が良い。何だかんだ言って程度が分かっている。見ていてついつい笑みがこぼれてしまう。
「せっかくだから、ここにいる間はこの家でゆっくりしていって下さい。……もともと、お兄ちゃんの家ですし」
「有り難い」
取り合えず有り合わせの食材で人数分料理を用意し、机を囲む。そこで、ミッドガルの様子を聞かせて貰った。大きな魔晄炉があって日夜人気が絶えず、何でも欲しいものが揃う町。大きな金属の板の上に広がるプレートとその下のスラム。高い高い神羅ビル、離れた場所にある忘らるる都、北の大空洞、などなど。初めて聞くそこの話は、ありありと想像でき、わくわくした。そこで人々を守る為に、もしくは助ける為に働くソルジャーという仕事。とても有意義でお兄ちゃんにぴったりな仕事に思えた。
「聞いて驚け、俺はもうソルジャーの中でもクラス2stっていうまあまあ強い奴等の中に入ってるんだぜ!」
「すごい。じゃあ皆さんは、その?」
「俺は一つ上のクラス1stだ。こいつも1stだが、別格だからな。何しろ英雄だ」
「止めろ。俺もただのソルジャーだ」
何気無い話も、人がいるというだけで特別に感じる。久々に笑い声が家に響いた。
その夜、恥ずかしかったけれどやはり寂しくて、それでなくとも寝具が足りないという問題もあって、お兄ちゃんと一緒に寝た。暗がりの中でふと顔を見詰めると、ある事に気付いた。
「お兄ちゃんって……こんなに鮮やかな青色の瞳してた?」
「ん?ああ……これな」
それが魔晄を浴びた者特有の光だというのをそこで初めて知った。確かにセフィロスさんもアンジールさんも後のクラウドも、それぞれ個性はあれ青色の瞳だった。それでも私にとって大切なお兄ちゃんに変わりはない。お兄ちゃんにとって私が男でも変わりないように。
「ふう……久し振りだな……お兄ちゃんと一緒に寝るの」
「あの日以来だもんな」
「仕事、楽しい?怪我、しない?」
「ああ。そんなにすげえ強い奴はいないからな。お前程の奴は殆どいないよ。神羅の人達はいい人ばっかだ。女の子も可愛いし!」
「……最っ低」
低く呟くと、一瞬驚いた顔をし、悪戯っぽい笑みを浮かべた。
「もしかして、妬いた?」
「馬鹿なの?もし取っ替え引っ替えしてたら最低、って意味」
「俺はそんなじゃねえよ!大体ソルジャーは結構忙しいのにそんな暇ないって」
「へえ、大変。なら、帰って……来る?」
上目使いに見遣ると、困った様に眉を寄せて微笑む。お兄ちゃんはいつも笑う。困った時も辛い時も悲しい時も。何故?無茶なお願いだというのは分かっているのに。
「ごめん……酷かったね……私が悪かった」
「ん、や、いいよ。俺がお前を放って行ったからだしな。寂しかったよな……?俺ばっかり楽しんでちゃ悪い」
「お兄ちゃんは、優しすぎる。そこが、良い所なんだけど」
ぎゅうっと力を込めて抱き締める。苦しいと可笑しそうに笑いながら言われた。それだけで安心出来る。この人の側に居られる事が嬉しくて、暖かい気持ちになる。ゆっくりとその温もりを感じながら、眠りに落ちていった。
- Re: FINAL FANTASYでぐだぐだ書く。 ( No.17 )
- 日時: 2017/02/02 21:38
- 名前: 月音
次の日からお兄ちゃん達は仕事へ行った。朝早く出て行って、夕方頃帰って来る。モンスターの駆逐をしているらしい。私は何だかんだ言って三人に弁当を作ってあげたり、晩御飯の用意をしたりした。三人に会ってからはインスピレーションが湧いて、沢山新しい曲が出来た。それを聞いて貰ったりもした。
二週間程経ったある日、そろそろ帰ると言われた。
「本社から撤退命令だとよ。またしばらくはミッドガルで仕事だ」
「そう……寂しくなるな」
「世話になった」
「ああ。料理が上手かったぞ」
