大人オリジナル小説

触れられなくなった君へ……【R18・BL】
日時: 2019/08/16 16:25
名前: 椛 ◆kGPnsPzdKU

どうも、椛(もみじ)と言います。
普段は違う名前で活動してます。(トリップ付けてるので分かると思いますが)
今回、初めて個人で小説を書きます。
至らぬ点があると思いますが、宜しくお願いします。

今回のお話は一途な男子高校性×ある事がきっかけでトラウマから人に触れられる事が無理になる恋人です。
最後まで読んで頂けたら幸いです。

※感想を貰えたら嬉しいです。感想を送る際はこのスレではなく、雑談掲示板の方でスレを立てるのでそちらにお願いします。

※更新が不定期かもしれません。すみません。

※R18です。

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Re: 触れられなくなった君へ……【R18・BL】 ( No.7 )
日時: 2019/08/19 18:47
名前: 椛 ◆kGPnsPzdKU


暫く時間が経てば、皐月は目を覚ます。
隣には可愛らしい寝顔の尚人が眠っている。
今何時だと思い、スマホへ手を伸ばす。
時間は18時30分。自分達はどれだけ眠っていたんだ。
そろそろ起きなければいけないと思い、彼の身体を揺する。

「尚人ー。もう18時30だって、起きて帰んないとヤバくなーい?」

「んんぅ……」

此方の呼び掛けが届いたのだろう、彼は目を擦りながらも重い瞼を持ち上げた。
皐月と目が合えばまだフワフワとした意識の中でも、尚人は微笑みながら「おはよぉ」と挨拶をする。

「おはよ。身体、大丈夫?」

「うん、大丈夫……」

尚人も身体を起こし、「帰らないと」と呟く。
確かにこれ以上居てしまったら彼の家族が心配するだろう。
しかし、彼一人で帰らせるのは心配だ。
昼に卓也から聞いた話、それが頭に残ってしまっている。
皐月は身支度を整えている彼に向かって口を開く。

「もう遅いから送っていくよ」

ここから彼の家は30分以上はかかる。
19時は過ぎてしまうだろうし、一人で帰らせる訳にはいかない。
尚人は此方の言葉を聞き最初は遠慮していたが、皐月がしつこく言って承諾した。
送るというのが決まったので、皐月もさっさと身支度を始める。
その時、プルルルというスマホの着信音が部屋に響く。皐月のスマホからだ。
皐月がスマホを取り、相手を確認すると母からだった。

「もしもし?」

『あ、皐月?ごめんね。お母さん、大事な資料家に置いてきちゃったみたいで……』

母の話を聞き、皐月は自室を出ると母の部屋に入る。
色々な物が乱雑に置かれた机を確認すれば、母が求めているあろう資料が放置されている。

「うん、確かにあるよ」

『あ、やっぱり?それで、悪いんだけどすぐに持ってきてくれる?』

「は?今から?今は……」

『お願い!急いでるから!あ、じゃあ切るわね。お願いね!』

「あ、ちょ……」

此方の話を聞く前に母は電話を切ってしまった。
今から尚人を送りに行く予定だったのだが……
もう一度時間を見てみる。今から尚人を送りに行ってから資料を届ける……いや、母は今すぐと言っていた。どうしたものか……

「皐月くん?どうしたの?」

考えていると彼の声が背後から聞こえて振り返ると、心配そうに此方を見つめる彼がいた。
尚人に一先ず母に言われた事を言ってみる。
彼は話を聞くと笑みを浮かべた。

「僕は大丈夫だよ。お母さんの方に行ってあげて」

「え、でも……」

こんなに遅くなってしまったのは此方の責任だ。
だから最後まで送っていかなければいけないだろう。
皐月が渋っていると彼は此方より先に口を開いた。

「ほら、早くしないとお母さん困っちゃうよ?じゃ、僕は帰るから!また明日ね!」

「え……あぁ、うん。じゃあね」

尚人に押され、皐月は頷いてしまった。
彼はそそくさと家を出ていったらしく、その様子から結構急いでいたのが分かる。

「……とりあえず、届けに行くか」

溜め息を吐きながら、母に言われた資料を手に取る。
そして、皐月は準備が整うと家を出た。

* * *

『また明日』、彼はそう言った。
その言葉を信じて、いや、いつもの事なので皐月は気にしてはいない。
でも、今思えばあの時、母よりか彼を優先しておけば、変わったかもしれない。
そう後悔しても、もう、遅いのだ。

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