大人オリジナル小説
- 飛べない少女
- 日時: 2011/06/05 15:52
- 名前: 優
〜プロローグ〜
君は言ってくれたね。
―――“いじめなんてする人が悪いんだから”
―――“あんたには、仲間がいるじゃん”
でもね・・・・・・
その言葉は、あたしを苦しめるだけ・・・・・・
いじめをする人は、自分が悪いなんてこれっぽちも思ってないんだから。
そう思っても、何も変わらないんだよ・・・・・・
そう言ったって、綺麗ごとって笑われるだけなんだよ・・・・・・
仲間なんていないよ。
隣にいる君さえも、どうせ仲間じゃないんでしょう?
だったら、どうして一緒にいてくれるの?
励ましてくれるの?期待させるの?
あたしの仲間は誰なの?どこにいるの?
その人は、あたしを救ってくれるの・・・・・・?
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- Re: 飛べない少女 ( No.23 )
- 日時: 2011/06/23 20:33
- 名前: 優
〜第11話〜
「やっぱり、あった」
そう呟いて、教室の隅の方にポツリと置いてある携帯に駆け寄った。
…麻友は、あのまま教室に置きっぱなしだった携帯を取りに来たのだ。
勿論、携帯は開いたまま。
また、あの見たくないメールを見るのか…
そういえば、菜々には少し言い過ぎたかな――…
しかし、菜々が悪いんだ、と自分に言い聞かせ、足元の携帯を拾い上げる。
そして、あんなメール1秒だって見たくない、とすぐに[電源ボタン]を押して待ち受け画面にまで戻ろうとした。
…が。
先ほどまで出ていなかったアイコンが目に入る。
[受信メール 1件]
「………」
どうせ、また同じようなメールかな。
麻友は無視して鞄にしまおうとしたが、見るとついでにさっきまでのメールも削除してしまおうと思い直し再び携帯を開いた。
しかし。
「受信BOX」の1番上に来ている名前は、「戸賀崎菜々」だった。
「…げっ」
麻友は顔を顰める。
…さっき、あんなことがあったのだ。当然の反応だろう。
「どーせ、言い訳でしょうよ…」
とりあえず、メールを開く。
――しかし、その内容は、麻友の想像とは全く異なるものだった。
『麻友へ。
今日はごめんなさい。
最後にどうしても聞いて欲しいことがあります。
麻友だって苦しいのに、心配掛けたくなくて…
今まで言えなかったけど、私もいじめを受けてました。
麻友と同じように、メールが送られてきました。
それでも、麻友がいれば頑張れる!って思ったけど…
もう無理みたい。
もう耐えられない。
麻友も、私のこと嫌いなんだもんね。
それなら、私には生きる意味がないから。
今までありがとう。
私は麻友のこと、大好きだったよ。
まだ、大好きだし、友達だと思ってます。
友達でいてくれてありがとう。
さよなら。 菜々』
さよなら。
―――さよなら………?
「…嘘」
麻友の気持ちを表す言葉は、その一言だけで充分だった。
知らぬ間に、麻友は走り出していた。
どうして?
どうして、言ってくれなかったの?
いじめの事なんて…
そんなの、全然知らなかったよ―――…
友達だと思ってくれていたのなら言ってくれてもいいじゃない。
いや。
―――結局、わかってないのは全部私の方。
友達だからこそ、言えなかったんだ。
いつも、自分の事ばかり、なんで私だけ?なんて。
信じていたのは、私もじゃない。
菜々は、味方だったのに。
いじめのこと言わなかったのも、私を思ってで。
自分の苦しみを隠して、自分第一の私を励まして。
一番苦しかったのは私じゃなくて菜々だったのに。
勝手に疑って、傷つけて。
それだって、自分のため。
菜々は、最後まで私を信じていてくれたのに。
―――全部、悪いのは菜々じゃなくて私だったんだ………
「待って……!もう少しだけ……」
屋上に出るための鍵は、やはり、開いていた。
勢い良くドアを開け放つ麻友だが、そこで、もう手遅れだと悟った。
屋上には、誰もいなかった。
それだけじゃない。
麻友の立っている入り口の辺りから5メートルほど離れたところには、この学校の指定であるローファーがきちんと揃えておいてあった。
心の中にあるのは、後悔。そして、恐怖。
麻友は非常にゆっくりとした動作で、まっすぐ屋上を歩いていく。
―――数分か。あるいは数十分だったのか。
麻友の歩みにあわせるように、時間までもがゆっくりと流れていく。
…それとも、ただそう感じるだけなのか。
どちらにしても、あと何センチかで落ちてしまうような位置に、菜々のものと全く同じ携帯が置いてあるのは明らかだった。
きっと、そこから下を覗けば―――…
しかし、麻友にはそんな勇気はなかった。
今の麻友にできるのは、ただ泣き叫ぶことだけだった。
「…菜々ぁ…っ」
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