大人二次小説(BLGL・二次15禁)
- 文スト BL、R18有 乱歩受け中心 太中も
- 日時: 2020/05/19 16:56
- 名前: 皇 翡翠
文ストの乱歩受けを中心に書いていきますっ!攻めも多分書くかと、
語彙力はあるかわかりません、拙く駄文ではあると思いますがそれでもよければ楽しんでってくださいね。
乱歩受けが好きになってくれると良いなぁ
・BL中心、たまにNLGLあるかも
・殆ど乱歩さん
・似非かも
・いろんな性格、設定、女体化、獣化、パロディ有
・シリアス、儚め、モブ有
・長編、短編
主に太宰×乱歩、福沢×乱歩、ポオ×乱歩、中也×乱歩
コメ、リクエスト一応受付ますが雑談の方で。
目次
short
・>>1-2甘酸っぱいlemoncandy(太乱) ・>>5-7-8氷砂糖と岩塩(太中)
・江戸川乱歩は大人であるードライな乱歩さんー(乱歩総受け)
福乱>>16 国乱>>17 太乱>>18 中乱>>19 ポオ乱>>20
・確かに恋だった(太乱)>>29
・rainyseason
灰色の空(太乱)>>34-35 みずたまり(中乱)>>36-37
・黒白遊戯 マフィア太宰/太乱>>44-45
・こどものどれい モブ中/太中>>46-47
・ In the light 太中>>48
・一度で良いから 中乱 R18 >>51
・なんて不毛な、それでも恋(福←乱←太)>>52
・初恋は実らない、ジンクスさえも憎い 福乱>>53
・悪あがきとキス 太中>>54
・聖者の餞別 記憶喪失太宰の小噺>>56
・偽りはいらない ポオ乱>>57
・新たな教育方針(福乱)R18>>58
・たまごかけごはん>>59
・合言葉は「にゃん」である/太乱>>60
・ドラマみたいに/国乱>>61
・宇宙ウサギは月に還る>>64
・風が死を吹くとき(太乱)/微シリアス>>71
・ひきこもり人生(ポオ乱)/濡れ場あり>>72
・賭/太(→)中>>73
・百年の恋をも冷めさせてほしい(太乱)>>74
・水底の朝>>75
・せめて隣が、あなたじゃなければ(太乱+国)>>76
・なんて無謀な恋をする人>>77
long
・青から赤へ 太宰×乱歩
「好きです」>>3-4-10 変わらない目をして>>22-23 酔いで転んで>>38-39 青か赤か>>55 無意識な答え>>65
・拐かされて1>>11-12 拐かわされて2>>13-14-15 拐かわされて3>>24-25 打ち切り
・KISS FRIEND (乱歩総受け)
PLAYBOY(甲)(乙)(丙) 太宰×乱歩+モブ女性 (甲)>>31 (乙)>>42-43 (丙)>>66
・六日の朝と七日の指先 福乱 >>49-50,>>62-63
・待ち人探し(乱歩さん誕生日)/福乱>>67-69
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- Re: 文スト BL、R18有 乱歩受け中心 太中も ( No.58 )
- 日時: 2019/10/13 16:10
- 名前: 皇 翡翠
新たな教育方針(福乱) R18
「常識なんて嫌いだよ」
彼が口にするのは何時だってこの言葉だった。
少し目を離せば警察官に迷惑をかける。殺人現場を平気で歩き回り、周りを巻き込んでいく。そんな乱歩を止めるのは俺だけだ、と周囲が決めつけたばかりに何時からか親代わりとなっていた。
そんな彼が知らない常識を教え込もうと考えるも、答えはこれだけだった。
「常識は人の世を生きていくうえで大切なものだ」
「でも福沢さんは、僕の自由に生きて善いって云ったじゃん」
「…それは他人に迷惑をかけなければ自由だと伝えた筈だが」
