大人二次小説(BLGL・二次15禁)

文スト BL、R18有 乱歩受け中心 太中も
日時: 2020/05/19 16:56
名前: 皇 翡翠

文ストの乱歩受けを中心に書いていきますっ!攻めも多分書くかと、
語彙力はあるかわかりません、拙く駄文ではあると思いますがそれでもよければ楽しんでってくださいね。
乱歩受けが好きになってくれると良いなぁ
・BL中心、たまにNLGLあるかも
・殆ど乱歩さん
・似非かも
・いろんな性格、設定、女体化、獣化、パロディ有
・シリアス、儚め、モブ有
・長編、短編

主に太宰×乱歩、福沢×乱歩、ポオ×乱歩、中也×乱歩
コメ、リクエスト一応受付ますが雑談の方で。

目次
 short                     
>>1-2甘酸っぱいlemoncandy(太乱)  ・>>5-7-8氷砂糖と岩塩(太中)
・江戸川乱歩は大人であるードライな乱歩さんー(乱歩総受け)
 福乱>>16 国乱>>17 太乱>>18 中乱>>19 ポオ乱>>20
・確かに恋だった(太乱)>>29
・rainyseason
 灰色の空(太乱)>>34-35 みずたまり(中乱)>>36-37
・黒白遊戯 マフィア太宰/太乱>>44-45
・こどものどれい モブ中/太中>>46-47
・ In the light 太中>>48
・一度で良いから 中乱 R18 >>51
・なんて不毛な、それでも恋(福←乱←太)>>52
・初恋は実らない、ジンクスさえも憎い 福乱>>53
・悪あがきとキス 太中>>54
・聖者の餞別 記憶喪失太宰の小噺>>56
・偽りはいらない ポオ乱>>57
・新たな教育方針(福乱)R18>>58
・たまごかけごはん>>59
・合言葉は「にゃん」である/太乱>>60
・ドラマみたいに/国乱>>61
・宇宙ウサギは月に還る>>64
・風が死を吹くとき(太乱)/微シリアス>>71
・ひきこもり人生(ポオ乱)/濡れ場あり>>72
・賭/太(→)中>>73
・百年の恋をも冷めさせてほしい(太乱)>>74
・水底の朝>>75
・せめて隣が、あなたじゃなければ(太乱+国)>>76
・なんて無謀な恋をする人>>77

long
・青から赤へ 太宰×乱歩
「好きです」>>3-4-10 変わらない目をして>>22-23 酔いで転んで>>38-39 青か赤か>>55 無意識な答え>>65

・拐かされて1>>11-12 拐かわされて2>>13-14-15 拐かわされて3>>24-25 打ち切り
・KISS FRIEND (乱歩総受け)
PLAYBOY(甲)(乙)(丙) 太宰×乱歩+モブ女性 (甲)>>31 (乙)>>42-43 (丙)>>66
・六日の朝と七日の指先 福乱 >>49-50>>62-63
・待ち人探し(乱歩さん誕生日)/福乱>>67-69

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Re: 文スト BL、R18有 乱歩受け中心 太中も ( No.70 )
日時: 2019/10/21 23:50
名前: 皇 翡翠

さて、此の小説スレを立ち上げてだいぶ経過しましたが、今回執筆者こと皇から一言添えさせて頂きます。

待ちに待った乱歩さんの誕生日。
2019/10/21 happy birthday 乱歩さん!


宜しければ此れ迄の作品含め、感想を雑談スレの方で聞かせて下さると嬉しいです。
執筆する力の源となりますので、是非。

Re: 文スト BL、R18有 乱歩受け中心 太中も ( No.71 )
日時: 2019/11/28 23:50
名前: 皇 翡翠

風が死を吹くとき(太乱)/微シリアス
 


 横浜から離れた遠くの名前も知らない街を一望できる丘。横浜とはまるっきり別の世界ではないかと思う程に低い平家ばかりが立ち並んでいる。そう云えば、僕が育った街もこんな風に田舎だったかもしれない。
 昔を思い返していると、彼は漸く僕の元へと戻ってきた。
 若干汗を流しながらも、両手には缶ジュースを持っている。一つはコーヒー、もう一つはオレンジジュースだ。何処まで買いに行ったのか興味はあるが、少し乱れている息からして太宰にしては珍しく働いたんだろう。その栄光はあえて聞かないでおくとしよう。

