大人二次小説(BLGL・二次15禁)
- オリジナルBLちょっとH?な続編です2(完)
- 日時: 2015/12/30 00:23
- 名前: ハル
ハルです。
BLGL……から移転しました。
なので、続きになってしまいます……申し訳ありません(>_<)
「オリジナルBLちょっとH?な続編です」と、書き方の違う最初の作品「サクラサク」の続きになりますので、初めての方には、読みづらいかと思います。
本当に、申し訳ありません(;>_<;)
ただ、作品への愛情だけで書いてます(汗)
読んで下さったら、光栄です。
よろしくお願い致します(T^T)
現在までの登場人物
*颯(そう)……皆から愛されている、超美形の高校生。世界的に有名な神崎グループの御曹司の一人。頭も良く、仲間への想いは人一倍強い。
*海(かい)……颯のいとこ。颯を溺愛する、IQ180の天才。颯に似てかなりの美形だが、性格は颯以外には冷徹。同じ歳だが、既にグループの事業に関わり、大きな存在感を出している。飛び級で、今は大学院生。
*大和(やまと)……関西を拠点とする、全国でも随一の組織、竜童会組長を父親に持ち、自分も若頭を名乗る極道者。組長の指示で関東へ乗り込み、親父としての指示で高校だけは卒業する為に、颯のいる高校へ転入。颯に一目惚れする。いつも真っ直ぐな大和に颯は翻弄される。
*淳(じゅん)……颯とは古い付き合い。ずっと、密かに颯を想っていた。大和が現れて、少しずつ変化していく。生徒会をしたり、サッカー部でもエースで、優しく人望も厚い。
*翔太(しょうた)……中学からの同級生達に、ずっと弄ばれていた。颯が、そんな翔太を助ける。翔太も、颯には頭が上がらないが、心の底では淳が好き……?
*田城一真(たしろかずま)……淳と同じ生徒会、サッカー部。淳が好きで気持ちは伝えている。颯の事が好きでも、支えてやりたいと思っている。
*早川拓実(はやかわたくみ)……神崎グループに次ぐ巨大財閥早川グループ御曹司。颯達の先輩。一見人当たりは良いが、内面はプライドが高く、負けず嫌い。自分より優秀な海に敵対心?がある。
「…………はぁ……」
西校舎の屋上、お気に入りの場所に颯はいた。
給水塔のコンクリートの土台に座り、一人、深い溜め息をつき、空を見上げる。
「駄目だな………最近、溜め息ばかりだ……」
そう呟き、遠くを見つめる姿もまた、艶やかで美しかった。颯自身、気付いてはいないが、海達のような周囲から羨望の眼差しを受ける男達に愛され、求められている事が、颯をますます綺麗で色香漂う人間へと成長させていた。
「ホンマやで。ここんとこ、俺が見つけた時は、溜め息しか出てへんやん」
「大和………っ」
いつからいたのか、給水塔の鉄柱に寄りかかり、笑顔を見せる大和が立っていた。
「……………久し振りやな、この場所。初めて……ここでお前を見た時は、向こうの山に桜が咲いとって、お前の姿と桜の色がホンマようマッチして綺麗やったっけ………。思わず、見とれたの今でも覚えとるわ」
大和は懐かしそうに、向かいの山に目を向け颯に語りかけた。
制服をいい感じに着崩し、シルバーのリングやブレスをオシャレに付けた大和は、一見すると背中に彫り物をした極道者だとは思えない、格好いい男子校生にしか見えなかった。
「ま…今の颯は、桜なんかのうても、十分過ぎる程綺麗やけど」
「な……なに言ってんだよっ。ホントにお前は、そう言う事を平気で言う………っ」
