大人オリジナル小説
- 飛べない少女
- 日時: 2011/06/05 15:52
- 名前: 優
〜プロローグ〜
君は言ってくれたね。
―――“いじめなんてする人が悪いんだから”
―――“あんたには、仲間がいるじゃん”
でもね・・・・・・
その言葉は、あたしを苦しめるだけ・・・・・・
いじめをする人は、自分が悪いなんてこれっぽちも思ってないんだから。
そう思っても、何も変わらないんだよ・・・・・・
そう言ったって、綺麗ごとって笑われるだけなんだよ・・・・・・
仲間なんていないよ。
隣にいる君さえも、どうせ仲間じゃないんでしょう?
だったら、どうして一緒にいてくれるの?
励ましてくれるの?期待させるの?
あたしの仲間は誰なの?どこにいるの?
その人は、あたしを救ってくれるの・・・・・・?
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- Re: 飛べない少女 ( No.19 )
- 日時: 2011/06/19 08:59
- 名前: 優
〜第9話〜
放課後の廊下に、自分の足音だけが響く。
開いているドアから教室を覗くと、いつかと同じように、教室の隅に菜々が立っていた。
後ろを向いているので、何をしているかまではわからないが…
何となく声を掛けずにそのまま様子を伺っていると、聴きなれたメロディーが間近に聞こえた。
それは、携帯の着信メロディーだった。
その音で、菜々が振り返る。
―――そして、その手には携帯が握られていた。
「あ、麻友〜!帰る?」
そういって、菜々は携帯を鞄にしまい、駆け寄ってくる。
「ごめんね、帰ろっ!」
そして歩き出した菜々を、麻友は呼び止めた。
「…ちょっと待ってよ!」
ゆっくりと振り返った菜々は、おだやかに
「え?何、どうしたの?」
と微笑んだ。
その笑顔が、何故かむかつく。
麻友は素早く鞄から携帯を取り出すと、先ほどのメールを開いた。
勿論、この間と同じ、知らないアドレスからのだ。
『いい加減、学校来るなょ!
みんなあんたの事嫌いなんだから』
麻友は、携帯の画面を菜々に押し付ける。
それを見た菜々は、
「またこんなメール…そんなの気にしちゃダメだよ!私は麻友のこと、嫌いだなんて思ってないから!」
と、笑ってみせる。
わかってない。
菜々は何もわかってない。
「そんなことを言ってるんじゃない!菜々だって、気付いてるでしょう?
このメール来たの、ついさっきなんだよ!着メロに気付いて振り返ったのは菜々じゃない!
その時、菜々携帯持ってたよね?こないだもそうだった!
このメアドからメールが来た時、菜々が携帯持ってたの知ってるんだよ!」
「え…何言ってんの、麻友。私がそんなことするわけ…」
しかし、麻友は菜々の言葉を遮るように携帯を床に投げつけた。
鈍い音がして、開いたままの携帯が地面に落ちる。
「大体!シャーペンとったの菜々なんじゃないの!?じゃなきゃあんなトコから出てこないよ!
メールだって、同じようなことが2回もあって、そんなの疑うしかないじゃん!ひどいよ、信じてたのにっ!」
知らぬ間に、目から涙が溢れ出す。
一体、自分が何を根拠にそう言ってるのかさえ、もうわからない。
「違う!私じゃない!ひどいのはそっちじゃん!勝手に疑って…私はそんなことしてないのにっ!
そんくらい、信じてたなら…友達ならわかるでしょ!?大体、わたしも…」
もう、聞きたくない。
麻友のそんな気持ちは、言葉となって菜々にぶつかっていく。
「うるさいっ!菜々なんか友達じゃない!大っ嫌い!」
麻友は、教室から飛び出す。
「待って!」
背後から菜々の声がしたが、振り返らない。
菜々は追いかけては来なかった。
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