彼に指摘すると、そうだっけ?なんて惚けた解答をする。これでどれだけ乱歩が話を聞いていたか否かが判断出来る。
しかし一度睨みを効かせれば直ぐに縮こまった。
「ごめん…なさい」
「改めて教育しなければならないぞ」
「えっ…?」
乱歩は急に顔が強ばった。避けるように距離を取り始めて警戒をされた。そんなに教育が厭なのだろうか。
「何を…するの?」
「何とは、なんだ。だから一から教え込もうと」
「変態!」
乱歩は怒鳴った。
此処が室内で良かったとほっとする半面、それでも自身が変態呼ばわりされることに多少の顔の変化が起こる。
「この前警察官達が話していたよ。教育ってのは変態行為なんだって」
…なんの話をしていたらそう発展するんだ。
その警察官を疑えばいいのか、乱歩の読解力が違った方向に働いているかもしれないことに指摘したらいいのか。その当時所にいないので何も判断出来なかった。
「この前、警察官が失敗してた時に教育し直してやる!なんて上司に怒られていたんだよ。まぁ、その教育の内容が結構過激路線だったものだからさ」
例えば―――なんて云いながらこちらに迫ってくる乱歩。教育すると断言したのはこちらだというのに流れを自分のものにして誤魔化そうとしているのは容易に判った。
その為、近づいてきた乱歩の手首をしっかり握り締めて止めた。
止めて、こう云ったのだ。
「ならば、お前の望む教育方法でしっかり覚えて貰うぞ」
下半身に纏っていた衣服を下に落とされて、よつん這いの体勢を取るように指示をする。そして突き出された尻の肉を掻き分けるように割れ目を開けて直ぐにア.ナルを見つけ出す。
「て…手馴れてるんだね、社長は」
既に指を挿れてゆっくり慣らしていったので、いよいよ本番だといったところであった。薄明かり越しに見える乱歩の目は恐怖と好奇心が入り交じっていた。
それ応えてやる様に、パンツまで脱ぎ捨てて自身の竿を取り出す。
そしてすっかりぐちょぐちょに濡れている先端へと宛がってみる。
「じ、焦らさない…で、社長…っ」
そしてゆっくり先を挿れていくが、なかなか奥にまで侵攻はしない。別に今すぐに突いてもいいのだが、それでは教育にはならない。多少の仕置きを含めねば何のための行為なのか見失ってしまいそうになる。
「や、やだぁ…しゃ、ちょ…奥まで来てよ…んっ、は、早く…」
その誘いに本来の目的を見失いかける。
こんなことをしている時はいっそ理性など捨ててしまうのが楽なのかもしれない。
ゆっくりと乱歩の腰に手を当てながら深くまで挿入っていく。肉壁に当たると直ぐに反応を示す乱歩がひくひく動く様がよく見える。
「しゃ、ちょ…ぁう…ぁあっ」
焦らす速度で進みながらも漸く奥まで全て取り込んだ乱歩は突然締め付けた。
ゆっくり呼吸を整える様に指示をしてから、ゆっくり、ゆっくり、と心に云い聞かせて頭だけを隠した状態にすると、
「……っぁあ!」
今度は勢いよく奥まで押し込んだ。
その力に耐えられなかった乱歩は支えていた両腕が崩してしまう。支えを失い身体の力が何処へ向かえばいいのかさ迷っているうちにも乱歩への突き上げは増していく。
「あっあっああっんぁっあっ」
涎が口の端しから零れていくも気にすることなく乱歩は喘ぎ続けた。何時もより甲高いその声はしっかりと自分の耳にまで届いていた。
「もう、んぁっ…へ、んたい…社長…ゃあっ」
「教育、だからな」
そうして中で出していくと、すぐに穴から液体が外に零れる。
終わってしまえば呆気なかった、という第一感想が走ってくる。
へたり、と身体を床に押し付けている乱歩を見て、可哀想だと思ってしまった。
そもそもは乱歩の仕掛けたこととは云え、最後まで終えてしまうつもりなど無かったのだ。