満面の笑みを向ける大和に、颯は顔を赤くして目を反らした。
「だって、綺麗なもんは綺麗なんやから仕方がないやん。美人は3日で飽きる言うけど、アレ嘘やで。1分、1秒でも会う度に惚れていくねんから」
「ば…………」
馬鹿か!?……と、叫びそうになったのを、颯は飲み込んだ。大和のこんな所に、いつも調子を狂わされる。
颯は、立ち上がりながら、再び小さな溜め息をついた。
その溜め息が終わらないうちに、大和は颯の腕を引っ張り、抱き寄せた。
「やま………と!?…」
一瞬の事に、颯は身動きが取れなかった。
自分より、少し背の高い大和の胸の中に、吸い込まれるように入ってしまった。
「……………その、溜め息の原因の一つは、俺か?………溜め息ばかりついとったら、俺が食べてまうで」
「………大和…………」
さっきまでの大和とは、明らかに声のトーンが変わっていた。
颯の身体に、緊張が走る。
「………前にも言うたやろ。誰も、お前を責める気なんかないて。俺達が、勝手にお前に惚れとんねん。お前が苦しむ必要ないんや」
大和の、静かに話す言葉が、颯の中に染み込んでいくようだった。
「……んな………そんな訳にはいかないよ。淳も……お前も、皆………凄くモテて、人としても素敵なのに、俺一人がハッキリしないせいで、皆を留めてしまってる……。皆の……これからを台無しにしている気がするんだ。………欲張りで、卑劣で、絶対に許されない……………」
大和の胸の中で、颯は顔を埋め、苦しそうに心の内にあるものを吐き出した。
「アホ………。お前より、ええ女がおらんのやからしゃーないやん。俺らは、お前やないとあかんねん。お前やないと、何も楽しゅうない。焦って結論出さんでええから、頼むから………自分を責めんでくれや」
「大和………」
いつからだろうか……気付いたら、苦しい時にはいつも大和が現れていた。大和流な優しさが、何度自分を暖めてくれただろうか………颯は、海の前でしか泣いた事がなかった目が、潤んでいる事にハッとした。
「…………ご……めん………」
絞り出す颯の声に、大和は胸が熱くなった。
「しつこいで。お前は、悪くない。…………悪いんは、お前に惚れてもうた……俺らや。いや、ベタ惚れした俺か?」
冗談っぽく、大和が颯に笑いかける。そんないつもの大和の冗談が、颯に笑みを呼ぶ。
「…………ばか………」
照れくさそうに言う颯を、大和は愛しい目で見つめる。
「………馬鹿や……お前に、全部持ってかれてしもうた、大馬鹿野郎や………。…………かんにんな………お前に惚れてもうて」
大和の手が、颯の手を優しく握りしめた。
「大和……………。………海と………海と、同じような事言うんだな…………」
颯の中で、海から言われた愛の言葉が、今の大和の言葉と重なっているように思えた。
「………え………」
颯の話に、大和の表情が一変した。
「海に…………海に、惚れてるって言われたんか……?」
心臓が、嫌な高鳴りを呼び起こすのがわかった。
颯を握る手に、自然と力が入っていた。
「……あ……………いや……」
大和の様子に、颯も不安を募らせる。
言ってはいけない事を、言ったのかもしれない…………。
「正直に言えや。海が、お前に惚れてるって言うたんやな!?」
「大和………痛い…………」
今まで、自分の感情を隠していた海が、颯に気持ちを伝えた?………一番警戒して、一番ライバルにしたくなかった奴が、ついに動き始めた………!?
