大人二次小説(BLGL・二次15禁)

オリジナルBLちょっとH?な続編です2(完)
日時: 2015/12/30 00:23
名前: ハル

ハルです。

BLGL……から移転しました。
なので、続きになってしまいます……申し訳ありません(>_<)
「オリジナルBLちょっとH?な続編です」と、書き方の違う最初の作品「サクラサク」の続きになりますので、初めての方には、読みづらいかと思います。
本当に、申し訳ありません(;>_<;)

ただ、作品への愛情だけで書いてます(汗)
読んで下さったら、光栄です。
よろしくお願い致します(T^T)


現在までの登場人物
*颯(そう)……皆から愛されている、超美形の高校生。世界的に有名な神崎グループの御曹司の一人。頭も良く、仲間への想いは人一倍強い。
*海(かい)……颯のいとこ。颯を溺愛する、IQ180の天才。颯に似てかなりの美形だが、性格は颯以外には冷徹。同じ歳だが、既にグループの事業に関わり、大きな存在感を出している。飛び級で、今は大学院生。
*大和(やまと)……関西を拠点とする、全国でも随一の組織、竜童会組長を父親に持ち、自分も若頭を名乗る極道者。組長の指示で関東へ乗り込み、親父としての指示で高校だけは卒業する為に、颯のいる高校へ転入。颯に一目惚れする。いつも真っ直ぐな大和に颯は翻弄される。
*淳(じゅん)……颯とは古い付き合い。ずっと、密かに颯を想っていた。大和が現れて、少しずつ変化していく。生徒会をしたり、サッカー部でもエースで、優しく人望も厚い。
*翔太(しょうた)……中学からの同級生達に、ずっと弄ばれていた。颯が、そんな翔太を助ける。翔太も、颯には頭が上がらないが、心の底では淳が好き……?
*田城一真(たしろかずま)……淳と同じ生徒会、サッカー部。淳が好きで気持ちは伝えている。颯の事が好きでも、支えてやりたいと思っている。
*早川拓実(はやかわたくみ)……神崎グループに次ぐ巨大財閥早川グループ御曹司。颯達の先輩。一見人当たりは良いが、内面はプライドが高く、負けず嫌い。自分より優秀な海に敵対心?がある。




「…………はぁ……」
西校舎の屋上、お気に入りの場所に颯はいた。
給水塔のコンクリートの土台に座り、一人、深い溜め息をつき、空を見上げる。
「駄目だな………最近、溜め息ばかりだ……」
そう呟き、遠くを見つめる姿もまた、艶やかで美しかった。颯自身、気付いてはいないが、海達のような周囲から羨望の眼差しを受ける男達に愛され、求められている事が、颯をますます綺麗で色香漂う人間へと成長させていた。
「ホンマやで。ここんとこ、俺が見つけた時は、溜め息しか出てへんやん」
「大和………っ」
いつからいたのか、給水塔の鉄柱に寄りかかり、笑顔を見せる大和が立っていた。
「……………久し振りやな、この場所。初めて……ここでお前を見た時は、向こうの山に桜が咲いとって、お前の姿と桜の色がホンマようマッチして綺麗やったっけ………。思わず、見とれたの今でも覚えとるわ」
大和は懐かしそうに、向かいの山に目を向け颯に語りかけた。
制服をいい感じに着崩し、シルバーのリングやブレスをオシャレに付けた大和は、一見すると背中に彫り物をした極道者だとは思えない、格好いい男子校生にしか見えなかった。
「ま…今の颯は、桜なんかのうても、十分過ぎる程綺麗やけど」
「な……なに言ってんだよっ。ホントにお前は、そう言う事を平気で言う………っ」
満面の笑みを向ける大和に、颯は顔を赤くして目を反らした。
「だって、綺麗なもんは綺麗なんやから仕方がないやん。美人は3日で飽きる言うけど、アレ嘘やで。1分、1秒でも会う度に惚れていくねんから」
「ば…………」
馬鹿か!?……と、叫びそうになったのを、颯は飲み込んだ。大和のこんな所に、いつも調子を狂わされる。
颯は、立ち上がりながら、再び小さな溜め息をついた。
その溜め息が終わらないうちに、大和は颯の腕を引っ張り、抱き寄せた。
「やま………と!?…」
一瞬の事に、颯は身動きが取れなかった。
自分より、少し背の高い大和の胸の中に、吸い込まれるように入ってしまった。
「……………その、溜め息の原因の一つは、俺か?………溜め息ばかりついとったら、俺が食べてまうで」
「………大和…………」
さっきまでの大和とは、明らかに声のトーンが変わっていた。
颯の身体に、緊張が走る。
「………前にも言うたやろ。誰も、お前を責める気なんかないて。俺達が、勝手にお前に惚れとんねん。お前が苦しむ必要ないんや」
大和の、静かに話す言葉が、颯の中に染み込んでいくようだった。
「……んな………そんな訳にはいかないよ。淳も……お前も、皆………凄くモテて、人としても素敵なのに、俺一人がハッキリしないせいで、皆を留めてしまってる……。皆の……これからを台無しにしている気がするんだ。………欲張りで、卑劣で、絶対に許されない……………」
大和の胸の中で、颯は顔を埋め、苦しそうに心の内にあるものを吐き出した。
「アホ………。お前より、ええ女がおらんのやからしゃーないやん。俺らは、お前やないとあかんねん。お前やないと、何も楽しゅうない。焦って結論出さんでええから、頼むから………自分を責めんでくれや」
「大和………」
いつからだろうか……気付いたら、苦しい時にはいつも大和が現れていた。大和流な優しさが、何度自分を暖めてくれただろうか………颯は、海の前でしか泣いた事がなかった目が、潤んでいる事にハッとした。
「…………ご……めん………」
絞り出す颯の声に、大和は胸が熱くなった。
「しつこいで。お前は、悪くない。…………悪いんは、お前に惚れてもうた……俺らや。いや、ベタ惚れした俺か?」
冗談っぽく、大和が颯に笑いかける。そんないつもの大和の冗談が、颯に笑みを呼ぶ。
「…………ばか………」
照れくさそうに言う颯を、大和は愛しい目で見つめる。
「………馬鹿や……お前に、全部持ってかれてしもうた、大馬鹿野郎や………。…………かんにんな………お前に惚れてもうて」
大和の手が、颯の手を優しく握りしめた。
「大和……………。………海と………海と、同じような事言うんだな…………」
颯の中で、海から言われた愛の言葉が、今の大和の言葉と重なっているように思えた。
「………え………」
颯の話に、大和の表情が一変した。
「海に…………海に、惚れてるって言われたんか……?」
心臓が、嫌な高鳴りを呼び起こすのがわかった。
颯を握る手に、自然と力が入っていた。
「……あ……………いや……」
大和の様子に、颯も不安を募らせる。
言ってはいけない事を、言ったのかもしれない…………。
「正直に言えや。海が、お前に惚れてるって言うたんやな!?」
「大和………痛い…………」
今まで、自分の感情を隠していた海が、颯に気持ちを伝えた?………一番警戒して、一番ライバルにしたくなかった奴が、ついに動き始めた………!?
大和の奥深くで、今まで以上に強い感情が沸き上がろうとしていた。