詫びとして…まあ、常識を弁えた人として中に出したものを掻き出してあげる。
指がまさぐる度にびくっ、と乱歩の身体は反応を見せる。そして吐息混じりにも起きていることを証明するように「うー…」と唸っている。
「常識、なんてこんな教育で何も身につかないじゃないか」
「そうだろうな」
「…これ、教育としては今一つだよね…」
失敗だとうつ伏せになりながらやや掠れた声で乱歩は文句を云っていた。
だが、俺は違った。
「これは教育として利用する手も一つかもしれないな」
「ぅえ…?」
感じてしまった色気混じりの疑問声に対していやらしい笑みを見せた。
「この次、教育する際には暫く立てなくなるまでし続ける考えもあるからな」
それを聞いてか、珍しい俺の顔の変化を見てか、乱歩は大人しくなっていった。
- Re: 文スト BL、R18有 乱歩受け中心 太中も ( No.59 )
- 日時: 2019/07/24 16:19
- 名前: 皇 翡翠
たまごかけごはん
15ぐらいの二人で料理するとかしないとか
■□■□
昔からなんだってできた。ただ、料理はからっきしだった。自殺に失敗するのと同じように失敗する。しかしその理由は見当がつく。
一つ。舌の肥えていた太宰少年はたとえ卒なく料理が出来たとしてそこそこの味にしかならないのであれば料理をする気が削がれてしまうから。
一つ。舌が肥えているとは言っても大抵のものは味の素をかければ美味しくなると信じてやまないから。
一つ。そもそも生きることに執着の持てない彼は食べるという行為自体にも執着が持てず、空腹という苦の状態から逃れるべく食という生命活動を行っているに過ぎないから。彼にとって餓死はあまり好ましくない死なのだ。
そんな彼に料理を覚えさせるのだと息巻いたのは中原少年であった。
中原は格別料理が得意な訳でも不得意な訳でもなく、そこそこの腕である。平々凡々である。美味しくもなければ不味くもないのである。太宰の言葉を借りるなら「小学生の調理実習よりかはマシ」なのである。
その中原が太宰に料理を覚えさせんとしたのには特にこれと言った理由はなかった。ただただ自分が優位に立てる分野を見つけてはしゃいだだけであったのだ。しかし、いつの間にやら「中也先生の料理教室」は中原が太宰にただ手料理を振る舞うだけの、いわば炊き出しとなってしまった。
きっかけは最初のカリキュラムであるブリの照り焼きで太宰は炭の味の素がけを作ったからだった。しょんぼりとしながら箸で炭を突く太宰を見た中原はソッと自分の作ったブリの照り焼きを差し出した。
すると太宰はみるまにいきいきしだして
「いやあ、中也の作る料理は実に平々凡々だね。美味しくもなければ不味くもない。毒にも薬にもならない全く面白みのない味だよ」
などとペラペラと舌を動かしながら器用に箸も動かしぺろりとブリの照り焼きをたいらげたのだ。
その結果、「次はもっと簡単なやつ作るぞ」とカリキュラムはどんどん難易度を落とし、その度に太宰は落第し中原の料理をたいらげた。二人は「ごちそうさまでした」と「お粗末様でした」を繰り返し、最終的に太宰は「中也、次は蟹料理が食べたい」などと注文をつけ、中原もついついうっかり「おう」などと返事をしてしまうに至ったのである。
そしてブリの照り焼きから半年が経った頃、中原は携帯端末で「蟹料理 初心者」を検索しながらハッと我に返った。これじゃあ太宰を餌付けしてるだけじゃねえか。
夕焼け色の頭を抱えながら中原は誓う。なんとしてでも太宰に食えるものを作らせよう、と。
その翌日、太宰はルンルン気分で「中也先生の料理教室」に向かった。なんと言っても今日は蟹料理がたべられるのだから!
