大人オリジナル小説
- 黒猫の思惑(BLスピオフ)完結
- 日時: 2021/12/31 23:38
- 名前: 白楼雪
※こちらは小説『黒猫の誘惑』のスピンオフ作品です。
※小説『黒猫の誘惑』はR18作品でしたが、スピンオフ作品の『黒猫の思惑』は冬木と関わる以前の桜夜の事。
あの日冬木と関わる前の桜夜の心情を綴った話ですので、年齢制限の必要なシーンはありません。
※更新は相も変わらず亀更新となるかと思います。
それでは、黒猫の思惑始めさせていただきます。
2021/12/31 年の終わりに、黒猫の誘惑のスピンオフ「黒猫の思惑」完結しました。
- Re: 黒猫の思惑(BLスピオフ) ( No.9 )
- 日時: 2021/12/31 23:35
- 名前: 白楼雪
勝負は一度だが、それこそ桜夜にとっては好都合というものだった。
「交換は必要かしら?」
彼女は自身の手札を扇のように片手に持ち、桜夜を誘うように問い掛ける。
「いや、このまま勝負といこうかな」
桜夜はしなやかな黒猫の尾を一振りして、手札を裏返したままテーブルに伏せた。
「オープン。あら…これは…」
女性店員が自信のある素振りでコールすると、彼女と同時に桜夜もカードを表にしてテーブルに並べた。
結果、女性店員の手札はフルハウス。比べて桜夜の手札はストレートフラッシュだった。
結果を見て、桜夜の口元に笑みが浮かぶ。
「俺の勝ちだね」
一言そう発すると、辺りの客から歓声が響いた。
「駄目ね。勝てないわ」
彼女はきっと、俺が細工した事に気がついていたのだろう。
しかしそれを指摘しないのは、桜夜の行った細工が見抜けなかったのか、或いはそれを指摘する事で彼女の細工も桜夜がばらして、先程の勝負を振り返させられる可能性を考えたのかもしれない。
前者だとすれば、女性店員の技術はまだまだ拙いものであると言えるだろうが、おそらくそれはない。ならば後者の理由で、ここで高い酒を奢る方が後々の商売に繋がると見たのだろう。やはり女性は怖いなと桜夜は内心に思いを落とした。
「へえ、君強いんだ。俺とも遊んでよ」
ふと背後から声を掛けられ振り向くと、そこには茶色の犬の獣人が興味深そうに声を掛けていた。
先程までカウンターにいた、噂の狂犬と呼ばれる青年。体格は、少し桜夜より背が高く筋肉も程好くついていそうに見える。
顔は喰えない兄さんといったところだが、容姿も表の性格も悪くはなさそうだ。きっと女性に事をかかない日々を送ってきたのだろう。
桜夜もそれなりに性欲に困らず生きてはきたが、最近は女性にも飽きていた。
「手加減は苦手なんだけど、それでも良いなら」
黒猫が尾を一振りして、桜夜が返す。
運命などは信じない。だが、この夜が桜夜のつまらない日々に変化を与えてくれるような気がしたのは、まぐれもない事実となる事を、その後の未来が囁いていた。
それの事はまだ、二匹の獣達に知るすべもないのだが。