続く………





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Re: オリジナルBLちょっとH?な続編です2(1話完結始めます) ( No.44 )
日時: 2015/08/17 21:46
名前: ハル

『禁断の棲家』


「…………何ですか?これは」
歴史の古い有名な高級料亭の離れ、広い庭園に面した一室から、いかにも不機嫌そうな声が聞こえてくる。
部屋の戸口に立ち、室内を見下ろしていた声の主は、普段のスーツとは違い、白いVネックのTシャツに濃紺の七分ジャケットを羽織り、茶系のパンツを履いた海の姿だった。
スラッとした均整のとれた体型に、シンプルな私服姿もよく映え、相変わらずな稀に見る綺麗な顔立ちに、室内にいた数人全員が見とれていた。
「何って、昼食の用意だよ。たまには、親子で食事もいいだろう?」
美しく並べられた幾つかの前菜を前にし、にこやかに一人の男性が答える。
上質なスーツを着て真ん中に座る、ダンディーなその男性は、現神崎グループ社長である、海の父親であった。
「昼食…………?」
海は眉をひそめ、父親の正面に肩を並べる見慣れない人物達に目を向けた。
60代位の和装の男性と、同世代と思える上品で可愛らしい女性…………特に女性の方は、黒い長い髪をパールのアクセサリーで結い、淡いピンクの小花柄のワンピースを着て、海にとても熱い視線を送っている。
海にとっては、嫌悪感しか感じられなかった。
「ああ………こちらは、華道小田原流家元の小田原清玄殿と、お孫さんの小田原華絵さんだ。どうだ?お綺麗なお嬢さんだろう?是非、お前に紹介したくてな………ご一緒させていただいたんだ」
父親の話ぶりから、何を言わんとしているかを悟った海は、顔を反らすと深い溜め息をついた。
「仕事の話だと言われて来たんです。外に颯を待たせていますから、他に用がないなら失礼します」
冷めた顔でそう言い放つと、海は部屋に入る事もなく、早々に向きを変えて長い渡り廊下を歩き出した。
「海っ………!!待ちなさい………っ」
背中に被ってくる父親の慌てる声が、海の苛立ちを余計に駆り立てる。
「チッ……………下らない事で呼び出しやがって…………」