「有り難う御座います……」
何となく、もう会えないのだろうかという気がしてならない。お兄ちゃんはともかく二人は仕事でもない限りこんな所へは来ないだろうし。センチメンタルでも何か思い出が欲しかった。
「……そうだ。歌を聞いていってくれませんか。皆さんの事を思って、作った歌、あるんです」
「何、それ俺も?めっちゃ聞きたい!」
「歌か……たまにはそれも良い」
「是非お願いする」
快諾を得て、ピアノが置いてあった部屋へと向かう。何故か初めからあったピアノだ。私が来てから、持ち寄ったアンプやギターなど、雑多に楽器や機器などが置いてある。まず、アンプに色々繋ぐ。この世界に来る前から持っている音楽プレイヤーなど。楽譜を置けば準備完了だ。
「では一曲目……Starduster」
そう前置いて、大きく息を吸い込む。程好い緊張感。この曲はセフィロスさんとアンジールさん、それからここにはいないジェネシスさんに捧げよう。
ひたすらに愛を求める一人の少女を思い出しながら歌う。彼らも、誰かに愛を貰えれば、最悪の結末から逃れられるかも知れない。そう願い、歌い切った。お兄ちゃんは真剣に、二人は半ば呆然としながら聞いていた。少しでも、彼らの心に響きますように。
「お前は、……」
セフィロスさんが何か言おうとして直ぐに止めた。複雑な顔で私を見つめてくる。軽い微笑みで返し続ける。
「続きまして、二曲目。全てのソルジャーの方々に捧げます──Why」
この曲はお兄ちゃん達と過ごした日々に浮かんだ曲だ。もし最悪の結末になったとしても、それまでを悔い無く過ごせるようにと祈る。
精一杯歌えた。感極まって泣いてしまうくらいには。リーダーの力なんて無ければよかった。いつか失うと分かっていなければ心の底から笑えるのに。涙なんて、見せたくない。いくら思っても止まらない涙が幾筋も頬を伝う。何時しか暖かさが体を包み、耳元で囁いた。
「ありがとう」
また、涙が頬を伝った。
「お兄ちゃん」
「何だ」
「お兄ちゃんには、また特別に歌を作ってあげるから、また聞きに来て」
「勿論。楽しみにしてる」
「約束だよ」
「おう。絶対帰って来るぜ」
「絶対……」
「泣くなよ……俺はここにいるから、寂しくないだろ?放り出したりはしないって」
「お兄ちゃん……だいすき」
「俺も、お前が大好きだよ」
──思い返せば、これが最後に交わした会話だった。
人を捨て、片翼の天使として生きる事を選ぶセフィロス。
モンスターとなりかけながらも、最後はザックスに夢と誇りを託して逝ったアンジール。
女神を求め、その手でライフストリームに還されたジェネシス。
そして、裏切り者とされても笑顔でいて、人を救おうと自分を犠牲にしたザックス。
それぞれの人生を、私は変えられなかった。
だが、私の歌によって、少なくとも一人くらいは、一瞬でも、救われたと感じた人がいたのなら、それで充分なのかも知れない。
罪を負う私は、まだ罰を受け続ける。
「……約束、守れなくてごめんな」
その日は悲しいくらいに晴天だった。
ドンドンと荒々しくドアがノックされる。私が知っている誰でもない。無視していると、力業でドアが開かれた。
「邪魔するぞ、と」
数人のスーツ姿の人が入り込んで来る。嫌な予感しか、しなかった。
「あなた達は……誰」
声を低め、冷たく問う。一番偉そうな人が答えた。
「ソルジャークラス1st、ザックス・フェアの義兄弟の方に違いないかな」
「ええ……」
「我々は神羅カンパニーの者だ。残念な事だが、彼は亡くなった。詳細はこの手紙にしたためてある」
無造作に渡される手紙。台本を読み上げるかの様な淡々とした声音。そして、告げられた事実。
「死ん……だ……?」
脳が、ぐちゃぐちゃにかき回された感じがする。呟くと、軽く頷かれた。