大和の奥深くで、今まで以上に強い感情が沸き上がろうとしていた。
続く………
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- Re: オリジナルBLちょっとH?な続編です。2 ( No.15 )
- 日時: 2015/05/17 02:52
- 名前: ハル
「淳にも、一応……同じ話はしているんだが…………」
広く静まり返ったリビングに、落ち着いた海の声だけが響いた。
「だが…………?だがって、何や?何か問題でもあるんか?」
L字に配置された、上質な革張りのソファに深く座り、考えるように言葉を止めた海に、大和がつかさず疑問をぶつける。
「………あいつの父親は、現外務大臣の観月俊朗だ。あまり、あいつに無理はさせる訳にはいかないと思ってな」
「…………え…………?」
初めて聞いた、淳の家族の名前に、思わず大和は耳を疑った。
「………いや、今何て?淳の父親が、現大臣………!?はあ?嘘やろ………?それ、ヤバくないか?俺、側におったらマジ洒落にならんやつやん!?…………政治家とヤクザなんか、一緒におったら即叩かれるわ………っ。何で、あいつ言わへんのや………」
「………さあな、それはお前と淳の問題だ。俺に聞くな」
淳の立場を考えて、慌てる大和とは真逆に、海は淡々と答える。
「………っ……。………お前って、ホンマ颯以外には無関心やな。………会話が続かへんわ………」
海の冷徹振りに、大和は呆れたように息を吐いた。
「別に、俺はお前と会話をするつもりはない。颯の為に、動いてもらえればそれでいい」
何の躊躇いもなしに表情一つ崩さず言う海に、大和は海の颯への想いの深さを垣間見たようで、身の引き締まる気がした。
相手にしているのは、普通の人間ではない、『神崎海』なのだ。
「………悪い………話そらしてしもうたな。ちゃんと聞くさかい、説明してくれへん?」
大和は、気を取り直して海の方へ向き直し、座った。
「………簡単に言う。この早川拓実は、俺を目障りだと思っている。歳の近い俺が、自分より目立つ事が気に入らないんだ。……………それも、昔からな」
「そう言えば、淳もそんな事言うてたな………」
大和なりに、記憶を辿りつつ、海の話に耳を傾けた。
「その早川が、今イギリスの留学を休学し、日本へ帰ってきている。そして、俺と同じ様に自分の会社を手伝い始めた。俺を、邪魔するためにな」
「あ………?どう言う意味や?」
眉をひそめる大和に、海は封筒に入ったいくつかのファイルを取り出した。
「最近、早川が関わってきた俺の仕事だ。俺が指揮して進めるつもりだった仕事に、何かしらの横やりを入れてきて、駄目にした」
ファイルの中の書類に書かれたプロジェクト名を見ると、一つ一つがそれなりに大きな仕事だった事が感じられた。
「…………結構、デカい金も動いとったやろ?お前、大丈夫なん?」
海の抱えている仕事量の大きさに、大和もさすがに海を気遣う言葉を口にしていた。
「だから、今、グループから離れる訳にはいかないんだ。颯が………手伝う時には、土台をきちんと固めておきたいからな」
「………海………」
全ては、颯……ただ一人の為………迷いのない海の瞳が、大和の覚悟を一層強くする。
「…………せやけど、それと颯を守るって………どう繋がるねん?颯は、まだ仕事してへんやろ?」
大和の質問に、今まで冷静だった海の顔が、一瞬厳しいものになったように見えた。
「あいつは…………早川は、わかっている。俺を潰すのは、颯を使うのが一番だと……」
「え…………」
「仕事で動けなくした俺の隙を狙って、颯に何を仕掛けるか………わかったもんじゃない。……………何年か前も、一度危ない時があった。その時は、まだ俺が同じ中学だったから防げたけどな…………」
許されない過去の記憶が、海の行動を駆り立てる要因となっている事を、大和はその様子から理解出来た。
「…………そないに、危険な奴なんか………」
低い声で言う大和の顔に、竜童会若頭の一面が覗いていた。
「だから、頼んでいるんだ。お前や、淳に………」
グループを背負ってなければ、どれ程颯の側にいてやりたいか………守りたいものも守れないもどかしさを、海は胸の中で圧し殺した。
「………お前なら、守るだろう?どんな手を使っても、颯を………」
真っ直ぐ大和を見る海の目に、大和の拳は強く握りしめられた。