「遅くなってしまって、済みません。乱歩さんはオレンジジュースでいいですか?」
「うん、ありがとう」

 手に渡された缶はしっかりと冷たさを保って、水滴が手に伝わってくる。太宰の汗では無いと思うけど、少しからかってやろうと聞いてみると、勿論直ぐに否定された。
 プルトップを弄り、すっかり喉が渇いていた為、勢いよく体内に液体が浸透していく。全く、誰がこんな面倒な立地に来てみようなんて云ったんだか。

「太宰は如何してこんな辺鄙な街に来ようと思ったの」
「そうですねー…」

 太宰がある日突然、観光をしようと提案してきたのだ。探偵社の皆に……では無く、僕だけに。僕と二人で仕事の合間に出かけませんかと聞いてきた。まあ、僕自身も詰まらない仕事をするぐらいならば面白そうだと思って二つ返事で答えてしまったから、特に中身も聞かなかった。それが、まさかこんな知らない土地に連れて来られるとは思いもしなかった。というか、太宰は車を運転出来るんだということにも驚いたけど。

「太宰って…こんな街並みとか好きなの?」

 丘の端にまで歩き、落ちない様に建てられている申し訳程度の柵から身を乗り出してみる。丘の下に置かれているレンタカーが確認出来ると同時に、此処まで自力で登ってきたのか、と僕自身を褒め称えてやりたい気分であった。そもそも如何して車という便利な足が在るのに此処まで車は通れないんだろうか。全くこれだから田舎は嫌なんだ。

「街並みは好きですよ。こういう処から飛び降りたらどんなに綺麗な死に様なんだろうか、と想像をする事もあります」

 太宰はゆっくりと僕の隣に並び、同じく柵に手を置いて下を見た。下を見て、感嘆の言葉のみ。
 この男とは長い事隣に居たけれど、この自殺願望者の考えはさっぱり読み取ることが出来ないもんだな。

「………まさか、このまま死ぬわけないよね」

 半分冗談交じりに云ってみるが、直ぐに彼はそれに否定した。「まさか」とは云いながらも、それでも彼は下を見る事を辞めない。
 意外と彼の本心ってのは見えてこないもんなんだよね。推理してみようかと思ってもみたが、結局知りたい感情よりも知ってしまった後の恐怖を考えて留まった。
 人は知られたくない事は恋人にも隠すという。だから、きっと彼もまた僕に云わないってことは云いたくないって事なんだろうね。それならそれで構わない、と僕はこの男と付き合う際に割り切っていた。

「……まあ、でも死ぬ際にはきっと笑って死ぬことでしょう」

 少し黙っていた太宰が漸く喋り出したとしたら、君は一体何を云い出しているのだか。
 僕は怪訝な表情を浮かべたままだんまりを通す。すると、少し困惑した色を浮かべて太宰は早々に口を開けた。
 ……このままでは僕に愛想を突かれるとでも思っているのかもしれない。

「別に今すぐ此処で死のうだなんて考えてはいませんよ、勿論。今は乱歩さんと一緒に此処に来て何にも考えないで過ごせればいいかな、と思っていただけですから」

 笑みを努めている。僕のご機嫌取りに違いないが、全く何も云っていない僕のご機嫌取りをする様にだんだん愚かで笑えてきた。
 最終的には笑ってしまった。盛大に声をあげて。
 この丘には僕らしか居ないのだから、別に誰も困りやしない。

「あははは、太宰は本当に愚かだねえ」

 ………太宰は一緒に笑う努力をした。
 この丘を少しは好きになれたかもしれない、と満足が行くまで笑わせてくれた。横浜のごった返した街中ではこんなに笑ったらきっと人目を集めてしまう。

「まあ、太宰が此処で死なれてしまったら場合によっては僕が逮捕されてしまうかもしれないから、僕の居ない処で太宰は死んでくれると助かるよ」

 笑いながら云うと、今度はしばしの沈黙を作ってしまう。二人の顔から笑顔が消えて、風だけが音を立てていた。失言だったか、という事を全く理解していない僕には太宰が少し怒った表情になっている意味が判らなかった。