「海………大丈夫かな……」
砂利の敷き詰められた料亭の駐車場で、サーモンピンクの麻カーディにUネックの白Tシャツを合わせ、濃いめのローライズデニムをロールアップさせた颯が、垣根に腰を下ろして海を待っていた。
栗色の柔らかい髪の毛とサーモンピンクが上手くマッチし、颯の優しい雰囲気と美しさが惹き立ち、前の通りを歩く人々の視線を自然と集める。
「すぐ終わらせるとは言ってだけど…………家で待ってた方が良かったかも………。ランチは、家の近くでも出来るし…………」
土曜日の昼下がり、久々のオフとなった海にランチを誘われ、颯は言われるまま海に付いて料亭まで来ていた。
「海様っ………!!」
颯が海の事を想いながら晴れた青空を見上げていると、料亭の石畳が続く玄関の方から、突然海の名を言う女性の声が響いた。
「…………海?」
思いもしない女性の声に、つい気になった颯は、歴史を感じる木造の大きな門へ足を踏み入れる。
石畳の両脇に木々が生い茂る道を進む颯の目に、広い玄関から出て来る海に近付く、可愛い女の子が飛び込んできた。
「すみませんっ………ご不快な思いをさせてしまいましてっ……。あの……今日の席は、神崎の社長様からお話頂いた時に、私からお祖父様に是非にとお願い致した事なのです………本当に、申し訳ありませんでした」
顔を真っ赤にし、目の前で頭を下げる小田原華絵に、海は急いでいた足を止めて、彼女を見つめた。
「…………別に、あなたが謝る事ではないので、気にしないで下さい」
自分だけに掛けて貰えた海の言葉に、小田原華絵はますます顔を赤く染める。
「あ、ありがとうございます。…………でも、私………凄く嬉しかったです。海様にお会い出来て………」
「は……………?」
「ずっと、憧れでしたから…………海様は。…………私や同世代でパーティーなどに出席している女子達には、本物の王子様の様で…………皆の憧れの存在でしたから………。お会い出来る事が、夢のようです」
小田原華絵は、やっと会えた憧れの海に、目をキラキラと輝かせて胸の内を告白した。
「私なんかが………なんて思いませんが、もし、私の家柄が海様のお役に立てる事がありましたら、いつでも……………」
「申し訳ありませんが…………俺は、一生誰かと付き合うつもりも、結婚するつもりもありません。俺が受け入れられるのは、一人しかいませんから…………。その人以外は、俺を満たす事は不可能です」
「え……………」
「それに……………俺の全ては、その人の為だけにあります。…………神崎の名も、あなたの家柄も、その人が必要なければ、俺には何の価値も興味もありません」
何の躊躇いも、迷いもない海の語る愛の詰まった話に、完璧に振られている筈の小田原華絵は聞き惚れてしまっていた。
こんな、手の届かない人だからこそ、王子様なのだと…………。
同時に、ここまで想わせる相手が誰なのか、とても知りたいと思えた。
「海様……………」
「すみません、約束があるので失礼します」
海にすっかり心を奪われ、放心状態の小田原華絵に軽く一礼し、海は足早にその場を後にした。
「……………何、隠れてるの?」
門の近くの木陰に佇む颯を見つけ、海が顔を覗き込む。
「あ…………いや、その…………なんか、邪魔しちゃ駄目な気がして…………」
話の一部始終を聞いていた颯は、潤んだ瞳を俯かせ、海に寄り添う様に近付いた。
「クス…………目が潤んでる」
「だって…………あんな台詞…………っあ………」
海の自分に向けられた愛情に胸を熱くする颯を、海は手を握り締め抱き寄せると、当然のように唇を重ねた。
「か…………い………」
「どうでもいい人間ばかりに会ったから、酸素不足になった…………。颯の酸素が、欲しい…………」
そう言って唇を絡ませ、自分を求めて来る海に、颯はたまらず背中に腕を回す。
「んっ………ぁあ………っ……海っ……お店の人に……気付かれちゃうよ………」
「大丈夫…………見えてないから…………颯の酸素、美味しいね…………」
海は微笑んで颯の唇を舐めると、首筋に舌を這わせ、優しくキスをした。
「や…………ぁんっ………海…………ランチ、行けなくなるから………っ」
「じゃ…………ウチご飯にしよう………俺が、美味しいの作るから………俺達だけの棲家に帰ろう…………」
「…………俺達だけの…………棲家…………」
颯の腰を抱き、頬に手を添えながら見つめる海に、颯は海にだけ見せる甘えた姿で見つめ返す。
「そう……………誰も立ち入れない、二人だけの棲家………」
愛しそうに颯の髪を撫で、額に口付けをすると、海は自分にとってたった一人の大切な人を強く抱きしめた。
一生支え、一生守り抜いていくと決めた……………最初で最後の、最愛の人。
その人といる事の出来る棲家は、例え親であろうと、大和達仲間内であろうと、踏み入れる事は許されなかった。






ハルです。
いつもありがとうございます。
更新、本当に不定期ですみません(汗)
この後は、大和と淳がぶつかったり?とか、ただエロいのが書きたいから夏祭りとか、色々エロいの書きたい気分です(汗)………順番はわかりませんが、頭をよぎっております。初女子書きましたが、女子も新鮮ですね!また、お時間とか宜しければ読んで頂けると光栄です(>_<)

本当に、いつもありがとうございます!!

Re: オリジナルBLちょっとH?な続編です2(1話完結始めます) ( No.45 )
日時: 2015/08/08 19:14
名前: ハル

ハルです。
いつもありがとうございます。
今回は、今までもR-18を度々入れてきましたが、特にエロいのを書きたくなり、書いた要-Rな回です。(銀魂BL始めた影響ですかね(汗)あちらはエロ多なので)
エグいのは嫌いなので、物足りない方はすみません。
あと、もっとエロくしていきたいので、前後編になりましたこと、申し訳ありません(>_<)特にエロくなるのは後編です。



『夏と花火と、熱い夜』(前編)


「海〜、コレどお?変じゃない?」
自室で大学院の論文作成に追われている海に、扉の向こうから颯が声を掛けながら入って来た。
デスクに座り、パソコンを叩いていた海は、入って来た颯の姿に思わず動きが止まる。
何故か、颯は珍しく浴衣を着ていた。
「どおって…………」
濃紺の生地に淡いグレーの幾何学柄の浴衣に、黒地の帯を締めて佇む颯は、襟元から覗く素肌の美しさと綺麗な顔立ちが見事に映え、なんとも言えず、色っぽい。
「…………何で、浴衣?」
「え……変!?…………やっぱり止めようかなぁ……。翔太がね……今日の花火大会、皆で浴衣着ようって言って、放課後四人で買いに行ったんだ………俺、似合わないよね?」
颯は、海の反応に不安を募らせ、自分の浴衣を見つめた。
「いや、変じゃないよ。颯は綺麗だから、何でも似合う。…………ただ……」
「ただ…………?」
颯の自信の無さに、海は優しく微笑むと、さりげなく浴衣の襟元を直し、髪型を整えてあげながら言葉を続ける。
「大和や淳が…………理性を保てるのかな?と、思って」
「…………え………」


