大人二次小説(BLGL・二次15禁)

文スト BL、R18有 乱歩受け中心 太中も
日時: 2020/05/19 16:56
名前: 皇 翡翠

文ストの乱歩受けを中心に書いていきますっ!攻めも多分書くかと、
語彙力はあるかわかりません、拙く駄文ではあると思いますがそれでもよければ楽しんでってくださいね。
乱歩受けが好きになってくれると良いなぁ
・BL中心、たまにNLGLあるかも
・殆ど乱歩さん
・似非かも
・いろんな性格、設定、女体化、獣化、パロディ有
・シリアス、儚め、モブ有
・長編、短編

主に太宰×乱歩、福沢×乱歩、ポオ×乱歩、中也×乱歩
コメ、リクエスト一応受付ますが雑談の方で。

目次
 short                     
>>1-2甘酸っぱいlemoncandy(太乱)  ・>>5-7-8氷砂糖と岩塩(太中)
・江戸川乱歩は大人であるードライな乱歩さんー(乱歩総受け)
 福乱>>16 国乱>>17 太乱>>18 中乱>>19 ポオ乱>>20
・確かに恋だった(太乱)>>29
・rainyseason
 灰色の空(太乱)>>34-35 みずたまり(中乱)>>36-37
・黒白遊戯 マフィア太宰/太乱>>44-45
・こどものどれい モブ中/太中>>46-47
・ In the light 太中>>48
・一度で良いから 中乱 R18 >>51
・なんて不毛な、それでも恋(福←乱←太)>>52
・初恋は実らない、ジンクスさえも憎い 福乱>>53
・悪あがきとキス 太中>>54
・聖者の餞別 記憶喪失太宰の小噺>>56
・偽りはいらない ポオ乱>>57
・新たな教育方針(福乱)R18>>58
・たまごかけごはん>>59
・合言葉は「にゃん」である/太乱>>60
・ドラマみたいに/国乱>>61
・宇宙ウサギは月に還る>>64
・風が死を吹くとき(太乱)/微シリアス>>71
・ひきこもり人生(ポオ乱)/濡れ場あり>>72
・賭/太(→)中>>73
・百年の恋をも冷めさせてほしい(太乱)>>74
・水底の朝>>75
・せめて隣が、あなたじゃなければ(太乱+国)>>76
・なんて無謀な恋をする人>>77

long
・青から赤へ 太宰×乱歩
「好きです」>>3-4-10 変わらない目をして>>22-23 酔いで転んで>>38-39 青か赤か>>55 無意識な答え>>65

・拐かされて1>>11-12 拐かわされて2>>13-14-15 拐かわされて3>>24-25 打ち切り
・KISS FRIEND (乱歩総受け)
PLAYBOY(甲)(乙)(丙) 太宰×乱歩+モブ女性 (甲)>>31 (乙)>>42-43 (丙)>>66
・六日の朝と七日の指先 福乱 >>49-50>>62-63
・待ち人探し(乱歩さん誕生日)/福乱>>67-69

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Re: 文スト BL、R18有 乱歩受け中心 太中も ( No.50 )
日時: 2019/07/25 15:46
名前: 皇 翡翠



執務室を照らす陽光が漸く冬の終わりを感じさせる。決して贅沢ではないが、シンプルで上品な作りの洋風の書斎机には、ラムネ瓶のような薄い翡翠色をした花瓶が一つ飾られていた。

東北で大きな事件があった時に江戸川が貰ってきたもので、飾り気のない質実剣豪とした社長室にあって少しばかり異質な空気を纏っていた。初めて一人で依頼に出向いた折依頼主から贈られたものの差す花も無いからとどさくさに押し付けたものだ。否、あれは彼なりの贈りものであったのかも知れぬ。本人はそのようなことおくびにも出さぬが、初めてのお使いを済ませた子供のような瞳を思い出すと、福沢は何となくそんな気がしてならない。それ以来、半ば義務のように花を取り換え続けていた。花を差したいから花瓶を持ち出すのではなく、花瓶が空では格好がつかないので、花を見繕うのだ。それならばいっそ花瓶ごと物置に仕舞ってしまえば良いのにとは事務手伝いの言だが、福沢は良い、と言ったきりその職務を手放そうとしない。つまり、先程の仮説が全く否定されない内は、幻かも知れぬ江戸川からの好意を無下にできないのである。福沢は、花屋で買った一振りの梅の枝を眺めて、一年ぶりほどの溜息をついた。

江戸川乱歩はボイコットの達人であった。

乃木坂のとある会館で起きた殺人事件の帰り、江戸川は赤らんだ眼の縁に涙を溜めて福沢を睨みつけると、静かに溜まり続けた水が風船の腹を裂いて飛び散るように怒りをぶつけて、そのまま走り去ってしまった。福沢は、彼の外套がぴゅうぴゅう吹き付ける北風に捲られながらずんずん小さくなっていくのを、ただ呆けたように見つめていた。