「…………守るな。どんだけ、えげつないやり方やと言われても、俺は俺のやり方で、颯を守ってやるわ」
普段は見せない、若頭としての大和の姿がそこにはあった。
大和の決心を聞いて、海はソファから立ち上がった。
「…………俺の話は、以上だ。お前の話は、何だ?…………颯をくれと言うなら、断るが?」
大和が何も言わないうちに、海はハッキリと気持ちを伝えた。
「おぃ!俺、まだ何も言うてへんやろ!」
急な話の切り替えに、大和は声を大きくした。
「…………そう言う話をするつもりだったんだろ?他に、何かあるのか?」
海の言葉に、大和は少し思い詰めた表情で、ゆっくり口を開いた。
「………………ある。俺も……お前に頼みたい事がある………」
「…………大和………?」
大和の、もう一つの覚悟が、語られようとしていた。
続く…………。
- Re: オリジナルBLちょっとH?な続編です。2 ( No.16 )
- 日時: 2015/05/18 18:48
- 名前: ハル
「……………海、お前かて考えとるやろ?俺みたいなんを、このまま颯の側におらしたらあかんて………」
大和は海から目を離し、両手をパンツのポケットに入れて、壁に掛けられたグラフィックアートの絵をおもむろに見つめた。
「…………考えてるな。いつ、颯からお前を離そうか、最近特に考えてるよ。…………日に日に、お前が颯の中に入り込んでいくのが、手に取るようにわかるからな」
今までとは違う、空気を漂わせる大和の背中を見ながら、海は隠さず本音を口にした。
「大和、お前は所詮………極道の人間だ。この先ずっと、颯の近くにいてもらっては困る」
冷静な海の言葉が、大和の心に重くのしかかる。
「……………だったら………だったら、そん時は………俺を、お前の手で殺してくれへんか?」
「…………なに………」
思いもよらない大和の発言に、さすがの海も顔色を変えた。
「ずっと………あいつに会うてから、ずっと……悩んできた。これ以上はあかん………これ以上、惚れてもうたらあかんて。毎晩々嫌て言う程、悩んで悩んで悩み尽くしても、この気持ちは抑えられへん。理屈ではわかっとっても、『好き』が怖い位のスピードでデカくなっていくねん」
弱さを見せたい訳じゃない。くさい台詞を並べて、自分に酔いたい訳でもない。それなのに、颯の事を考えると、今までには無かった自分が姿を現す。
颯の存在が、大和の全てを変えていく。……………これが、本気で誰かを愛していく事なのか…………大和にも、苦しい想いが渦巻いていた。
「俺なんかが、あいつの将来の邪魔になったらあかんて、痛い程理解しようとしても、身体が動いてまう。あいつに会いとうて………会いとうて会いとうて、身体が勝手に動いて、セーブが効かへんのや………!」
その場に叩きつけるように、大和は苦しい想いを吐露した。
「大和…………」
大和の吐き出される気持ちの波が、海にも打ち寄せてくるような、大きくて激しいものへと変貌していく。
「…………せやから、お前に俺を止めて欲しい。颯の将来を考えるよりも、颯の気持ちを考えるよりも、自分の気持ちを止められへん俺を…………お前に、止めて欲しい。お前やったら出来るやろ?手がつかへんように、俺を殺(ヤ)る事が……………」
強い信念を定めた、大和の目が、海を姿を捉える。
「……………出来るな。俺なら、お前を消す事が出来る。…………それが、颯の為になるなら、俺に迷いはない」
海にしか言えないであろう、大和の苦悩への返事だった。
その返事に、大和は微かに笑みを溢した。
「それ聞いて、安心したわ。俺が、颯の足手まといになる可能性が低なった………。……………恩に着るで、海…………」
二人の間で、決して他言される事のない、密約が成立した瞬間だった。
「大和………っ……」
海との話を終え、玄関から出て来た大和を、颯が心配そうな顔で出迎えた。
「………颯…………」
自分に駆け寄る颯を、大和は優しく迎える。
「海の………海の話は、何だったんだ?大丈夫だった?」
颯は大和にしがみつき、顔を見つめる。
不安で一杯の表情も、また色っぽく綺麗なものだった。
「心配症やなあ…………大丈夫やて言うたやろ?………話も、大した話やなかったわ。また、教えたるさかい、そないな顔すんなや」
「…………ホントに?ホントに、大丈夫?」
相手が海だけに、颯の不安は簡単には拭えなかった。