「ああ。ついては、神羅の機密事項がないかどうか、家中を捜索させて頂く。では、手筈通りに」
男性の指令で他の人達が散る。色々な部屋の中に入って行く。封をされた手紙を開き、読むと、人一人の死亡通知にしては余りにも適当過ぎる内容だった。
『ソルジャークラス1stザックス・フェア
神羅カンパニーに勤めるソルジャーでありながら神羅カンパニーを裏切り、脱走。同時に他一名の脱走の手引きをした模様。よって本社により粛清を行った。』
と。それだけ。呆れて言葉も出ない。現実味が、沸いて来ない。
「あなた達は……」
「はい?」
「あなた達は、悔しく、ないんですか?」
思わず口から出た言葉に後悔するも、取り消せない。覚悟はしていた。していた、筈だった。それでも心が苦しくなってきて、吐き出したくなった。
「こんな……こんな簡単な、書面だけで。裏切ったと、それだけで。納得出来ると思うんですか?残された私が、はいそうですかと引き下がれるとでも?本当に……舐めてるんですか?」
憎悪。殆どそう言ってもいいくらいの悪意を込めて言う。返答を間違えば斬り殺す。彼らは神羅に勤めるという意味では、仇と言っても違いないから。
「あのなぁ」
目立つ赤髪の男が一人、近寄って来た。私の胸ぐらを掴みドスの利いた声で言った。視線の火花が散る。
「俺達が悔しくないとでも思うのか、と。仲間を勝手に処理されてだぞ?助ける間も無かった。高高居候ぐらいが主任に八つ当たりするなよ、と」
「高高居候?あなた達の仲間は私のこの世界で唯一の、家族だった。それを侮辱する事は許さない」
「……何だこいつ。家族ごっこなんざヘドが出るぞ、と。お情け深い彼奴らしいぜ」
「何て?……殺すぞ」
「出来るもんならな」
「待て。そこまでだ」
主任と呼ばれた人が割り入る。ギリギリセーフだ。危なかった。危うく本気で刀を抜いてしまう所だった。ある意味同罪なのに。私だって死ぬと分かっていながら、お兄ちゃんを行かせたじゃないか。
男の人はチッと音高く舌打ちし、また部屋の捜索へ戻っていった。もう止めてよ。思い出を、汚さないで。と、言えない。体が、氷になったように動かない。自分が今何を思っているのか、分からない。
「済まないが、君は彼から神羅の事を聞いてはいないか。念の為だが」
「そこまで兄が……信じられませんか」
主任は申し訳無さそうに目を伏せた。彼もあの人も、そんなに悪い人じゃないのだろう。八つ当たり。その通りだ。
「私は近く……ここを出て行きます。兄のいないここなんて、意味がない。その後はもう、神羅に関わるつもりはありません。それで構いませんか」
静かに言うと、静かに頷かれた。
「直接手を下した方がいるのですか。それでなくともせめて、亡くなった場所を……教えて下さい」
答えは無言だった。
結局、涙の一滴も出なかった。死体を見ていないからだろうか。妙に非現実的な感じがする。世界が色褪せ、心が無くなった。否、何かを感じる事が出来なくなった。感情の起伏が無い。微笑みもすれば苛立ったりもするが、何処か離れた所から自分を客観視しているような感覚がいつもあった。それは、神羅に入社してからも変わらなかった。レノ様といる時はそれが幾らか和らいだが、それでもまだ激しく泣いたり笑ったりは出来ない。
私は家を出て、町の人々に礼を言って、旅に出た。またふらふらと彷徨う事にした。確かずっと遠くまで、二、三年は行っていたと思う。実りの無い旅だった。どこに居ても、罪の意識が私を苛んだ。夜はまた一人で悪夢を見ては目覚める、辛いものとなった。ただ、本当に苦しくて辛くて死にたくなるような時は、ふと、近くに暖かさを感じる事があった。お兄ちゃんを思い出せば、心の雲間からさっと光が射す。亡くなった今でも、お兄ちゃんは私の晴天だった。