しかし机の上に出されたのは蟹でもなければ料理でもなかった。
「………たまご」
思わずしょんぼりと呟くと中原が真剣な顔で言った。
「もう、きっと、手前が作れるのはこれだけだ」
卵を持ち、コンと机に叩いてカパッと軽い音を立てながらホカホカと炊きたてのご飯の上にのせる。
卵かけご飯だった。
なんてひもじい。僕は蟹を食べるために朝食抜いたのに。太宰は投げやりに卵を割ってホカホカご飯の上にのせた。殻がちょっとだけ入ってしまったので、無言で中原のものと交換した。
「ねえ、僕、もう料理なんて作らない。ずっと僕のために料理作ってよ」
思わず太宰は言った。言ってからプロポーズみたいだな、しかも古いドラマの、と赤面した。
「………卵がちゃんと割れるようになったらな」
と中原が返事をしたので、卵かけご飯ぐらいは作れるようにするか、と思ったのだった。
- Re: 文スト BL、R18有 乱歩受け中心 太中も ( No.60 )
- 日時: 2019/07/25 13:31
- 名前: 皇 翡翠
合言葉は「にゃん」である/太乱
「乱歩さんは猫のようですね」
「は?」
とある昼下がりの探偵社。乱歩と太宰は会議室にこもっていた。
特に意味はなく、ただ「暇だから」という理由だけで、乱歩と太宰が会議室を占領するのはよくある事だ。武装探偵社の中でも飛び抜けた頭脳を持つ二人を理解できる奴は、少なくとも探偵社には存在しない。
僅かな情報だけで全ての真実をひと目で見抜く頭脳を持つ乱歩と、全てを達観した様に人を操る頭脳に長けている太宰。
似た者同士というべきか、人並み外れた二人の言動や行動はどこか他者には理解しがたく、まるで二人の周囲だけ異空間の様だった。故に、二人の世界を理解できるのも、二人にしか出来ない事であった。
そして本日も会議室にて、特にやる事もなく暇を弄んでいた中で、唐突に太宰に云われた言葉に乱歩が顔をしかめた。
「いきなり何」
「ですから、乱歩さんは猫に似ていますね、と」
太宰がくすくすと笑う。なんとなく気に触り、乱歩が眉を寄せた。太宰がペンを取り、ホワイトボードに何かを書き込んでいく。
「理由は幾つかありまして、まず一つは気まぐれである事。二つ、他の人の様に誰かに媚びる事をしない事。三つ、他者に簡単に心を許さず誰にも御せない事。四つ…」
次々と増えていく理由とやらに、乱歩はドーナツを咥えたままげんなりとした顔をした。太宰が何を言いたいかは、なんとなく察してはいるが、面倒くさい。一通り書き終えた太宰が、にっこりと人の良さそうな笑みを浮かべて、ですから、と乱歩に語りかける。
「以上の理由から、乱歩さんは猫によく似ているかと思われます」
「うん。で、それが何?」
「うふふ、なので…ちょっとしたお遊びだと思って、」
太宰がペンを机に置いた。それから、まるで今日の天気は晴れだと呟くように自然に、何もおかしな事はないんだという様に云った。
「鳴いてもらっていいですか?」
嫌な予感が的中した。
「ね、乱歩さん。お願いします」
「…それやって僕の利益は何?」
「特に何も。ですが、いいじゃないですか。可愛い後輩の我儘だと思って」
「僕は一度もお前を可愛い後輩だとは思った事ないよ」
ぐいぐいと距離を詰めてくる太宰に乱歩が椅子に座ったまま後退する。太宰はにこにこと笑ったままだ。
「では訂正を。可愛い恋人の為に、お願いします」
わざとらしく囁くように云われ、思わず舌打ちをしそうになる。
似た者同士、惹かれあう何かがあったのか、乱歩と太宰は恋仲であった。それは確かだ。ただ、それに至るまでの経緯は曖昧で、正直覚えていないし、思い出したくもない。けれど、その関係だけはハッキリとしている。