それから、彼の叫んだ言葉の一つ一つを脳内で再生し、巻き戻し、擦り切れるまで咀嚼して漸く、彼の青年の胸中に累積したわだかまりの輪郭を、朧げながらつかむことができた。本日二回目の溜息をつく。悩ましげに米神に指を添える姿は一国の参謀、否、壮年の哲学者を思わせた。事情を知らぬ事務手伝いの女がそっと茶を置いて脱兎の如く部屋を後にする。または、彼の頭痛の種が殆ど育児に等しいと知れば、彼女も助言の一つや二つ、零したかも知れぬが、彼女は生憎そこまでの観察眼とひらめきは持ち合わせていなかったのである。

きいという微かな音が事務所のドアの開閉を告げた。福沢はくるりと窓を振り返り、年季の入った深いシアンのサッシに手を掛ける。江戸川がずんずんと歩いていた。福沢と口を利かずとも、仕事には向かう心算らしい。見降ろす彼は小さくて、福沢はちくちくという胸の痛みに唇を噛んだ。心なしか元気がないように見える。朝餉は食べたのだろうか、まだだろうな。ちらりと、こちらに視線が流されたような気がした。福沢は阿呆のようにかける言葉に逡巡したまま、彼の後姿を送り出した。

こうなったら、彼は意地でも喋らないだろう。昨晩社員寮の彼の部屋を訪ねた時も、居留守を使われた。端末への応答は徹底的に無視され為す術がない。間違ったことをいったつもりはないが、容易に受け入れ難い言い方で叱っても全く意味がない。内容が正しかろうと、手段を間違えればただの非難だ。福沢は身の入らない気持ちで書類に向き直ると、機械的に手を動かした。温くなった茶を口に含むと、出過ぎた茶葉の苦味が口いっぱいに広がった。

しかし、なんということだろう。長期戦になるだろうという福沢の覚悟は終業時刻間際にあっさりと破られた。

屹度、期待される行動の数々を察しながら殺伐とした殺.人現場で真理を突き付ける役回りに、若い心は疲弊していたに違いない。頭ごなしに否定したのは大変拙かったと、福沢は深い溜息をついた。彼の能力に甘えるような言い方だったことも認める。だから、江戸川が帰還したらきちんと謝罪しようと腹に決めていたのに。

政府宛の報告書に社の実印を押して一日の業務を終わらせた所に、快活な声が響く。ぱたぱたという足音が近づいてきて、常の如くノックを心のうちで済ませた江戸川が扉を開け放った。

「ただいまー!!社長、聞いて、驚かないでよね!名探偵乱歩さんの最速解決記録を更新したんだ!」

昨夜から今朝の出社時にかけてのむっつりは何であったのだろう、江戸川乱歩が外套も帽子も取らずににこにこと報告する。福沢は目を白黒させて彼の顔をじろじろ見詰めた。四秒ほど表情筋を観察したところで、江戸川の方が顔を顰める。

「何かついてる?」

つるつると頬を触って首を傾げる。福沢は否とかああとか要領を得ない返事で、無駄になった覚悟を飲み干した。自分のことを試しているのか―あまり無さそうな可能性だが、対応を間違えるわけにはいかない。用意した誠実さを貧乏性で持ち出すことにした。福沢は慎重に話を切り出す。

「乱歩、昨日のことだが、」

「昨日?何かあったっけ。あ、報告書なら明日の朝まとめて出すからまだ待っていてよね。」

江戸川は怪訝そうな顔をして福沢のことを見つめるばかりだ。それから、

「社長が隈なんて作って珍しい。早く寝た方が良いよ、」

誰のせいだと思っている。指摘された通り三時間しか眠れなかった福沢は目線を合わせて、

「乱歩、はぐらかさないでくれ。お前のことを考えない物言いだったと反省している。謝らせてもくれないのか。」

江戸川は猫のように細い眼を彼なりに見開いた。

「物言いって…ああ、昨日叱られたっけ。どうして社長が謝るの?」

「お前を傷つける言い方をした。」

「そう…なの?」

江戸川はきょとんと首を傾げるばかりだ。噛み合わない会話は翻訳機を通した異国人とのそれのようだ。江戸川の顔を見る。恐ろしいことに、本当に怪訝そうな顔をしているのだ。