「乱歩さんは私が自殺をしようと構わない、と思っているんですか?」
「え、何…急に」
「乱歩さんは如何だと思っているんですか?」

 ……風が冷たくなった。
 同時に誰かに助けを求めたい程に太宰のテンションは変わった。彼は、一体何を怒っているんだろうか。

「自殺…したいって太宰が思ったんだったらそれは君の自由にしたらいいと思うよ。だって、僕に君を止める権利は無い」

 入水でも何でもしていた処を目撃したとしてもきっと僕は彼を助ける事はしないだろう。遠くで眺めているだけだ。
 横浜の某所。自殺を図った男が川に流されてた処を発見。その事件現場に駆り出されたりするかもしれない。少しだけイメージが出来てしまった。
 その時、彼は果たして笑っているのだろうか。笑って死ぬだなんて最初に宣言したのは太宰じゃないか。
 今如何して僕が太宰に責め立てられているのか、疑問に持つと同時に苛立ちすらも重なってきた。

「…乱歩さんは私が死んでも構わないんですか?」
「何度も同じ質問を繰り返さないでくれよ」

 同じ質問をされてしまえば、同じ答えを出すしかない。何度も繰り返し口に出して伝えるしかない。

「少し意地悪してしまいましたね」

 心が折れたのは、太宰が先だった。頑固になった僕はらしくも無い様を見せてしまった。

「私は、乱歩さんと一緒に居る間は死にませんよ。それこそ乱歩さんが先に死んでしまったら後追いはするつもりですけど」
「止めてくれ。僕はまだ長生きしたいと思っているんだから」

 風の流れが変わった。僕の石頭を風で動かしていく。
 素直になれていない、という訳では無い。ツンデレなんて肩書を請け負うつもりは無いけれど…多分、僕は君が死ぬ時を想像したくないんだ。気にしていない、なんて口にはしているけれど、死体だって別に見て怯える事も無いけれど、それでも太宰の死体なんて嫌だ。

「僕は、君が自殺したいと思っているのなら、止める事はしない。僕の意志だけで、君の将来をどうこうするつもりは無いからね。けど、さ。残された方の身にもなって欲しいとは思うよ」

 気が付いたら、自分の考えている事が口に出てしまっていた。意図していなかったから、僕自身も驚いてしまったが、太宰も予想外の言葉が出てきたのか、驚いてしまっていた。

「乱歩…さん」

 風でなびくせいで乱れている太宰は、目を見開いたまま、こちらを見て黙り込んでしまった。あんまり黙られると、僕としても次に何を云えばいいのか分からなくなるから気まずさを隠せないんだけれども。

「……あー!何かお腹空いた!何か甘い物でも食べたくなってきた」

 空気を変える為に僕は大きな声を出してみた。

「そうですね」

 太宰はすっかり空になった二人分の缶を持ち、そのまま丘から離れて行く。

「乱歩さんの為に、私はまだ生きていますよ」
「だから僕は別に……っ」
「私は残された人の事も考えた結果です。きっと乱歩さんが号泣すると思うのでね」

 号泣…なんて、誰がするか!
 と、心の中で思いながらもそのまま二人で丘を降りていく。この後、甘い物でも食べてのんびりと観光をしていこう。
 大丈夫。今はまだ君は隣にいて生きていてくれるのだから。先の事は考えないでおこう。
 

Re: 文スト BL、R18有 乱歩受け中心 太中も ( No.72 )
日時: 2019/12/03 15:15
名前: 皇 翡翠

ひきこもり人生(ポオ乱)/濡れ場あり


「乱歩さん、お電話です。なんでもポオさんの件でお話があるということですが」
「拒否しておいて!」

 ああ、まただ。
 またあの男関連のことで探偵社に電話がやってきた。今日が初めての経験では無く、もううんざりするぐらいに鳴り続けている。
 今、あの男は引きこもりと称される類のもので、彼の数少ない友人や親戚との連絡も途絶えさせている。
 そんな彼等が僕を友人だと誤認して探偵社へと連絡をしてくることが多くなったのだ。確かに僕は彼の所在を知っているが、そこで僕が親切に教えたら、今度はもっと面倒事に巻き込まれるのが目に見えている。そんな仲介役を担うのは僕の役目では無いんだけれども。
 僕が欠伸を一つ溢すと、