「うわぁーっ!二人共、超かっこいいっ!!」
ブルーのデニム地のオシャレな浴衣を着た翔太の声が、花火大会で集まる人混みの中で、一際大きく響いた。
目を輝かせ、興奮気味に顔を赤らめる翔太の前には、焦げ茶色に黒の格子柄の浴衣を着た大和と、黒地に縞柄の浴衣を着た淳が立ち、モデル並の顔と背の高さが周囲の注目を拐っていたのだ。
「大げさやな、翔太。たかだか浴衣着ただけやん」
「ホントだよ。その声が、逆に目立つ」
翔太の驚き具合に、大和は呆れたように髪の毛を掻き、淳は苦笑いして翔太を見つめる。
「だって、本当にモデルみたいだしさぁ!スゴく似合ってる!浴衣、正解っ」
格好良さを鼻にも掛けない二人が、翔太には余計に格好良く見えた。
「…………っうーか、颯どないしてん。なんや遅いな………」
「そう言えば、颯にしては珍しく遅れているね」
「ゴメンっ!遅れてっ………」
待ち合わせに遅れている颯を気遣い、周りを見渡す大和達の後ろから、慌てた様子の颯の声が耳に飛び込んできた。
「ううん、大丈夫だよ………そ…………」
笑顔で振り返った翔太は、思わず颯を目にして息を飲んだ。
と、同時にその後ろにいた大和と淳も、慌てて来た颯に言葉を詰まらせる。
慌てた為に少し息を切らし、汗ばむ首筋と、艶っぽい潤んだ口元………赤く染まる頬…………何もかもが、美しく色っぽかった。
「あ………なに………やっぱり浴衣、ダメ?き、着替えて来よう………」
「あかん…………そのままがええ。その代わり、俺らから離れんな。お前、襲われてまうで」
三人の反応に恥ずかしそうに顔を俯かせ、向きを変えようとする颯に、大和がつかさず腕を掴み引き寄せる。
「大和…………」
「俺も、浴衣の颯がいいかな。凄く綺麗………。確かに、目を離したら連れて行かれそうだけど」
驚いて大和を見上げる颯に、淳も微笑みながら話し掛けた。
「淳……………」
「て言うか、二人が危ないけどね!止めてよ、こんな所でエロい事すんの」
大和と淳の視線を浴び、ますます顔を赤らめる颯を庇う様に、翔太は二人に釘をさす。
「アホ、何言うてんねん、翔太『君』。ほら、颯が慌てて来たさかい喉乾いてる言うてるやん、何か飲み物買って来てや。ハイ、お金」
「はあ!?俺が、買って来るの?大体、颯何も言ってないし」
「いや、大和っ…………俺、自分で買いに行くけど……」
翔太の肩を軽く叩き、お金を渡す大和に、颯が申し訳なさそうに口を挟む。
「お前は、一人で動くな。自分の危険度がわかってへん」
「危険度って…………」
大和の真剣な忠告に、颯は若干呆れ気味に呟く。
「颯、ホントに飲み物が欲しいなら、俺が付いて行くよ?」
「………淳、いいの?」
翔太と大和のやり取りを見ていた淳が、助け船を出すように颯へ話し掛ける。
「オイ、お前が付いて行くのも危険やろ。なら、俺が行くわ」
「十分、大和の方が危険極まりないでしょ。もういいよ、このやり取りが面倒くさい。ついでに何か食べ物も買いたいし、俺行って来ます」
業を煮やし、結局翔太が折れて名乗りを上げた。
「じゃあ、翔太…………俺、一緒に行く」
「ダメだよ、颯は急いで来たから疲れてるもん。一人で大丈夫」
翔太を気遣い声を掛ける颯に、翔太は笑顔で言うと、大和からお金を受け取った。
「おおきに、翔太。釣いらんさかい、好きなん買うて来(き)ぃ」
「何か、大和に言われるとムカつくけどね」
「クス…………付いて行こうか?翔太」
「いい………淳は、大和を見張ってて」
「ぅおいっ!俺の扱いどんだけやねん!」
少しふてくされ気味に大和を見る翔太に、大和はムスッとして突っ込んだ。
そんな二人の様子が、淳と颯には可笑しくてつい笑みが溢れる。
『ヒュー………ドドーン……』
「わあぁぁ…………」
翔太が三人にリクエストを聞いて、夜店の方へ足を運びかけた時、花火の第一砲が打ち上がり、暗闇の中に光る色とりどりの花火に歓声が広がった。
「きれい…………」
花火を見上げ、思わず呟く颯の横顔に、大和と淳は黙って見とれた。
微かな光に照らされた長い睫毛の下に輝く美しい瞳と、高い鼻筋に潤んだ唇が、颯の非の打ち所のない美貌を際立たせて、一段と色気を醸し出す。
「…………お前の方が、何億倍も綺麗や………」
「大和…………っ」
次々に打ち上がる花火に気を取られる颯の後ろから、たまらず大和が抱きしめる。
「ちょっ…………周りに気付かれるっ…………淳だっているのに………」
「だって、我慢出来ひん…………」
自分を抱きしめる力を強める大和に、颯は焦って淳に目を向けた。
「…………別に、いいよ。大和が後ろから攻めるなら………俺は前から攻められるし………」
「え…………!?」
思いもしない淳の言葉に、大和と颯は驚いて同時に声を上げると、目の前にいる淳を見上げた。
淳は、驚く二人を尻目にゆっくり颯へ近付くと、颯の顔を手で優しく捉え、そのまま唇を重ねた。
「じゅ…………っんん……」
「大和に攻められてる颯も、可愛いね………」
呆気に取られる大和の前で、淳はいやらしくも颯に唇を絡めていく。
「や………ぁ……っ……んあぁ」
後ろから大和に抱きしめられている颯の唇に、淳の舌が滑り込み、垂れる蜜を舐めり取りながら糸を引き激しさを増す。
「わーっ!!待て待て待てっ!コラッ、淳っ!おま………何しとんねんっ!?」
大和は徐々に顔を高揚させていく颯を、慌てて淳から引き離すと、淳を問い詰めた。
「え、何って…………お前が後ろから攻めるから、俺は前から…………」
「イヤイヤ!違うやろ!?おかしいやんっ………颯と俺は付き合うてるからわかるけど、お前は…………ん?どう言う関係やねん………」
微妙な関係の颯と淳に、大和は自分で言いながら疑問を抱く。
「ど、どうって…………」
颯は顔を赤くして、淳を見つめる。
「んー………切っても切れない関係………かな?ね、颯………」
微笑んで答える淳に、颯は一段と頬を赤らめ、大和の腕に顔を埋める。
「止めろや…………洒落にならん反応すんな、二人して。こっちが対応に困るわ」
疑いの目で二人を見つつ、大和は颯を抱く腕に力を入れた。
「でも…………大和に抱きしめられている颯、本当に可愛いよ?…………欲しくなる」
「淳っ…………」
戸惑う颯を面白がるように、淳の指が颯の唇をなぞる。
「ま、まあ…………それはわかるけど………てか、淳っ!お前、マジでエロいねんっ」
「大和だって、欲しいんだろう?今日の颯は、とびきり綺麗だから」
淳に促されるように、大和は胸に抱き寄せた颯を見下ろす。
大和の腕に抱かれ、顔を見つめてくる颯の可愛さに、大和の心は完全に射抜かれた。
「……………淳、今日だけ特別に協定結んでもええわ…………」
「え…………きょ、協定って…………何………」
二人が暗黙の中で手を結ぶ様(さま)に、颯は不安を募らせる。
「話は着いたね。……………場所、変えない?」
「や、やだ…………やだ、何だか怖いよ………大和、淳っ……」
「颯、当たり前やけど………大事にしたるさかい、怖がる事ないよって………な?」
気持ち悪い位に解り合い、自分を優しく扱う二人が、颯にはいつもとは違う『男』に見えた。
「大和……っ………淳…………っ」
花火の音が鳴り響く暗闇で、颯は大和に手を引かれ、不安を抱えながら、淫らに溺れる時の中へと足を踏み入れて行く事となった。