「傷ついたのではなかったのか。」

「覚えてないよ。」

覚えていないとはどういうことか。福沢が問い質そうとした刹那、事務員が来客を告げた。就業間近の社内が俄かに賑やかになり、客はすぐさま応接室に通された。社長、と呼び出され、張り合いのない謝罪が終わる。喉に骨がつかえたまま米粒を流し込まれたみたいだ。江戸川はすでに直前までの会話に興味を失って、菓子袋を手に事務所のソファに座り込んでいた。

それから、表面上は何事もなかったかのように日常が続いた。
春は世界が動き出す。探偵社への依頼など広く世情を考えるのならば少ない方が良いに決まっているが、気持ちと言うのは矢張り仕事が増えれば高まるものだ。一般企業でない異能探偵社は、依頼量が直接社の信頼を表す。頼られて良い気がしない者は、そもそもこの職に向かんだろう―次々に舞い込むきな臭い事件に頬を緩めるわけにはいかないが、最終的にはこう言い聞かせるしかない。卓上の梅の枝は見事な花をつけ福沢に微笑みかけていた。表情筋のひとつも動かさない福沢なりに、商売繁盛に浮かれていたのだが、喜んでばかりもいられなかった。書類を一山片づけたところで、梅こぶ茶を一口啜った。考えねばならぬことがある。
飲み込んだ違和感が喉に閊えた。江戸川のことだ。彼は相変わらずの傲慢な物言いと、しかしそれも許さざるを得ないほどの見事な推理を披露して難事件を丸裸にしているが、福沢は気付いていた。あの口論の翌日、けろりとした顔で執務室にやって来て以来何かがおかしい。違和感の原因を探ろうとすれば決まって頭痛がするが、無視できるほど小さなものでもない。福沢とて探偵社の看板を掲げる人間だ。江戸川ほどの推理力を持たずとも、直感的なセンスにかけては十分彼に劣らない。
例えば、前日に解決した事件について話している時。夕食に食べた料理の話をしている時。記憶に齟齬は無いようだが、奇妙に空虚なものを感じる。同じ事象について話しているのに、噛み合わないのだ。まるで、向かう方向ばかり同じで永遠に交わることのない線分上に取り残されているような…。
 考えて、小さく溜息をつく。失礼します、という声に思考は中断された。何を書くでもなく握っていた万年筆をごろりと手放し、構わぬと声をかけた。設立当初からの事務員が湯呑を取り換える。礼を述べた福沢はふと思いついて、気まぐれに口を開いた。
 
「最近、乱歩はどうだ。」

事務員の女はきょとんとして見せてから、はてと首を傾げた。

「いつも通り、と申しますか、早々に事件を解決なさっては事務所で菓子を召し上がっています。…まあ、」

何事か言いかけて淀んだ語尾を聞き逃さない。

「何かあったか。」

「いえ、何か、と言うほどではありませんけど…その、随行の事務員が一昨日、酷く乱歩さんのご機嫌を損ねてしまったらしいのですが、」

福沢の眼光が鋭くなる。事務員は半歩身を退けた。続けろと促す。

「いつもなら翌日お供するのに苦労するのに、どういう風の吹きまわしか、すっかりお許しを頂いたそうで。出社なさった時にはもうすっかり済んだようなお顔をなさっていたんですよ。」

何か良いことでもあったんですかねえ、と微笑んで、古い湯呑を盆に乗せた。立ち去るついでにちょいと書斎棚の書類を直して部屋を後にする。
福沢はああ、と上の空で返事をして、背凭れに身を預けた。

ある予感があった。

暫し逡巡して、卓上の連絡帳を引き寄せた。

Re: 文スト BL、R18有 乱歩受け中心 太中も ( No.51 )
日時: 2019/07/27 13:16
名前: 皇 翡翠

※時系列は探偵社、マフィアが同盟中 R 中乱


一度で良いから

 知ってしまった。
 知ってはいけないと思いつつも好奇心が勝ってしまったのだ。
 中也は見てしまう。

「君は僕の事好きなのかもしれないけれど、僕が君を好きになる可能性は無い。
だから、そんな気持ちを何時までも持っていられたら迷惑なんだよね」

 彼はあっさり切り捨てた。
 夕方の街中。それほど人のいない路上。その裏でその言葉は投げ掛けられた。
 そしてその相手は涙目を見せた状態で走り去っていった。

「随分酷ぇ振り方するじゃねぇか」
「……訊いていたんだ。変わった趣味を持ってるんだね」
「偶々に決まってんだろ!」

 互いに同盟を組んでからの僅かの時間。そんな最中、乱歩と中也は二度目の出会いを果たす。

「手前は結構非道な人間なんだな。好いてくれる人間をそんな切り捨てるなんてよ」
「……?だって、何時までも未練がましく想って期待するなんてそれこそ気の毒じゃない?だったら早く切り替えて行った方が自分の為にもなるからね」
「………」