「乱歩さん、またお電話です。ポオさんの知人と名乗る方が乱歩さんにお聞きしたい事があるという要件ですが」
「拒否!」

 流石にこう何度も電話をされてしまったら溜まったもんじゃない。
 僕は大きく溜息を真下に落として、重い腰をあげる。











 トントンッ

 規則正しい物音を作り、何度も扉を叩いていく。
 結局、彼の元へと来てしまった。

「……ら、乱歩君であるか」

 扉の隙間から姿よりも先に声が現れた。姿を見せる事に抵抗があるのか、決して全開にならない扉を見て、僕は苛立ちが募って行き、思い切りドアノブを握って開いていく。

「お邪魔するよ!」
「あ、ああ…乱歩君!」

 外から見た中の部屋はとても電球が稼働しておらず、変わりに分厚いカーテンがしっかりと太陽の光を遮断して、真っ暗な空間を作り出している。そんな場所に遠慮無く足を踏み入れていく。後ろからおどおどしている彼のことを無視して、僕が先に口にした。

「君の知人らから沢山電話が来るんだけれど!もういい加減連絡でもしてあげたら?」

 本来なら僕がこうして誰かに積極的に指示をしていくなんてしないんだけれども、この男はどうにも引っ込み思案なところがあって、僕はその考えが理解出来ない。

「そ、それはすまない…。つい先日に乱歩君の話をしたから…それで、彼等も君の元へと電話をしたのかもしれない」

 頭の旋毛をこちらに向けて深々と謝罪をしている。うーん、別に謝罪を要求していた訳では無いんだけれども、それでも頭を下げられてしまえばまともに会話も出来ない。

「如何してそんな引きこもりになってしまったの?それも、こんなに暗い部屋に住み込んで」

 僕は勢いよく両サイドのカーテンを左右に束ねて、綺麗な太陽の光を部屋に入れていく。
 頭を下げていた彼も、部屋に異常が舞い込んできた事で慌てて顔を両手で隠す。

「…ら、乱歩君は私を心配してくれないのであるか?」
「心配?」

 僕はそこで一息つき、両手で隠している彼の姿を見てから再び口を開く。

「心配だからこうして君の様子を見て文句を云っているんじゃないか。僕がこんな辺鄙な場所に建てられたオンボロなアパートに顔を出すなんて滅多に無いから光栄に思った方がいい!」

 僕はただ当たり前の事を云っただけだ。何も感じなければ彼個人の将来について僕が口出しする事も無い。彼の所在を知っているならいっそ住所全て晒してさっさと引き取ってもらおうと考える。それでも僕がわざわざ出向いてあげたのだが―――どうやら彼は両手こそ下げられたが、あまり感謝も光栄にも思ってもくれていないみたいだ。
 この場所を知っているのは僕だけであるという優越感に浸りたいのかもしれないけれど。

「そ、か。そうか」

 彼は心なしか薄い笑みを浮かべて見せた。少しだけ元気が出てきたのだろうか。矢張り人間はどんなに真夏だろうと真冬だろうと外へ出て太陽の光を浴びなければ心も沈んでいってしまうんだ。

「ありがとう、乱歩君。わざわざこんなところにまでやって来てくれて…矢張り、我輩は君が好きだ」
「―――?それじゃあ、僕はもう帰るから。ちゃんと米国へ連絡は済ませておくといいよ」

 ほとんど顔を拝見するだけの仕事になってしまったが、この後は辺りを軽く歩いて何か真新しいものでもないかと探してみようかと考えていた。
 彼はそんな僕の背後から服の裾を大胆に引っ張り、体勢を崩してきた。

「ちょっとっ!」
「我輩は乱歩君が居ればきっとこの先も明るい太陽の元でも生活出来るかもしれない」
「そんな事ないと思うけど」
「…乱歩君が一緒にいてくれれば、連絡をきちんとする。これでどうか?」

 急に何かを天秤にかけられた。当初は彼が何の話をしているのか全く理解出来なかったのだが、僕はすっかり彼の身体の中に入り込まれてしまい、抱き締められてしまっていた。

「そんな一緒になんて…っ!如何いう意味で云っているんだ!」
「こういう意味」
「―――んんっ!?」

 次の瞬間、彼が僕の顎に触って顔を近づけてきた。そして、そのまま口を塞がれてキスされた。抵抗を見せてみるが、大きな手はしっかりと僕の顔を固定して息を止められてどんどん苦しくなっていく。
 だが、それは相手も同じことだ。何度も同じ角度でキスをされれば、そのうち彼も息が乱れて、やがて離される。
 しかし、これで終わりとはとても思えなかった。明るい太陽に照らされた彼の顔は先程の笑みと似ている様で、少し欲にまみれていた。