そんな颯の顔に、大和はそっと手を添わす。
「俺、そんな頼りない?」
「あ…………いや…………ごめん………」
颯に微笑みかけながら言う大和に、颯はみるみる頬を赤くし、目を合わせられなくなった。
自分でも不思議な程、大和の瞳にドキドキしていた。
そんな颯を、大和はソッと抱き寄せる。
「…………………なあ、颯………また、あのたい焼き食べに行こうな」
「…………え……?」
「今まで……………したいとも思わへんかった普通の事が、お前と一杯したいんや。誰もが手に出来る………小さい幸せ、一杯欲しい…………」
温かい大和の声が、颯の身体に染み渡るような、言葉だった。
「………大和…………?」
「一人で帰るの、寂しいなあ…………このまま、連れ去ってまおうか?」
「何………」
自分の胸の中で、戸惑う颯が、大和には何よりも愛しくて、抱き締める腕が自然と強くなった。
「クス…………嘘やて。早よ、家帰さんと、海に大目玉や。………また、明日…………お前の笑顔、見せてな」
「大和…………」
大和は颯の身体を少し離し、その柔らかい唇に、自分の唇を重ねた。
「…………愛しとるよ………」
艶やかな大和の囁きが、颯の身体を溶けるように火照らす。
颯は大和の腕を掴み、顔を大和の首筋に埋めた。
「…………ま……と………」
「………長い、一日にしてもうたな。かんにんな………。………おやすみ、颯………」
名残惜しい気持ちを抑えて、大和はエレベーターへ乗った。
- Re: オリジナルBLちょっとH?な続編です。2 ( No.17 )
- 日時: 2015/05/20 16:44
- 名前: ハル
『ガチャ………』
薄暗いマンションの長い廊下の一角、壁に備え付けられた飾り棚に置いてあるアンティーク時計は、朝の6時過ぎを指していた。
「………まだ、6時過ぎか………」
早くに目が覚めた颯が、自分の部屋から顔を出して呟いた。
昨日一日の出来事が頭を巡って、なかなか眠れない夜を過ごしてしまっていたのだ。
「………………海、もう起きてる………?」
海の部屋の扉から漏れる光を見付け、颯は扉に手をかけた。
あれから……大和と別れ、海は仕事を片付けるからと部屋に入ってしまい、珍しくまともに話もせずに床についた事が気になった。
『トントン』
「………海?起きてるの?………入るよ………」
戸をノックし、颯はそっと足を踏み入れる。
ダークブラウンを基調とした、シンプルでモダンな家具と、壁の白がバランスの良いバイカラーとなって、オシャレな部屋を演出していた。
そんな部屋の窓際の、大きな革張りのソファの上に、海は昨日の服装のまま横になって寝ていた。
「海…………」
颯が近付くと、ソファの前のテーブルには、パソコンと共に沢山の書類やファイルが並べられ、海の抱える仕事量の多さが見てとれた。
「…………こんなに、仕事を抱えてるのか………?叔父さん達の手伝いって量じゃないよ……………どうして、何も言ってくれなの……………」
自分のしている大変さを、決して表に出さない海に、颯はもどかしさを感じながら寝顔を見つめる。
柔らかい黒髪が眉にかかり、くっきりとした二重の下にある長い睫毛が、目を閉じていても海の美しさを感じられ、通った鼻筋と形の整った淡い桜色の唇が、非の打ち所の無い容姿端麗な姿を象徴していた。
見慣れている颯でさえ、吸い込まれるように、見とれた。
「少し…………痩せた……?綺麗な姿が、崩れちゃう。海は、完璧じゃなきゃ駄目なんだよ………」
開いたシャツの隙間から覗く、海の首筋から鎖骨にかけての色っぽい流れに、颯は思わず手を滑り込ませ、艶やかな唇を重ねた。
「…………ん…………そ……う………?…」
颯の緩やかな手の動きと、自分の唇を微かに刺激する口づけに、海は深く黒い瞳を静かに覚ました。
「………おはよう、海………。昨日、徹夜したの?」
海を見下ろすように、颯は心配して訊ねる。
「ああ………いつの間にか、寝てたのか………。…………クス………何?俺の寝顔に、欲情したのか?」
海は、ゆっくり身体を起こすと、颯の腰を抱き寄せ、その首筋にキスをした。
「ぁ………だ、だって………海が、あまりにも綺麗だから………」
海の唇の感触に、颯は素直に反応し、海と身体を密着させた。
「颯だって、充分綺麗だよ。…………大和に、恋をしているからかな…………」
「…………え…………恋…………?」