 中也は乱歩の発言に無言になってしまう。
 確かに彼の発言にも乱歩なりの優しさが残っていた。それは確かに一つの立派な案であり、乱歩に説得力があった。だから、それを平然と云ってのける乱歩にまともに対峙しても勝てないと早々に判断した。

「手前はそうやって…」

 そうやって、周囲を狭くしている。
 彼の本質を少しだけ見てしまった中也は彼の自分への気持ちもきっと届いていないのだろうと思う。単純に同盟という一時的な関わり合いでしかないのだから仕方がない。

「じゃあ、手前は俺の事をなんとも思って無いみてぇだし…」
「えっ…?」

中也は乱歩をコンクリートの壁に追い込む。逃げられないように手を壁に叩きつけるように伸ばして彼の頭の横に置く。
 中也は、自分も何とも思っていないと切り捨てられてしまうのならば、いっそめちゃくちゃにしてしまえば良いのではないかと考えたのだ。自己中心と云われるかもしれないが、この先に可能性が無いのならばいっそ傷を残してしまおうと考えたのだ。
 別に中也は乱歩に好意を抱いている自覚は無い。単純にそうやって切り捨てられる人の山に、今こうして対面している自分もまた同じ山へと放り投げられてしまうことに腹立てていた。
 頭の中で中也は次の行動を考えずに衝動に任せる選択肢を取る。

「手前の中に深い傷を残してやるよ」

 少しの緊張を払い除けて艶然と微笑む。

 初めてあった時から中也は乱歩を気にかけていた。当初はあまりの自由な振る舞いに拍子抜けさせられて、次に警戒心を強める。しかし彼の警戒心のなさにこちらとしてもそれを緩めるしか無かった。
 そんな異形な男に興味があった中也だが、今こうしていると、思う。
 身長こそ乱歩が勝っているが、精神的には幼さや異端さが際立っていると。
 此処でまた新たな発見を得る。だから興味を持ち、近づいているのだと中也の心の底にある何かは呻いている。

 しかし、結局はこうして近づけるのも僅かな刻だけなのだ。同盟が解除されてしまえば直ぐにまた敵対するのだ。

「こうやって僕を追い詰めたつもりかもしれないけれど、そんな簡単に僕はやられないよ」
「だろうな。けど、生憎手前を殺したりしねぇからそこは安心しな」

 そう一言添えて、中也は直ぐに唇を相手にくっつける。

「くっ……んんっ」

 口内を中也の舌が暴れて乱歩を惑わしていく。乱歩は、息継ぎをするので精一杯となり、まともに思考が働かないでいた。
 その隙に、服の上から乱歩の雄に触れる。

「んぁっ……」

 その衝撃を受けて乱歩は身体を跳ね上がらせる。
 それでも此処で中也が主導権を握っていることに悔しいと思う乱歩は中也のズボンのファスナーに手を掛ける。

「うわ……でか」

 乱歩は本音を溢す。

「お、おい……」

 中也の雄を視界に捉えた乱歩は、使い込んでますと云わんばかりの成長を見せているそれが微かに反応したのを見て、そっと握る。

「んっ…ら、んぽ手前!」
「…んにゃっ!」

 何時のまにやら乱歩が主導権を握りかけていたので、中也は乱歩のものを服の上からまさぐり始める。
 乱歩は久しく自分で触れていなかったこともあり、他人に触られたことで過剰な反応を見せてしまう。声が裏返る。
 此処が何処かも忘れる程に乱歩は感じたものを素直に声に出してしまう。

「ふはっ」

 遂にズボンからそのものを取り出して直に触り始める。既に半勃ち状態となり、脚も震えを我慢してなんとか身体を支えて立ち続けている。
 なんとか崩れないように中也も片腕で彼の脇の下に通して助けながらももう片方できつく握る。ぐちゅぐちゅと卑猥な音は徐々に大きくなっていく。

「んっ、ふっぅ…」

 乱歩の気持ち良さそうな吐息は中也へと届き、煽っていく。
 そして先端からは先走りがじわじわと溢れていく。そうして中也は彼を弄んではいるが、乱歩に影響されてとっくに中也も我慢を出来ずに勃ち始めていた。
 きっと届きはしないと思いながらも乱歩への欲望をぶつけていき、より一層強く刺激を与えていった。

「やっ…うぁっ…だ、めっ…」

 何処からでているのか、色気たっぷりの喘ぎに中也は加害したいという衝動に駆られる。そして彼の表情がどんなものか、と覗き込むと、彼は真っ直ぐに中也を見ていた。目が潤いを見せてはいるが、じっと見ていることでそれを耐えている。目が合ってしまい、何故だか恥ずかしくなってしまった中也は手に握っているそれを強く刺激を与えて誤魔化した。