後編へ続く。










Re: オリジナルBLちょっとH?な続編です2(今更ですがR-注) ( No.46 )
日時: 2015/08/01 13:33
名前: ハル

『夏と花火と、熱い夜』(後編)


「ね、ねえ………ふ……二人共、どこ行くの?翔太、心配するよ………?」
大和に手を引かれ、花火大会の人混みを抜けて行く大和と淳を見上げながら、颯は不安で緊張する身体を紛らわせるように、質問を被せる。
「どこがいい?颯は。颯の可愛い姿が見られるなら、どこでもいいな」
「じゅ、淳………っ」
颯の方を振り向き、甘いマスクで微笑む淳に、思わず颯は顔を真っ赤にして俯く。
「おいっ、あんまり颯をイジメんなや。お前、普段誠実な優等生で通ってるわりに、なんか節々にSっ気あんねん。颯は、大事に扱わへんと許さへんで」
淳の自分への扱いに戸惑う颯を、庇う様に大和が口を挟む。
「だって颯可愛いから、ついイジメたくなっちゃうんだよね。勿論、大切にしてるけど」
「大和………淳………」
世に言うイケメン二人が、自分の事を愛しそうに会話をしている様子に、颯はますます戸惑いを深め顔を伏せた。
「あ……ここなんて、どう?」
不意に淳が立ち止まり、大和に声をかける。
花火大会の賑わいから道を逸れて入って行った脇道に、最近建て替えられたばかりの様な、キレイな木造の大きな祠が姿を現した。
「バチ当たるで。…………ま、今までバチ当たるような事、散々して来たさかい今更か………」
淳の提案に、大和は颯を抱き寄せて祠を覗き込んだ。
「や……大和……?」
何もわからず連れて来られた颯は、不安そうに大和を見上げる。
最初に比べ、遠くなった花火の音が、三人だけの密接な空間を作り上げているようで、不思議な程辺りは静かに感じられた。
「颯がいたら………バチなんて、どうでもいいよ………」
人が数人入れそうな祠の扉を開き、淳が颯を優しく見つめ、その手を握り締める。
「じゅ……ん?」
「不安にさせて、ごめんね。でも………今夜は、俺も大和も………お前が欲しくてたまらないんだ」
「え………」
颯の耳元で、とろけるような淳の囁きが、颯の身体を一気に熱く火照らせていく。
「だ、駄目…………無理だよ………。俺…………そんなの………っ」
二人に求められている事に動揺し、後退りする颯の腰を、大和の手が抱き上げ祠へと導く。
「やま…………」
「…………愛しとる」
「……や………っん………」
颯の身体を知り尽くした大和の口づけに、颯の力はたちまち奪われ、腰から崩れ堕ちた。
うっすらと月夜に照らされた祠の中は、片隅に幾つかの木箱が並べられ、外から見る以上に広く感じられた。
また、少し高く造られた床には、お供え物がきちんと並べられ、その後ろに祀られた小さな仏像が、これから起こる三人の淫らな時間を見届けるかのように、静かに鎮座していた。
「綺麗や…………颯………」
「はっ…………あ……っまと……ぁん………」
口元からいやらしい蜜を垂らし、大和の舌を受け入れる颯の艶やかな唇を見ていた淳も、たまらず颯を後ろから抱きしめる。
「………本当に、もう限界……」
「ぁ………や……淳っ……」
淳は、大和のキスで悶える颯の浴衣を肩からずらすと、その露になっていく美しい首筋に唇を這わして、脇から手を忍ばせ身体を愛撫した。
「ヤバい…………思った以上に、エロ過ぎる…………めっちゃ興奮してきた……」
颯の唇から糸を引きながら唇を離すと、大和は淳に迫られ感じている颯に、嫉妬よりも興奮を覚えずにはいられなかった。
「ば、馬鹿っ………ん……俺の身体……はぁあ………壊れちゃうっ」
「大丈夫だよ………俺達が支えてあげるから…………。それより………大和、颯を見て興奮するって………いっぱいエッチな颯を見せてあげたら?大好きな彼氏に…………」
「はっん………や………大和っ……ぁあ……」
大和を潤んだ瞳で見上げる颯を、淳は言葉で攻めながら、指を口の中へ入れ、颯の舌を刺激する。
そんな淳の指を颯も舐め回して、しゃぶっていく。
「クス…………素直だね……颯………。ホント、可愛い………」
「お………お前、ホンマに『ドS』やな………海は、超『俺様』やし…………一番、俺がまともちゃうんか!?」
淳の、どんどん颯を追い込んでいく攻め方に、大和は火照る身体よりも、思わず見入ってしまう自分がいた。
「大和だって知りたいだろう?俺の前での、颯を………」
「………お前の前での、颯………」
自分の知らない颯がいる?…………それが、大和の中の熱いものを余計に駆り立てる。
「いやだっ………淳っ………そんな意地悪しないで…………」