ただ、それを理由にこうして迫られるのはおかしいと思う。乱歩はひたすらお願いしてくる太宰を横目に溜め息をひとつ零した。
太宰が人を掌で転がすように操る才能があるのは知っている。よく国木田や谷崎はその餌食にされているぐらいだ。太宰がその気になれば、探偵社全体を操る事も可能だろう。乱歩もそれを知っているから、厭な時はそうならないよう回避するようにしている。太宰の考えも見抜ける乱歩だからこそ、太宰の事を理解できるし、太宰も乱歩を理解できるのだろう。
けれど矢張り似た者同士であるわけで。
太宰が国木田達を転がすように、乱歩もこの面倒くさい恋人をからかいたくなるのだ。
「気持ち悪いにゃあ」
馬鹿にするように笑って、さらっと云われた言葉に太宰がぴたりと動きを止める。
鳴けと云ったのは太宰だ。乱歩はそれに従っただけ。然し驚く程目を丸くする太宰に、乱歩が本当にやってくれるとは思っていなかった事が手に取るように判った。
「…乱歩さんすいません、もう一回お願いします」
「にゃあ」
「あ、すいませんもう一回。今度はにゃんで」
「注文が細かくてめんどくさいにゃん」
太宰がそっと口に手を当てて俯く。何かを堪えている様な、そんな様子だ。その状態のまま太宰がそっと携帯を取り出した。
「…もう一回お願いします」
乱歩がそっと顔を反らした。
「お願いします乱歩さん、ちょっとだけ、にゃんって云うだけ」
「やだね。携帯しまえよ」
「そんな事を言わずに。ちょっとノリノリだったじゃあないですか」
「録音されるって判ってて云う奴がどこにいるのさ」
「そんな…」
「ちょ、押さないで危ないから」
無駄に必死な太宰に迫られてバランスが崩れそうになる。丁度その時、会議室の扉が開く音がした。
「すいません乱歩さん、新たな依頼が…」
書類を片手に入ってきた国木田が、二人を見て書類を床に落とした。
椅子に座った乱歩に携帯を片手に迫る太宰と、椅子から落ちないよう縮こまって掴まっている乱歩。傍から見れば、椅子に追い詰めて強姦寸前にも見える。
国木田の表情が死ぬ。太宰と乱歩が国木田の脳内を察し、あー、となんとも云えない声を上げた。それを合図に国木田が我に返る。
「な―――何をしている太宰ィ!!?」
見事としか言いようのない国木田の飛び蹴りが、太宰の顔面にめり込んだ。
- Re: 文スト BL、R18有 乱歩受け中心 太中も ( No.61 )
- 日時: 2019/10/20 15:27
- 名前: 皇 翡翠
ドラマみたいに 国乱
「乱歩さん、俺は貴方が好きです!」
真正面からそんな事を云われた。
「……だったら、時と場所を選ぼうよ」
ここは今探偵社内で皆が聞いている場所だというのに、如何して彼は堂々と告白を晒すことが出来るのだろうか。
「いや…乱歩さんが今度合コンというものに向かわれるという話を聞きましたので」
「……合…コン?」
何それ。最近は言葉を略称で表したりするからその言葉の意味を理解するのに時間が掛かるし最早理解したいと努力する気にもならなくなる。だが、目の前の堅物眼鏡男は汗をかいて此方を見続けている。
「合同コンパ。大体の呼称は男性と女性の交流の場で、主にその後として恋人を探す場であると考えるのが常であるかと」
隣で谷崎君が僕に情報を与えてくれた。
だけれど、僕がそんな判っていないものに行くなんて云った覚えは一度も無い。そう思っていると、少し離れた処で太宰がにこりと笑って手を振っている。そこで思い出した。ああ、今度太宰が食事をする人数が居ないから穴埋め役として来てくれって頼まれていた。
あれは単純に食事を自由にさせてくれるっていうから。
「……国木田君は行ってほしくないって事?」
「そりゃあ、好きな人が別の人と交流を深める事には多少は厭な気持になると思います」