「んんっ…イく…!」

 乱歩がそう吐露すると、その予言は直後に行われ、勢いのままに出した。

「はぁ、はぁ……」

 まさか乱歩がこんな単純に反応してイったのだと思うと中也は嬉しくなりら更に興奮してきた。

「もう、離して…変態!」
「変態か。確かに否定はしねーよ」

 身体の崩れを整えて、乱歩は中也を一度睨んでから直ぐにその場から離れようと動き出す。
 いくら人目が無いとはいえ、路上で身体をまさぐられていい気分になどなるわけもない。
 さっさと出ていき、もう二度と対面しないように注意しておけばいい、と乱歩は考えていた。
 だが、彼はーーー中也はそれで終えるつもりなど毛頭無い。そもそもこの関係を崩しても構わないとすら思っていたのだから、ただ触ってあげただけで済ませるはずが無い。

「んぃっ痛いっ!」

 襟元を掴まれて、乱歩は首を絞められた苦しさから体勢を崩して、前進したかった筈が後退させられ、終いには尻餅をつかされてしまう。
 身長で劣っていた中也も今では乱歩を見下ろしている。
 乱歩は怖くなる。何故こんな仕打ちを受けなければならないのか、と。中也と自身の関係に何か異常性が合ったのだろうか。乱歩の揺らぐ目は真相など掴めないまま、ただ中也の手つきを追いかけていく。
 最後までパンツもろともずり下ろされてしまい、下半身の肌は外気に晒される。

「ゃ、やめて……っ」

 次になにをされるのかと恐怖を抱きながら中也を見ると、中也自身は再び元気を取り戻していた。ぱんぱんに抑えられているそれは早く解放されたいと主張をしており、乱歩は中也の真意を理解した。

「……いいよ」
「―――は?」
「君の好きにするがいい。僕も今は楽しむこととするよ」

 乱歩が悟った表情を見せて両手を前に出して受け入れる体勢を魅せられた気分になる中也。
 気持ちも受け入れてもらえたのでは無いかと淡い期待もしてみるが、それは淡いままだ。

「どうなってもしらねーからな」
「んんっ…ふぅ、ふぁ…」

 尻の割れ目の奥へ指を滑らかに滑らせると、隠されていた穴を発見し、そこへとゆっくり浸入させる。
 乱歩も異物への嫌悪に眉間に皺を寄せて耐える。


「はぁ…んぁっ」

 指の本数を増やして、更に奥へと遊びに向かう。もうどう思われても構わない、と捨ててはいたものの、それでも乱歩の身体への負担を気にしてあまり自由に闊歩する気持ちにはならないでいた。

―――こんな中に俺のもの挿れたら壊れちまうんじゃねーか?

 徐々に抜き差しの動きを速めていくと、それに伴い乱歩へも快楽が流れ込み始めて強い刺激が訪れればきっとイってしまえるのだろうと自分の身体を理解していた。

「……ふぁあっ!」

 最後に勢いよく中にあった指を抜かれ、危うくイきそうになってしまう。
 目がぱちぱちと何をされたのか少しずつ解いて行こうとしていたが、その答えへの導きの前についに元気な中也のものが挿入される。

「ひっ、いぃ、いった…!」
「くっ、手前もう少し…緩めろ!力を抜け!」
「それ以上、むりぃ…」

 先が入り込んで乱歩の尻は素直に痛みから収縮する動きを見せた。
 経験したことの無い圧迫感に脳内が大きな刺激を受け止められないでいた。

「んだよ…初めてなのか?あんなに指で喘いでたのによ」
「あ、ったりまえだ!」

 乱歩も少しずつ彼のものを受け入れるべく身体の緩みへ注いでいき、中也の顔から苦痛の色が取り除かれていく。
 それでも息の荒い乱歩は中也へとしがみついてなんとか凌ごうと努力している。その刹那、乱歩の健気さに内にいたものが震えて、より大きさを増していく。

「へ、んたい……んんっ!」

 苦しさに加えてなにかが疼き、乱歩も中也も更に息を荒げる

「くっ…動くからな」
「ん…んぁっ!」

 その言葉通り抜き差しを始めていき、乱歩へもう衝撃が走っていく。
 痛みが上回りはするものの、それでも違う何かも混ざりあい、涙が理解出来ないとゆっくり落ちていく。

「くっ…やばい…」
「もう…だめ…イく!抜い…て」

 中也も限界であり乱歩も終わりを迎えたいと思っていた。
 流石に中でそのまま出してしまえばきっとその後の関係は泥沼となるだろう。めちゃくちゃにしてしまえば、なんて云いながらも決心がつかない中也はゆっくりと抜いていく。
 その動きを感知した乱歩は身体を痙攣させてそのままイった。
 そして中也もまた外で吐き出した。