大和の視線の変化に、颯は泣きそうな顔で淳の胸に身体を沈める。
「颯………心配しなくても、大和は颯を愛してくれるよ………」
淳は微笑んでそう言うと、颯の顔を見下ろし、唇を重ねた。
「ん………淳………や………っ」
汗が光り、高揚した颯の身体は、大和や淳の渦巻く欲望を止める事が出来なくなる程に綺麗で、神聖なものに思えた。
「…………好きだよ………颯………」
淳の唇が、颯の唇から離れ、美しい身体を撫でていく。
大和に見られながら、淳を拒めない颯の瞳には涙が浮かび、憂いを帯びる。
「あぁ………んぁあ……」
淳は、そんな颯の胸元で固くなった乳首を舐めると、指先でつまみ、吸い付いた。
「やぁあっ……じゅ………ダメっ……あんっ!」
我慢出来ず身体を反らす颯を、淳は離さないように背中へ腕を回すと、尽かさず締まった形の良い颯のお尻の溝を、指で下着の上から軽く滑らせて刺激を誘う。
「はぁあっ………そこ、や………も………これ以上…………ないで……見ないで………ぁんっ………大和………っ」
淳の攻めに身体が溺れていく自分に、颯は大和を想い、切なく呟く。
「颯…………っ」
淫らな姿をさらしながら、涙目で自分を見つめてくる颯の姿が、大和の胸を愛しさで張り裂けそうな程大きくさせる。
「あかんっ!!もう無理やっ………淳!!代われっ!」
「大和………っ」
大和は、驚く淳から颯を奪うと、想いの丈を口づけに込めて、唇を重ねた。
「お前と淳がどんな関係でもええ…………俺が愛しとんのは、お前や。俺は、俺の愛し方見せたる」
「…………っまと」
颯の瞳に涙が溢れ、大和にしがみつく。
「もう………淳も、大和も………ヒドいよ。俺、おもちゃじゃないんだからっ……」
「………颯………」
颯の涙に、大和と淳は自分達の身勝手さを痛感した。
「ご、ごめん………」
「すまん…………」
二人は颯の機嫌を取るように、身体を労ると、素直に頭を下げた。
「…………それで………その、そ………そんなに、俺を抱きたいの………?」
「………え………?」
目を反らし、恥ずかしそうに、耳を疑うような台詞を言う颯に、大和と淳は互いの顔を見合わせた。
「だ、だって………二人共上手いから………身体が収まんないよ………」
「ぷ…………やっぱり、颯は可愛いね」
「ふーん………俺の知らん颯の顔って、コレやったんやな…………ええで?なんぼでもイカせたるわ」
「や、大和………!?」
颯の可愛らしい提案に、二人はニヤニヤと楽しそうな笑みを浮かべると、颯の身体を祠の床に押し倒した。
「なあ、颯。まず最初に、俺と淳………どっちが欲しいねん?いっそ同時にしてまうか?」
「ええ!?無理……無理無理無理っ!本当に身体壊れちゃう!」
慌てる颯を覗き込むように見下ろす、二人の格好良い姿に、颯は全身の力が入らなくなっていく。
「…………大和も淳も、イイ男過ぎる………お願い………早く……」
「うん………そうだね………」
頬を赤く染め、色っぽく求めてくる颯を淳が優しく抱き起こすと、どちらともなく唇を貪り合った。
「エロいな、お前ら」
淳の首に腕を回し、激しいキスをする颯を横目に、大和は颯の下半身へと手を伸ばし、颯の下着をずらすと、既に濡れる官能な中をまさぐり始める。
「ぁんっ……大和………っ!あっぁあ……はぁん!そこっ……だめぇっ」
「颯の顔、凄くいやらしい………」
大和に攻められ喘ぐ颯にキスをし、淳は愛しそうに抱きしめる。
「もっと、いやらしくしたるわ」
そう言うと、大和は颯の腰を掴み、自分の大きくなった半身を少しずつ出し入れする。
「やっ!あっあぁっ!大和……っ…ぃやっ、ぁんっ……焦らしちゃ……やっ」
「なに?颯、大和にどうして欲しいの?」
ゆっくりと少しだけ入って来る大和の半身に、目を潤ませ懇願する颯を、淳が身体を支え問い掛ける。
「………れて……入れてっ……大和っ!奥にいっぱい欲しいっ……」
「………て、言ってるよ?大和」
「しゃーないな………可愛いから、サービスしたる」
「じゃあ、俺も………」
颯のせがむ可愛い姿に、大和は後ろから身体を抱きかかえ、一気に奥へと突き上げ、淳は颯へ幾度となく唇を絡めると、自分の手を颯の蜜が滴る半身へと向け、軽く握り締めながら、上下に揺さぶった。
「ぁああっ!はぁああっ……スゴいっ!ゃんっだめだめっ!ホントにおかしくなっちゃう!!あっあっ………イっちゃう!イっちゃう!!」
「イってええよ……っ……今日のお詫びや、一番にお前がイって………」
半泣きになる颯を抱き上げ、大和は激しく腰を振る。
淳にしがみつき、大和に抱えられ、颯は今までで一番の絶頂感を味わった。