「な、にすんの!」

 口の端に伝い掛けていた涎を手で拭いながら云う。

「乱歩君が我輩を嫌っているのならこれ以上は何もしない。だが、もし少しでも…我輩に好意を抱いてくれているのなら、君を我輩へ分けてくれないか」
「分ける…って…」

 わける、なんて人間の構造から無理だ。人は分身も出来ければばらばらに物理的に分けるのは無理だ。まあ、死を覚悟しろという隠喩であったのならそれは僕は今すぐに彼の元を離れて知人へ住所でも何でも晒してしまうが。
 彼をここで突き放すのは何か違う気がした。寂しそうに見える彼の姿を見て、過去のどうしようも無くなっていた自分を見ている様にも見えたのだ―――父上も母上も失って、頼る当ても無かったあの時の自分だ。

「嫌い…じゃない。嫌いじゃないけれど、僕の一部を君にあげるなんて無理。だって僕はこの五体があって、初めて名探偵なんだから!」
「……えーと…」
「だから、せめて一日の少しを君にあげることは出来る」

 自分が何か恥ずかしいことを云っているのは自覚していた。
 だから顔を合わせられないとそのまま抱き締めてしまった。顔を隠すにはもっと近づいてしまえばいい。顔を横に並べる様に。

「それじゃあ、今…乱歩君の時間をくれるというのか?」
「……少しだけだからな」










「…ん、ふぁ…何処、触ってんの!?」

 冷たい手が僕の服の中へ侵入してきて、腹や背中を直に触ってくる。その指触りがやけにいやらしくて、くすぐったくて、背中が反って逃げようとする。

「乱歩君、可愛い」

 なんて目で見てくるんだ。髪の毛で隠れてはっきりと表情を見れないけれど、欲望に忠実であるらしい。

「……君、変態…んんっ」

 ゆっくりと上半身の服を捲りあげ、脇下で引っかかり止まる。だが、彼にとって脱がせることが狙いでは無く、相手に晒された乳首を軽く摘ままれる。ぴく、と震えて反応してしまった自分は、きっと驚いたからだと脳内に云い聞かせていた。

「…も、やだぁ…はぁ…」
「でも、乱歩君のココはすっかり反応してきてる」

 ズボン越しに張り詰められてしまったそこを爪で軽く触られる。そんなところを誰かに触らせた経験なんて皆無だから、彼がするするとズボンを下着と共に脱がしていく様を見て、目を見開いて何が起きるのか恐怖してしまった。

「窮屈そうであるな。我輩のは…また今度にして、今回は乱歩君を気持ちよくさせて…」
「…ぅえ?…なんで僕だけなの?君は、君も…」
「少しずつ時間をくれるのなら、また今度でも」

 だけれど、と僕が口の形を作って発しようと思ったが、それよりも先に彼が僕のものを思い切り掴んで指先を動かし始めた。その衝撃で、僕はその先の言葉を忘れてしまった。

「や、やめ…汚いから…」
「汚くなんて無い。君は何時だって綺麗だ」
「ふ…んんっ、ぁっ」

 巧みに動かしていく彼の手つきはとても初めてとは思えないのだが、こういった経験でもしているのだろうか。人に触られてこんなに気持ちよくなってしまうとは思いもしなかった。声が漏れてしまう。

「んん、はぁ…んっ」
「声を漏らしても大丈夫である。周囲に住んでいる人は居ないから漏れ聞こえる心配も無い」
「…ん、んぁっ!…ぁあっ」

 声が漏れる心配をしていたのだが、段々と握り締められる力を強められていき、欲情がどんどんとそこに集中されてしまい、あっという間にイかされてしまう。彼の手の中で予告無に吐き出してしまったことで少し謝罪をしようかと思ったが、彼は手についたソレを眺めている。そして感想を述べた。

「最近乱歩君は自分でしていなかったのか?」
「…そ、そんなこと…どうでもいいじゃないか!」

 折角用意した言葉も結局伝えられないまま、終わってしまう。

「ふふっ」
「……何で笑ってるの?」
「乱歩君は、綺麗だなぁと思っていたのである」
「………意味が判らない。兎に角、僕の時間は今日御終い!もう帰るからね!」

 乱れてしまった服装を整えてそれから直ぐに靴を履いてこの場を去ろうとする。
 もう一度部屋を見渡すと、先程と違って太陽の光に照らされて明るくなっていた。そして、彼の表情もまた明るく変わっている。
 こんなことでいいのだろうか、と後悔している一部もあるけれど、取り敢えず彼は一歩進めはしたんだろう。

