大人オリジナル小説
- 触れられなくなった君へ……【R18・BL】
- 日時: 2019/08/16 16:25
- 名前: 椛 ◆kGPnsPzdKU
どうも、椛(もみじ)と言います。
普段は違う名前で活動してます。(トリップ付けてるので分かると思いますが)
今回、初めて個人で小説を書きます。
至らぬ点があると思いますが、宜しくお願いします。
今回のお話は一途な男子高校性×ある事がきっかけでトラウマから人に触れられる事が無理になる恋人です。
最後まで読んで頂けたら幸いです。
※感想を貰えたら嬉しいです。感想を送る際はこのスレではなく、雑談掲示板の方でスレを立てるのでそちらにお願いします。
※更新が不定期かもしれません。すみません。
※R18です。
- Re: 触れられなくなった君へ……【R18・BL】 ( No.11 )
- 日時: 2019/08/26 00:07
- 名前: 椛 ◆kGPnsPzdKU
「あ、の……これって……」
暫く言葉を失っていた皐月が、漸く口を開いた。
状況が全く呑み込めない。
精神的に不安定だとは聞いていたが、こんなに酷いとは想像もしていなかった。
今の彼は人に触れられる事にとてつもない恐怖を抱いているように見えた。
恋人の自分に対しても、反抗的だった。
皐月の言葉に反応した先程駆け付けた医師が、此方へ目線を移す。
「君が、皐月くんだね。ご両親から話は聞いているよ」
医師はそう言うと、「二人で話そうか」と病室から出るように促される。
彼の両親はというともう一度眠ってしまった尚人の側に、また腰掛けていた。
病室を出れば、ある休憩室へと案内される。
男性医師はそこに置いてある電気ポットから、お茶を注いで出してくれた。
「さて、どこから話そうか……あ、その前に自己紹介しないとね。私は鈴宮敦(すずみやあつし)。尚人くんの専門医だよ」
皐月が座っている所から長蛇向かいに、鈴宮敦と名乗った医師が座る。
皐月は軽く自分の自己紹介もして挨拶を交わした。
それよりも、皐月は尚人の状況が知りたい。その事しか頭にはなかった。
「あの、尚人は……」
此方から口を開けば、敦は分かってるという表情を浮かべる。
そして、言葉を選びながらも敦は言葉を紡いだ。
「あのね、尚人くんがされたこと、巻き込まれた事については皐月くんも分かっているだろ?本当に可哀想だよ、誰も助けてくれなかったんだから」
彼が言う言葉に、何故か皐月の心が痛んだ。
誰も助けてくれなかった、その中には当然、自分もいるのだ。
周りに言えば仕方ないで済まされてしまうかもしれないが、そうじゃない。
この辺で不審者の目撃情報は多数あったし、その日の昼休みに卓也にもあんなに忠告されていたのに。
自分は、尚人に甘えて、彼を、一人にしたのだ。
皐月はギュッと強く握り拳を握る。
そんな様子を尻目に、敦は言葉を続ける。
「それでね、あの子は重度のトラウマを持ってしまったようなんだ。普通のトラウマはある状況がフラッシュバックするのが多いけど、あの子の場合はそのある状況っていうのが『人に触られる』という状況なんだ」
何だよ、それ。そんなの、日常茶飯事ではないか。
敦によると、運ばれて意識を取り戻した時も両親が握っていた手を振り払い、暴れたという。
自分以外に触れられるとあの光景がフラッシュバックして、暴れる。
そんなの見てる方も辛いし、尚人だって、辛いだろう。
「だから、ああやって落ち着かせるために睡眠薬を投与しているんだ。まぁ、あまり妥当な対応ではないから考えものなんだけどね」
医師は苦笑を浮かべながら言う。
確かに、そんなに薬を投与していたら身体にも悪いだろう。
尚人の体力も弱まっているから治療のために点滴もしているがその時も暴れてしまうから睡眠薬で眠らせている、と医師は言った。
このような説明を受けても、本当なのかと疑ってしまう自分がいる。
また明日には、彼は元に戻っているのではないか。
そう思い、皐月は目の前の医師に問う。
「あの、でも、戻るんですよね?トラウマなんて克服すれば……」
「普通のトラウマなら、ね。あの子はある意味特別だ。もしかしたら……戻らないかもしれない」
敦が言った言葉は、皐月にとっては残酷なものであった。
目の前にあった光が突然、皐月の中から消えた。