熱く、熱く長い夏の夜、三人がその後翔太にこっぴどく説教されたのは、言うまでもない………。















Re: オリジナルBLちょっとH?な続編です2(R-注) ( No.47 )
日時: 2015/08/05 18:26
名前: ハル

いつもありがとうございます。
↑に入れていたコメですが、ちょっとネガティブで重い気がしたので削除しました(汗)すみません。
感謝の気持ちだけは、伝わりましたでしょうか?
量の多さと、始めたからには終わりも……と、ずっと考えてたので妙なコメになりました。申し訳ありません。
沢山の素敵な作品がある中、この作品の先なんて考えてもしゃーない!
とりあえず、↓投稿します!


『終わりの、始まり』


「あー……最悪の花火大会だったな……」
生徒達が賑わう食堂の片隅、目の前に置いた人気のオムライスセットをボーッと眺めながら、翔太は片肘をつき、ぼやいていた。
「結局、最後まで一人で見るって、淋し過ぎる…………俺も、彼女作ろうかな………」
「翔太、好きな女の子いるの?」
颯達のラブラブ振りを思い浮かべ、独り身の淋しさを感じ、思わず呟く翔太の背後から、聞き慣れた優しい声が耳に響く。
「淳………っ!」
「クス……そんなに驚く事ないでしょ?お昼、一緒に食べる約束してたのに。…………後から、颯と大和も来るって」
何気に呟いた言葉を聞かれ、顔を赤くして動揺する翔太を見下ろし、淳はにこやかに微笑むと、手にしたポークステーキセットを置きながら、向き合うように座った。
いつの間にか、食堂のこのテーブルは颯達の指定席となっており、颯達見たさに女子達が取り囲むように空いたテーブルを奪い合っていた。
「………相変わらず、ギャラリーが凄すぎて食べづら………」
女子達の熱い視線を気にも止めない淳とは逆に、自分だけは場違いな気がしてならない翔太は、溜め息をついて横に面した窓から中庭を見つめた。
「翔太の事も見てるよ、女子達は」
「…………え………」
「冷静に周りを見てるようで、自分の事は見えてないよね?翔太……。結構、翔太のファン多いんだけどな」
お茶の入ったグラスを口元に運び、自分を真っ直ぐ見てくる淳に、翔太は一気に胸の鼓動が早まっていくのを感じた。
「な、なに…………そんなワケ………」
「……………こんな事、俺が言うべきじゃないかもしれないけど………俺は、翔太にはもっと自信を持って欲しい。それだけのモノを持ってるよ」
過去の出来事が、翔太の心の妨げになっている事を理解するからこそ、淳は親友として支えになってやりたかった。
でも、その優しさが、淳に片想いする翔太の胸を苦しめる。
「…………淳………お願いだから、そんなに優しくしないで……」
「翔太…………」
颯への気持ちを貫く為に、大切な生徒会も日本代表も降りた事実は、颯でなくても、翔太にだって充分大きな衝撃だった。
それだけ、もう本当に入り込む隙間の無さを思い知らされたからだ。
「翔太………ごめん、俺…………」
辛そうに俯く翔太に、淳は翔太の気持ちを知っているが故の、自分の言動に反省した。
翔太自身、皆でいる時は誤魔化せても、二人きりだと淳を意識してしまう自分がますます嫌な奴に思えた。
「違う…………俺が、駄目なんだ。淳は、いつもと何も変わらないのに…………。俺………俺………」
『淳が好きだから………』…………そう言いたいのに、言って気持ちに区切りを着けたいのに、怖くて言えない。自分の過去が、黒く心を覆い尽くす。
ガタッ………
ヤバい、泣きそう………翔太の脳裏に感情の波が押し寄せたかと思うが先か、否か、翔太は反射的に立ち上がっていた。
「ちょ………ちょっと………トイレ……」
「……翔太………!?」
「大丈夫………!本当に、トイレだから」
心配そうな顔で翔太を見上げる淳へ、翔太は精一杯の笑顔を向けて答えると、急いでその場を立ち去った。