「でも、僕は君と付き合っているわけでも無いんだから別に国木田君に何か云われる筋合いはないよね?」
すると、国木田君は俯いてしまった。何も反論する事が出来ないのか、そのまま口を閉ざしてしまった。
「……それに国木田君って将来における理想とか持っていたじゃない。その中に僕に告白するなんてことが刻まれているの?」
うわぁ、攻めるなあ…なんて声を小さく呟く谷崎君の事を聞かなかったことにしてあげる。
「理想は……理想ですから」
うーん、まあそうだけどね。
「では、乱歩さんは俺の何が不満ですか?俺の中の何が駄目ですか?」
今度は何を聞き出すかと思えば。
太宰を含めて周囲が口を抑えて笑いを堪えているのが見えた。第三者の立場だったらきっと僕も笑いに堪えられていなかったはずだ。
それでも国木田君は真っ直ぐにこちらを見て知いて、ちっとも冗談だなんて笑い話に出来る状態を作ってはくれなかった。
……これは逃げられない。
「僕、年下は無理」
けれど、此れさえ云ってしまえば国木田君も流石に諦めるだろう。それに目も覚ましてくれるんじゃないだろうか。僕なんか好いてるなんてきっと正気じゃない。
すると、途中で出先から戻ってきた敦君によってこの話は中断された。
「―――合コンには行くんですか?」
「合コンには年上の人もいるだろうしね。気が合えばいくらでも仲良くしたいと思っているよ」
本当はそんな事考えていないけれども。それでもこのままでは国木田君が引いてくれないだろうからそう云い切って本当に話は終えた。
実際に来てみたけれど……
矢張り太宰を含めて男性が5人。女性が5人の計10人の組み合わせで食事をする事になった。谷崎君の情報通りだ。
僕は食事をする為に来たので他の皆が女性と会話をしているけれども、そんな邪魔も手助けもしない。太宰なんて両手に花状態だった。
「えーっと、貴方が乱歩さん?」
「―――んんむっ?」
食事に夢中しているので僕は口に物が含まれたまま会話する。
「あはは、食事が好きなのかしら?」
軽く笑みを見せるとその後挨拶をしてくれた。そして彼女は普通に空いて居る隣の席に座ってきた。
如何やら有名企業のチームリーダーを担っているらしい。30歳という年齢に対して少し恥じらいながらも僕に提示してきた。
「よろしかったら乱歩さんの連絡先を教えてくれないかしら?」
とはいえ、僕はほとんど手ぶらで来ている。
「んー…電話番号とかなら今教えられるけど。でも名探偵として仕事があるからあんまり出れたりしないと思うよ」
素直に回答をした。
すると笑顔で相手も連絡先を教えてくれた。
「ありがとう」
それからも彼女はずっと隣で会話を進めてきた。趣味は、だとか。何だか自分が好きに食事を出来るからと云って聞いたから来てみたけれども、会話をされると少し疲れて体力を必要以上に消費される。年上がいいかな、とは思っていたけれど…意外と理想ってのは難しいのかもしれない。
それから取りあえず解散をする流れになって各々店の前にまで歩く。空はすっかり夜空を表し、星が綺麗に映っていた。
そして主催者が閉めの言葉を述べていた。太宰はこの後も両手の花を愛でていくので二次会に向かうらしい。
「乱歩さん…これから一緒に飲み直しませんか?」
「うーん、結構食べたからなあ」
「もしよろしければ私の家でもいいですよ。ゆっくりできるでしょうし。それに私料理が得意なので乱歩さんが好きな物を出来るだけ要望に応えることは出来ると思いますし…」
凄く押しが強い。なんだかあの時の国木田君の様に中々挫けることが無い。
けれど、別に僕は彼女に好意が無いから家に上がらせてもらうつもりは無い。
「そんなに、厭ですか?」
うん、厭だ。