海から出た意外な単語に、颯は驚いて顔を見上げた。
「やっぱり………気付いてないのか……」
「海……………?」
大和の名前に、心なしか動揺する颯を、海は優しく包み込んだ。
「………………なあ、颯。前に俺が、あいつらから本気でお前を奪ってもいいかって言ったの覚えているか?」
「あ………う………う、うん…………」
海に、初めて身体を求められた日の朝、海から言われた言葉。忘れられる訳がなかった。
颯は、戸惑いつつ答えた。
「昨日の、大和といるお前を見て、仕事がこんな状態でなかったら、早く実行しておくべきだったと、少し…………後悔したよ」
「………海…………」
颯を愛しそうに見つめ、微笑む海の笑顔は、それだけで颯自身が海が自分だけのものだと安心させられる程、愛に溢れていた。
「淳の時とは、明らかに違うからな…………。なんて言うか………人に臆病で、弱いお前にとって、心を許せる数少ない仲間は本当に大切で、その仲間を失うかもしれないと言う不安は、恐怖でしかない。………淳に対しては、そうだった。だから、その恐怖でお前は泣いていたし…………逆に、淳がお前を求めてくれた事で、心から安心して素直に受け入れた……」
誰よりも颯を理解してきた海は、颯以上に颯を知り、颯を導いて行く。
泣き虫で、弱く、脆い颯にとって、そんな海の存在は自分を作り出す全てに思えた。
「でも、大和は…………大和は、俺に近い。自分でも無意識にお前を理解し、お前を動かしている。……………大和の気持ちを、お前が気にして、感情を左右されているのが、いい例だ。………………お前の中に、生まれて初めて………ちゃんとした恋が芽生えていると、俺には見えたよ」
「…………恋…………俺が、大和に…………?………恋…………」
自分に自信のない颯には、確かに大切に想う仲間に求められる事は、幸せに感じていた。それで、不安が拭えたから。
だけど、大和は…………?大和には見せれた涙も、女達から浴びる視線への嫉妬も………甘える仕草も……………好きだって、言えたのも………恋をしているから…………?
「………海……………俺……………」
大和を想うと、胸がドキドキしてきた。
颯は、震える身体を海の胸に埋める。
「………こんなお前から、大和を引き離したら………お前は、どうなってしまうかな…………。本気で奪うなんて……………今は、言えなくなったよ………」
「…………めん…………ごめんなさい………………海……」
「謝るなよ。颯が、成長したって事だろう?………大和のお陰で、変わろうとしてるんだ…………。いいことじゃないか…………」
唯一無二の愛する人…………海は、颯の為に自分の想いをしばらくの間殺す事を決めた。
「……………颯…………でもこれだけは、覚えておいて欲しい。この先、いつか大和とはぶつかる時が来ると思う。その時は、お前を譲るつもりはない。…………お前は、俺の颯なんだからな」
「………海……………」
強く、大きく、果てしない海の愛情を、颯は一人独占している事を改めて胸に刻んだ。
「翔太っ!」
長い校門への道筋で、後ろから自分を呼ぶ声で翔太は立ち止まった。
ジャ○ーズにいそうな可愛らしく爽やかな翔太の姿は、生徒達が行き交う中でも目立っていた。
「………げ…………大和……」
翔太が振り向くと、これまた周りから目を惹く大和が自分に向かって歩いて来た。
「オイ、げ……てなんやねん、げ……て」
翔太の反応に、大和はムッとして言った。
「だって、お前といると変な意味で目立つんだよ。ホラ、皆見てるし」
自分では意識してないが、大和は、その悪そうな雰囲気とオシャレさを感じさせる制服の着こなしから、女子達に人気が高かった。
「あ?そっか?………ええやん、そんなん気にせんで。ってか、お前………普段目立つ淳とよう一緒におるやんけ」
淳…………その名前に、翔太は心臓が張り裂けそうになった。
自分が泣いてしまった事が、脳裏に浮かんで、消えないのだ。
「…………?………なんや………もしかして、淳と何かあったんか?」
翔太の動揺した様子に、勘の鋭い大和が気付く。
「べっ………べ、べ…………別に……何もっ………」
「あったんか。……………わかりやすっ!」
しどろもどろになる翔太を目の前して、大和は呆れ気味に突っ込んだ。
「う………うるさいっ…………お前には関係ない事だよっ……」
翔太は顔を赤くして叫ぶ。