「……君は本当に、元気だね」
「……んだよ」

 乱歩は大きく呼吸をして身体の空気を入れ換えていく。

「こんな路上で発情して愚かだね。その吐き材料として僕を利用したんならもっと非道だよ」
「……え」

 話の流れが今一つ掴めていない中也は、ぽかんとした表情を見せる。
 だが、乱歩はそんな彼を放っておいてどんどん身支度を整える。身体の中にまだ気持ち悪さが残っているが、それを感じさせないように冷たい目を送る。

「君が僕にしたことを忘れはしない」

 それが中也の望んだ言葉であったのか。
 やり方が如何であろうとなんとも思われていない大勢の中からは取り外されたのだ。
 暫く乱歩の頭の中は、中也で埋め尽くされていたのだから。

Re: 文スト BL、R18有 乱歩受け中心 太中も ( No.52 )
日時: 2019/07/31 15:37
名前: 皇 翡翠

なんて不毛な、それでも恋 (福←乱←太)

 泣いて、泣いて、それでも泣いたところで零れ落ちるのは水滴だけで。それ以外は結局心の中に残っているままなのだから。泣いたところでそれは意味があるのか正直分からない。それでも人は泣きたいと泣く。そして泣きつかれた彼が次に溜息をつく様を見てはいつも背中をトントンと叩いてあげるのが私の役目であった。
 一つ叩いて、また溜息。
 今度は頭を叩いて、涙を拭う。
 そうして私はまた泣いている彼の傍にいつも寄り添っていた。





「乱歩さんはよく頑張りました。頑張りましたね」

 乱歩さんは今日、失恋した。長年募らせていた恋に終止符を打った。
 そう告げてきたのは今から約三十分余り前のことだ。
 今日は仕事も早々に片付いて帰宅した直後。彼は私の後をつけてきたのかと疑いたくなる程に玄関へ入った途端に呼び鈴が鳴る。その僅かな時間の出来事に警戒心を持ちながらも扉を開けたら、まさにこの状態の乱歩さんが訪ねてきたのであった。否、まだ涙は堪えていたか。

「頑張る?僕は頑張れていたのだろうか。想いを告げることも出来ずにただ隣に居ては独りで舞い上がっていた僕は何を一体頑張れていたと言うんだい」
「そう自分を卑下してはいけませんよ。確かに想いこそ告げることは叶わなかったかもしれませんが、それでもその想いを無下にせずいたじゃあありませんか」

 彼を励ます為の言葉をかけると、また彼の目には涙が溜まる。








 乱歩さんは社長に、失恋した。とはいえ、想いを告げることはしておらず、独身を貫いていた彼にもようやく遅咲きの春が舞い込んできたということだ。
 乱歩さんの心情を知っていたのは事務所内で私だけである。彼が一人で悩み、葛藤している横に寄り添って彼の支え役を務めていた。もちろんこれは仕事ではない。ボランティア活動だ。乱歩さんに頼まれたわけでも無い。それでも乱歩さんは私の前では吐き出す様に涙を流す心の在り処となっていたのは自惚れではないだろう。

「…ごめん」
「もう少し落ち着いたら乱歩さんの好きな甘味処にでも行きましょうか。ああ、しかし少し目が腫れてしまいそうだからあまり外出はしない方がいいかもしれませんね」
「…ここでのんびりする」

 乱歩は小さく呟くと、それに私も了承の言葉を返した。
「了解です」

 そして一旦私は乱歩さんの傍から離れて何か甘い物があるかと引き出しを探る。
 今の乱歩さんが何を食してくれるのか分からないが、手当たり次第に彼の前に差し出してみるとしよう。

「乱歩さん、暖かい飲み物と冷たい飲み物、どちらがお好みですか」
「…要らない」

 全く。仕方がないので簡単に用意出来る冷を選ぶことにしよう。
 普段漂々として天真爛漫な彼から如何してこの姿が予期できようか。それはきっと私にしか想像出来ないことだろう。
 あの社長すらも彼がこうして泣きじゃくる様を見たことが在るだろうか。君を思うて泣いているとは思うまい。まあ、そこで理解出来ていればこのようなことにはならないか。
 詰まる所、私は今優越感に浸っているのだ。
 社長への対抗心から生まれた感情。それこそ誰も知らぬ私の裏の姿だ。乱歩さんも知りはしない感情。場違いにもにやけ面を隠すように部屋の脇の壁掛け時計に目をやると、時刻は間もなく九時を迎えようとしていた。

「はい、乱歩さん」

 そして目の前にコップと部屋にあるだけの菓子折りを差し出した。まだ未開封の菓子折りに一体何が入っているのか私にも検討出来ないでいたが、何時か乱歩さんと共に食べれればいいと取っておいたものだ。