なんて正直に云ってしまえればどれだけ楽か。それでも世間はオブラートという常識を備えて置けという。日本人は実にめんどくさい。国木田君なら直球で云っても別にへこたれる事は無いんだろうけど…。
手首を握られて、逃げられない様に先手を打たれてしまった。振りほどいて走ってもいいけれど、一応太宰の知り合いという面でやってきているから彼奴に迷惑はかけない方がいいのかもしれない。
なんで僕がこんな事をいちいち頭で考えなければならないのか、と苛立ちが募り始めている頃だった。
「…乱歩さん、帰りますよ」
国木田君の声が聞こえてきた。幻聴か、と疑ってしまいながらも背後を見てみると…
「乱歩さん」
もう一度名前を呼ばれた。
髪の毛が乱れて、お世辞にも格好いいとは云えない登場ではあった。
それでも彼はそんな事気にすることなく、空いている片腕を国木田君に捕まれた。このまま二人が引っ張り合ったら僕が千切れちゃうじゃないか、なんて発想も浮かびながらもそのまま動かない二人を交互に見返した。
「国木田君…何やってんの」
「何やっているの、は此方の科白ですよ。何時までも戻ってこないので心配したんですから」
戻って…なんて僕はこの後直帰する予定なんだから国木田君にこの後どう行動しようと勝手だろう。
そんな事を思いながらも国木田君の方が行動力があったのか、僕は話しかけてきた女性を置いて連れて行かれた。引っ張り合いになる事も無く、女性の手首を掴む力なんて直ぐに振りほどかれていた。国木田君のらしくも無い、けれども男らしい背中だけが僕の目の前に映っていた。
「国木田君、手…っもう、いいでしょ!」
人通りが多くなってきた辺りで、流石の僕もこんな大道で男同士で手を握っている事に抵抗があったので直ぐに振り払った。
「邪魔しに…来たの?」
「邪魔じゃないですよ。あの後女性と二人で飲んだりしてそのまま大惨事に成ったらどうするつもりだったんですか」
大惨事って…一体どういう事が起きるんだ。それに僕は男だ。何か襲われることが在ったとしても力の差では間違いなく僕が勝つ。
「でも、別に国木田君は恋人でも何でも無いんだから関係ないでしょ。お節介も度が過ぎているよ」
「……お節介、そういうものじゃないですよ。乱歩さんに告白をしたことをもう忘れたんですか?」
そこで僕が今度は国木田君の腕を掴んで路地裏に連れ込んだ。決して厭らしい意味では無い。単純にこんな人が行き交う中で告白だとか危うい言葉を並べたからだ。如何わしい関係だと思われたら絶対に困る。
僕はそのことについて怒ってやろうと思った。
けれども僕は国木田君の表情を見ては何も云えなくなってしまった。
「…………ごめん、なさい」
怒っていた。悲しんでいた。苦しんでいた。
彼の心中を考える間も無く、彼は眉間に皺を寄せて此方を見ていた。偶に怒られる時に人は険しい顔に変わる事があるけれど、それとも違って。
だからこそ、直ぐに謝らなければならないと思ってしまった。
「乱歩さんが俺を如何思っていたとしてもかまいません。けれども、こうまでしても俺が貴方を好きだという気持ちを覚えていて下さい」
「…きっと、厭がっても君は僕の事を追いかけてきそうだ」
なんだかな。
あそこまで強く離したつもりだったのに、如何して僕なんか眼に入れているんだ。君の理想が理想であるから、血迷ってしまったというのか。
「云っておくけれど、僕は君の事を何とも思っていないから」
「判っていますよ。でも、きっと振り向かせてあげますよ」
どこでそんな男前な科白を覚えてきたんだか。
夜道に居たはずなのに、彼の姿がやけに輝いて見えた。
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