「翔太っ……!!」
その途端、二人の会話を遮るように、翔太の名前が響いた。
「…………誰や?……」
大和が不思議そうに声のした方へ目を向けると、私服姿の十代位の少年が、道べりにひっそりと佇んでいた。
「……………っ……!か………川上………っ」
今時な、茶髪で淡いブルーのUネックのTシャツに、濃紺のカーディガンを羽織り、チノパンをはいた少年を見るやいなや、翔太はみるみる顔を青ざめ、身体を硬直させた。
「………翔太…………?」
これまでにない翔太の豹変ぶりに、大和の顔つきも変わった。
「どうしたんや?………誰や、あいつ。どういう知り合いや?」
大和は翔太の腕を掴み、翔太の顔を覗き込むように真顔で聞いた。
「…………あ………あ、あれ………した奴…………」
「………え?……」
「お、俺を…………俺を………犯してた………奴………」
身体を震わせ、動悸が荒くなりながら、翔太は言葉を振り絞り、答えた。
続く……………。
- Re: オリジナルBLちょっとH?な続編です。2 ( No.18 )
- 日時: 2015/05/22 19:28
- 名前: ハル
「は………?今、なんて…………」
自分の襟元を握り締め、荒くなる息を落ち着かせようと深呼吸を繰り返す翔太に、大和は眉をひそめて聞き返した。
「だ、だから……………俺を、も……玩んだ連中の一人………」
道沿いに、登校する生徒達が徐々に少なくなっていく中、翔太は今にも崩れそうになる身体を、周囲に悟られまいと必死にこらえた。
「あいつが…………。前に見た時は、既に颯がボコボコにしとったさかい、顔なんか覚えてへんかったわ………」
川上と、翔太が口にした少年を見ながらそう言うと、大和は翔太の手首を掴んで自分の後ろへ引っ張った。
「大和………っ!?」
大和の突然の行動に、翔太は驚いて、その背中を見上げた。
「お前は、俺の後ろに隠れとれ。俺が、話したる」
「え………でも……………」
「心配せんでも、お前がおるのに問題なんか起こさへんわ。大体、素人相手に手は出さんよってな」
青ざめて不安を覗かせる翔太に、大和は前を向いたまま落ち着いた声で話す。
そんな大和の声に、何故か翔太は震えが和らぐ気がした。
「……………大和………」
動揺する翔太とは逆に、冷静に当然の如く守ろうとしてくれる大和の後ろ姿は、とても大人のようだった。
普段ケンカばかりしていた大和が、今日はとても頼もしく感じる………翔太は、黙って俯いた。
「………さて…………川上?………とか言う、お前」
「は………はい………」
翔太の壁になり、大和は川上に近付き声をかけた。
見た目がいかにもヤンキーな大和に、いきなり呼ばれ、川上も少しビビり気味に返事をする。
「どのツラ下げて来とんねん。翔太が怖がってんのが、わからんのんか?」
「す、すみません…………ご迷惑になる事も、滅茶苦茶考えてました……」
「あ?…………考えての行動がコレか?」
大和の顔をまともに見れず、おどおどした様子の川上に、大和は目を反らさず質問を被せた。
「すみません………。で、でも………何も浮かばなくて…………。退学になってから、ずっと……翔太にしてしまった、取り返しのつかない罪の重さを考えてましたが、どうしたらいいか、何も浮かばなくて…………俺……気付いたら、ここに………」
取り返しのつかない罪………その言葉に、翔太は過去の汚ない記憶が頭をよぎり、苦しそうに目をつぶった。
翔太にとって、川上達同級生に犯された記憶は、地獄でしかなかった。
「浮かぶワケないやろ……」
大和は低く呟くと、川上のTシャツを掴み上げた。
「翔太の身体や心に刻まれた傷は、一生消えへんねん。お前のツラ見ただけで、震えが止まらんようにまでなっとる奴を、簡単に救える方法なんか浮かぶか!甘えた事ぬかすなや………っ。もっと……底辺まで苦しみ抜いてからツラ出せ。ボケが……っ…」
「…………す……す、すみません……っ」
本当の大和の………何割が出たのだろうか………きっと、半分も出してない姿かもしれない。ただ、普通の同世代にとっては、充分な迫力となっていた。
「大和…………」
目を潤ませ、翔太は大和の温かさを実感した。
「…………本当に………ごめん、翔太……」
翔太が顔を上げると、川上もまた、涙を流していた。