「乱歩君、また明日」

 後悔もあるけれど、それでも君を嫌いじゃないから多分、きっと、おそらく…明日もまた此処へ来るんだろう。

Re: 文スト BL、R18有 乱歩受け中心 太中も ( No.73 )
日時: 2019/12/14 18:52
名前: 皇 翡翠

姐さんが火付け役(?)になっちゃったお話

二人は15歳の設定で、太(→)中な感じで姐さんは面白がってる

■賭

 太宰少年は賭けをした。相手は四つ歳上の女性、尾崎紅葉だ。
「賭け?」と鸚鵡返しに問う彼女に「そう!」と無邪気に笑う。勝てる確信があったから太宰は彼女に賭けを持ちかけたのだ。
 彼女は切れ長の瞳をすうと細めて十五の少年の漆黒の瞳を覗き込む。しかし恐ろしく賢しいこの小僧の奸計を見破らんと射抜くような視線を太宰はふふんと鼻で笑いとばした。
「何が目的じゃ?」
「目的なんて大袈裟なモンじゃない。ちょっとした、お遊びですよ。言うなれば、暇つぶしさ」
そう言ってピンと指を立てる。
「今、紅葉さんはアイツに一般教養を叩き込んでるんでしょう」
それがどうしたと首を傾げる彼女に満足げな顔で頬を赤らめた。それは“クリスマス前の少年”のようだった。
「賭けをしよう。一ヶ月後、取引先との招宴があった筈だ。その場に中也も出席してもらう」
「ほう?」
「そこで中也が笑い者になったら私の勝ち。見事紳士淑女に溶け込んで見せたら紅葉さんの勝ち」
尾崎は呆れたようにふうと溜息をついた。
「……まったく。お前の考えることはよく解らない。
 それで、お前は何が望みだというのだ?」
その問いに太宰はぎらりと瞳を輝かせ「僕に返してよ」と言った。
「もともと、僕の犬だったんだよ。なのに森さんが貴女にあげちゃったんだ。こんなのってないじゃないか。
 ――――だから、僕に返して」
 あらまあ、と尾崎は目を丸くさせる。あらあら、こんなお人形のような得体のしれぬ小童も、一丁前なことを云うじゃあないの。そんな風にケラケラと笑う心を華やかな装いの下に隠し「わっちの躾をなめるなよ、小僧っこが」と不敵に笑った。

 さて、この尾崎紅葉は老成した女であった。弱冠十九歳にして幹部入りを果たした女傑だ。それ故に太宰は彼女と四つしか歳が変わらないことがすっかり頭から抜けていた。つまり、彼女もまた、太宰や中原と同じ“若者”であり、更に言うのであれば“子ども”であるのだ。
 尾崎は子どもらしい独占欲と我儘を剥き出しにした太宰を見て思った。ちょっと意地悪をして、この子のお気に入りを取り上げてやろう、と。
 それは他愛もない悪意だった。

 結果として、賭けに勝ったのは尾崎だった。
 中原は紳士淑女に溶け込むばかりか何処ぞのご子息かと噂されるほどに完璧に仕上がっていた。そのできに、尾崎は太宰の前で中原を褒めちぎり中原もまた得意げな顔で幼さの残る頬を紅潮させていた。
 面白くないのは太宰だ。
 彼はと言えば、悔しさと己の浅慮に顔を真っ赤に染めあげて中原を睨みつけていた。
「紅葉さん」と太宰が地を這うような声を出す。
「僕、わかったよ。あの犬、どうしても僕の言いなりにはならないみたい。
 だからね、本気を出す。本気であの犬に首輪を着けてみせるし、僕に服従させてみせる。もう見誤ったりしない」
 尾崎はいつぞやのように「あらまあ」と目を丸くさせ、やがてくすくすと笑った。

「勝手にせえよ、小僧っこ!
わっちはせいぜい馬に蹴られぬように用心するかの」
尾崎の言葉に、太宰は「ちぇっ」と地面を蹴るのだった。

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