ドンッッ……!
「………ってぇ……なに………」
「…………ぃた……」
食堂から続く長い渡り廊下に、生徒同士のぶつかる音と声が、高い屋根に反響した。
一人は、淳から逃げるように俯いて走っていた翔太が、顔を抑えてうずくまっている。
「あ?翔太………?」
「は…………ゲ……田城………っ」
翔太は、自分がぶつかった相手が恋のライバルでもある田城とわかり、つい嫌な顔になった。
「おい、自分からぶつかって来といて、随分な表情だな」
翔太より10p以上は背が高く、眼鏡を掛けた端正な顔立ちの生徒会長は、翔太の反応に不機嫌そうに言葉を吐き捨てた。
「ご、ごめん………」
田城のムッとした様子に、翔太は俯いたまま小さな声で謝る。
「ん………?あれ、淳どうしたんだよ。お前とご飯食べるって、食堂行った筈だけど………」
淳と同じクラスの田城は、昼休みに入ったばかりの時に淳とした会話を思い出し、翔太に訊ねた。
「…………淳………」
その名前に、翔太の中で我慢していた感情が溢れ出るように、涙がボロボロと流れ落ちた。
「はぁ!?なに、なに、なに!?何で涙!!?」
「わーん………俺も、よりによって、何で田城の前で泣いてるんだよぉっ……!」
突然の翔太の涙にビビる田城に、翔太も我慢の糸が切れたように止まらない涙に困惑しながら、大泣きしてしまった。

「ほら………」
木々に囲まれた中庭のベンチで、田城が隣に座らせた翔太に買ってきたカップのジュースを差し出した。
「あ………ありがと………」
目を腫らし、申し訳なさそうにカップを受け取ると、翔太はジュースを口に運び、泣き声で枯らした喉を潤す。
「淳達には、俺から話しといたから、落ち着くまでゆっくりしろよ。………まあ、かなり心配してたけど」
「……………うん………」
田城の横で、翔太は淳達の事を想い、自分の情けなさで再び涙が込み上げてくる。
「……………なんか、腹減らない?このままバックれて、外に飯でも食べに行くか……。あ、断るなよ。お前のせいで、俺食べ損ねたんだからな」
「田城…………」
腰を上げ、翔太の方を振り返り話す田城に、翔太は淳が田城を親友だと言う理由がわかった気がした。
そんな暗い顔の翔太を横目で見ながら、田城がおもむろに口を開く。
「……………まあ、なんて言うか………俺達は、ライバルが手強過ぎたよ」
「え…………」
「神崎颯…………美人で、頭が良くて、とてつもなく………守ってあげたくなる存在。淳だって、諦められない筈だ。………………俺もわかってたよ、敵わないって。わかってて、あがいた。あがいて………断られたのに、自分から迫った」
「せ、迫った………?」
翔太に背を向け、空を見上げながら語る田城の意外な告白に、翔太は目を丸くして聞き返す。
「なのに………あいつ責任感じて、すっげー頭下げるんだよな………。嵩原に負けたくないって、神崎を諦めたくないって…………俺に嫌われても仕方がないってさ………嫌いになる訳ないよな。俺の方が悪いのに…………さすがに、生徒会を抜けられるのは痛かったけど、応援したくなっちまった…………」
淳の事を話す田城の後ろ姿からは、まだ淳に対する気持ちが残っているように思えた。
「翔太…………俺達、ホントいい男を好きになったよな?」
「……田城…………」
そう言うと、翔太を見つめ、初めて田城は笑顔を見せた。
不思議と、過去の出来事以来、颯達以外の男子を受け付けられなかった翔太に、嫌悪感はなかった。
「あいつ、生徒会や日本代表を降りるのに、相当親から反対されたんだよ。政治家に肩書きは重要だからな。それでも貫き通したあいつの覚悟、応援してやろうや?……………お前も、いつかは終わらせないと、何も始められないだろ?俺は、新しい自分………始めてやるよ」
淳を想い、新たな一歩を踏み出そうとしている田城の姿は、同じ気持ちを抱えた者として、とても羨ましく感じた。
終わらないと、何も始められられない……………颯との出会いから始まり、淳や大和に助けられながらここまで来れた………。
今日は、意外な田城にまで手を貸してもらい……………翔太の中の何かが、少し軽くなったようだった。
「た、田城…………俺、田城と友達になりたい………」
「翔太………………」
恥ずかしそうに、でも真っ直ぐに田城を見る翔太の目は、一点の曇りもなかった。
「今まで、颯達に守られて来た。颯達以外は無理だって思ってた。だけど…………田城とは、友達になりたいって思ったんだ…………だ、駄目かな?」
「……………と言うか、俺はもう友達だと思ってたけど?」
不安そうに答えを待つ翔太に、田城は微笑んで優しく翔太の頭を撫でると、翔太の一歩をソッと後押しした。










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