「お前を………お前を、苦しめて…………人として、最低だ………。殴られても、罵られてもいい…………何年かかっても、お前に償いをしたくて…………本当に……ごめん………」
川上は、その場に崩れ落ちる身体を両腕で支え、そのまま頭を地面に着けて土下座した。
「…………お前………もしかして……………」
川上の泣き崩れる姿に、大和は喉まで出てきた言葉を飲み込んだ。
「…………川……上…………」
自分を玩んだ元同級生の意外な姿に、翔太も戸惑い、立ち尽くした。
「…………とにかく、こないな所で土下座されても、目立つだけや。今日は帰れ。翔太も動揺がおさまらへん」
大和は、川上に声をかけると腕を引っ張り、立たせた。
「…………どうしたい?お前は」
人のいなくなった校門をくぐり、大和は翔太に言った。
「……………え………」
大和の数歩後ろを歩きながら、翔太は足を止め、大和を見つめる。
「あいつ、また来るで?」
「あ……………」
さっきまでの出来事に、放心状態な翔太に答える気力はなかった。
「ええ機会やないんかな?お前が、一歩を踏み出すのに」
「大和…………」
「勘違いすんなや?あいつに会えって言うとんのと違うで。会いとうないんなら、俺が話つけたるさかい、怖がらんでええ。…………俺が言いたいんは、このまま颯や淳に守られとっても、お前の心が立ち直れる訳やない。自分の心を決めるんは、結局自分やさかい、お前が前へ進む為にも、考えるええ機会やって言うとんや」
真っ直ぐに見てくる大和の瞳が、翔太にはあまりにも眩しくて痛かった。
「…………苦しいだけやろ?ずっと…………淳の事想うてても、過去の事を引きずって腹に貯めて………苦しいだけやん。いつまで、そんな人生送っていくねん。お前は何も悪くないんや、堂々と恋愛せえよ。俺なんか…………しがらみだらけでも、前に行きとうてもがいとるで」
普通ではいられない自分の恋に、大和は遠く颯を想った。
「…………俺………」
翔太は、胸に大きく膨らむ淳への想いに、再び涙が込み上げてきた。
「…………翔太?あれ、翔太と嵩原じゃないか?」
サッカー部の朝練を終えて、部室から出て来た田城が淳に声をかけた。
「翔太…………?」
部室の鍵をかけていた淳が、田城の目を向けている方を振り返る。
「なんか、翔太……元気なくないか?遠目だから、そう見えるだけかな………」
「……………」
淳の頭に、翔太の泣いた顔が浮かんだ。
あの後も、結局翔太には会えてなかった。
「田城、ごめん。鍵………戻してもらっといていいか?俺、行ってくるわ」
「え?あ、ああ………そりゃ、構わないけど………」
淳は手に持った鍵を田城に渡すと、二人を追って走った。
「………俺、淳が好きだ………」
翔太は、俯きか細い声で言った。
「ああ…………わかっとる」
「…………皆の憧れの颯に助けられて、皆の尊敬する淳に支えられて、俺には勿体ないって、いつも思ってた。俺みたいな汚れた人間には、二人は眩しすぎて、側にいられるだけで幸せで………ホント、贅沢に思えた。…………なのに、好きになったんだ。俺なんかが…………優しくて格好いい淳を、好きになってしまった……」
翔太の目に、ますます涙が溢れ、こぼれていく。
「駄目なんだよ………どんなに忘れたくても、忘れられない。川上達を受け入れた身体が………あいつらのモノを加えさせられた感覚が………身体の中に入ってきたあいつらが…………。淳を好きになればなる程、思い出して、自分が汚いものにしか見えなくなる……!………んなに、こんなに淳を好きなのに………俺は、汚れているんだ………っ」
震える手で顔をおおい、倒れそうになる翔太を、大和は優しく抱き締めた。
「…………まとっ……」
「淳の代わりや。…………颯には、内緒やで?…………今まで、一人で泣いてきたんやろ?思い切り泣いたらええやん。今日は、俺が支えたるわ。………………前、進もうや。一人で苦しむ事ないんやで」
「うぅ…………っっ………」
翔太は、大和の胸にすがり、顔を涙で濡らした。
「………………翔太が、俺を………!?」
緊迫した二人の様子に、出るに出られなくなった淳は、近くに設置されていた倉庫の後ろで、驚く事実を受け止めていた。
「だから………あの時、泣いたのか…………」
動揺する心を必死で抑え、淳は手に持った鞄を握り締めた。
続く…………。
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