「ありがとう、太宰」

 乱歩さんはぼろぼろになりながらも笑って云った。言葉は彼を変えたといのか、沢山の涙を流して腹の空腹に気付いたらしく、勢いよく菓子を取り出しては、どんな物でも口に含んでいきそうな口を開いた。
 その彼を見て少しだけ残酷だと感じてしまった。









 乱歩さんはすっかり機嫌を取り戻したらしく、何でも無い他愛無い話をするようになった。多少は社長の悪口も含まれていたが、それでも事務所の話よりも自分の様々な事件解決の自慢話をあれやこれやと巧みな話術を使用した。
 見ていて痛々しくも感じるが、きっと彼にはその同情を必要とはされていないのだろう。手を伸ばしてしまいたいという想いを私も押し殺す。

―――いつもそうだ。

 彼が失恋する前から何度か彼がここを訪れては泣いて、会話をしてまた彼は帰っていく。心配だと彼を送ろうかと促してみるも華麗にその言葉からすり抜けて一人で夜道を歩いていく。下手したら酔っ払いのように足取りが悪い時だってあるのにだ。
 それでも何かある度に私の元へと訪ねてきてしまう彼は私を如何考えているのだろうか。
 彼の中の私は一体どこに分類されているものだろう。気にはなるが、結局彼と同じ道をたどってしまう私は共に菓子を食べて茶を口に含み、笑うことしか出来ないでいる。

「ああ、何だかかなり会話をしたら色々とすっきりしたもんだね。太宰には感謝したいことばかりだよ」
「いえいえ、乱歩さんが頼ってくれるというのは非常に名誉なことだと思いますからね」

 そう云えば、まあね、と腰に片手を付けて胸を張る。すっかり彼は自身を取り戻したようだ。
 よかった、よかった。
 私にはそれでも不穏でしかない。ぼんやりとまた時計を見てみると、あれからすっかり小一時間は経っていたらしい。

「それでは失礼するとしようかな。今日はもうすっかり夜更けてしまったみたいだしね。あー、明日は何か予定でも組み込まれていたかなあ」

 ぶつぶつと、明日のことを考え始めた乱歩さんはゆっくりと玄関口に歩いて行こうとする。
 そんなに腫れた目をして、明日また仕事に行くつもりなんですか。そのまま云って、貴方はそれで満足したのですか。泣いてスッキリしたのですか。
 ようやっと乱歩の心が晴れたというのに、私が彼を引き止めるための手立ては姑息な物ばかりであった。しかし悪戯に口に出来るものでは無い。口出してしまえばきっとこの関係すら危うくなってしまう。
「ああ、そうか」

「ん?何か言ったかい?」

 太宰は彼の背中を押すように、扉を開けてあげる。伸ばした手は乱歩に触れることも無く、彼を見送るための機能だけを果たす。

――ああ、そうか。こうして乱歩さんも告げることも出来ずに違えてしまったというのか。

 私では無い人に恋をして、粉々になりかけてもなお好きで居続けて、幸せを掴むことが出来ない彼は、今まさに私の移し鏡その者であった。
 そんな彼に恋をしてしまった私は。
 彼と違う道を辿ることが出来るのだろうか。
 ぱたり、とドアが閉まる音と共に、目からは涙が零れた。
 その涙は、確かに私のものであった。

Re: 文スト BL、R18有 乱歩受け中心 太中も ( No.53 )
日時: 2018/09/27 20:42
名前: 皇 翡翠

初恋は実らない、ジンクスさえも憎い(福乱)

 最初に恋をしたのが多分、今だ。下手をすれば両親以外に好きになった相手は今までに存在していなかったかもしれない。

「乱歩、また仕事に向かうぞ」

 僕と福沢さんが出会ってから半年ほど経った頃であった。福沢さんの仕事の雑用係として雇われていた僕であるが、きちんと頼られているのか、僕がここに留まっていることが彼にとって何かしらの良い点が存在しているのだろうか。そんなことを疑問に思ってしまった。

福沢さんは用心棒での仕事を生業としているが、その仕事対象者の危険因子を早々に発見する様になってからやけに仕事が減量している。これは僕の推測では無い。実際、最近は仕事の予定を確認しては溜息をつく福沢さんを目撃することが住々にして在る。だからきっと僕が見ていないところではもう幸せが逃げるのすら諦めてしまう程に溜息をついているんだろう。とはいえ、僕に出来ることは事件を解決することに、用意してくれた学問知識を身に付けること。福沢さんは僕に世の中を知る為に知識を入れろと云って勉学を学ばせる。
 それらにきちんと応えているつもりだ。怒られることはしていない…はず。断言はできないが。

「福沢さん、今度の仕事は何?今度もパパッと終わらせちゃおう!」

 僕の異能でね、と云うと少し苦い顔をしながら笑っていた。
 それは僕の異能を使うことが嫌ということなんだろうか。何かやり方がいけないんだろうか。そんなことを頭の中で考えていても、きっとまだ子供の僕には大人の思考を読み解くことなんて出来やしないんだ。裸眼の世界には『何も見えない』のだから、僕には彼が溜息つく理由がわからない。
 それで僕も溜息をつく。

「…福沢さんって阿保だよね」
「どういう意味だそれは」

 突然の小馬鹿にした発言に眉間に皺を寄せた。

「そのまんまの意味だよ。もういい歳だってのにどうしていつまでも独りでいるつもりなの?僕の両親は福沢さんぐらいの歳にはもう…」
「今はそう云った色恋沙汰に現を抜かすつもりは無い」

 福沢さんは僕の質問に答えて先に歩き始めて大股になる。あれ、怒らせてしまっただろうか。背中を見てみても、大きな背中だとしか感じられない。

 ……早く福沢さんが誰かと恋仲にでもなってくれればいいのに。

 でないといつまでも僕は福沢さんから離れられない。
 いつまでも隣に居るのは僕でいいんだ、と慢心してしまう。

「それに一つ訂正だ」

 ふいに、足を止めて声を張って云った。危うく僕は彼の背中に鼻をぶつけるところだったが、寸でのところで何とか掠めることも無く止まることが出来た。全く、危ないじゃないかと文句を云ってやろうかと僕も口を開けると

「俺の事を独りだと云っていたが、独りでは無いだろう」
「え、そうなの?」

 僕が知らないところで誰か片恋相手でも見つかっていたのだろうか。

「俺には乱歩―――お前がいるだろう」

 その言葉に僕は口を開けたまま何も言い返すことが出来なかった。

「……ぼ、僕?」

 ようやく振り絞った言葉がこれだ。動揺を隠すことが出来ずに、困惑した様を晒していると、福沢さんはそんな僕を見下ろして鼻で笑った。
 小馬鹿にした、というよりは微笑んだに近いかもしれない。その顔を見るとまたすぐに前を向いて歩き始めた。今度は僕の手を握ったままに。

「ほら、早く仕事をするんだろう。こんなところで無駄話をしている場合では無いぞ。お前のことを待ち望んでいる人が大勢いるのだからな」
「そ、そうだけど…そうだけども!どうして僕なんか数に入れたの!?」

 疑問に思って問いかけてみるも、何も答えが帰ってくることも無く、そのまま手を引っ張られて、それに釣られて身体も彼の後をついて動く。その手の温もりがやけに怖くて相手の手を振り払ってしまいたいが、福沢さんの実力は鮮明に思い出せる程の物だ。仕事を目の前にしていても分かるが、自分自身も一度彼に大きく平手打ちをされた経験がある為、その恐ろしさは体感している。だから振り払おうとしたところでそれが無意味であるとは分かっているが。
 その手を通じて彼に僕の想いが伝わってしまうのではないかと恐怖する。怯えてしまう。けど、嬉しかったりもする。

「しかし、あんまりお前が公に出ると困ったものだな」

 小さく溜息をつく。

「…どうして?僕の異能は警察も頭を下げる程に凄いんだよ?皆に見てもらいたいじゃないか」
「そうすると俺の仕事が無くなっているんだがな」

 今度は苦笑した。

「そっかぁ、でもそしたら僕が福沢さんを養ってあげればいいんだよね?そしたら福沢さん困らないでしょ?」

 僕は何一つ間違ったことを云っていない。これで少しでも福沢さんの役に立てていればそれでいいかもしれない。そうとさえ思っていたのに…
 福沢さんは笑った。あの無口で無愛想だと周囲から恐れられていた男が僕の前では笑ったり溜息をついたりしてくれている。

「なら、そうだな。お前に養ってもらう人生も悪くないかもしれないな」

 その言葉と同時に握られていた手は簡単に離れて行ってしまった。仕事の現場に到着した。既に警察は周囲に数台の車と共に到着していたらしい。
それに誤魔化されてまるで子供の戯言だとあしらわれてしまった感があるこの回答じゃ溜息の原因を取り除くことが出来ていないのかもしれないが、それでも福沢さんはそんな簡単に人を扱える人間じゃないことは僕が知っている。
 だから、もう少しだけ。
 もう少しだけ僕は福沢さんの隣に居よう。彼が独りじゃなくて、僕も含めてくれたのだから。最後の言葉を信じて。
 縁起の悪い言い伝えなどを忘れてしまおう。

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