大人オリジナル小説
- 僕の物語
- 日時: 2013/01/30 20:32
- 名前: Q ◆eN9KdBg3KY
初めまして。
ここで小説を書かせていただくのは初めてです。
至らない点もあると思いますがよろしくお願いします。
感想をもらったら滅茶苦茶嬉しいのでできれば感想をよろしくお願いします・・・。
批評でもいいです。
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- Re: 僕の物語―第2章― ( No.7 )
- 日時: 2013/02/02 18:17
- 名前: Q ◆eN9KdBg3KY
7月、学校に何本も植えてあるクヌギの木からは、何匹もの蝉の鳴き声が聞こえ、学校中にこだましているようだった。加えて、この暑さ。
クラスの全員が、眉を寄せている。
僕らの担任の眉をいつも寄せてイライラしている上野先生も、いつも以上に眉を寄せ、イライラしている。
皆もそれが分かっているのか、「あつーい」や「だるーい」などの声を出さないよう気を付けている。
もしそのようなことを言うようであれば、すぐに上野先生が椅子から立たせて、粘っこい嫌味を言ってくるのだ。
「…じゃあこの問題を、桜井。解きなさい」
「はい」
始まった。
上野先生はいつもイライラしていてそれが発散できないと、桜木健太に難しい問題を解くように言うのだ。
それは、健常者である僕たちでさえ難しく、いつも精一杯授業についてきている桜井では解けないような問題だ。
クラスの皆も、全員そのことが分かっているので、男子は小声でケラケラ笑い、女子は苦笑いしつつも、どこか楽しんでいる。
これも、いつも上野先生が桜井健太を指す理由だ。皆が桜井を笑うことで、自分がさも皆を笑わしたような優越感を得るのだ。
僕はこの上野先生が嫌いだった。
上野先生が桜井を指してから5分ほど経過した、桜井はずっと黒板とにらめっこをしている。時々「うーん…」といった声も聞こえた。
「あー、もういい桜井。自分の席に帰りなさい!」
上野先生が怒鳴り声を上げた。
「はい」
桜井は少しビクビクしながら自分の席に戻った。
「まったく、こんな簡単な問題もできないなんて…。君はちゃんと授業を聞いているのか?」
嘘だ。僕も、一応考えてみたけど、半分までしかわからなかった。それはもしかしたら、僕の頭の所為なのかもしれないが。
「すみません…」
桜井は、本当に申し訳なさそうに謝る。しかしそれをやると、サディストな上野先生は、また優越感に浸るのだ。
早くこんな授業終わればいいと思った直後、チャイムが鳴った。
「さっきの上野、超怖かったなー。滅茶苦茶イライラしてたもんな」
休み時間になり、上野先生が教室から出て言った途端、片瀬は僕に近づいてきてそう言った。
「そうだね。僕も嫌味を言われるんじゃないかって冷や冷やしたよ」
「ああ、俺もだ」
これは、本当の事だった。クラスの皆の前で立たされて、嫌味を言われるというのは凄く恥ずかしい事だ。ましてや、好きな女の子のいる前では。
「だけどさ」
片瀬はいつも、確信めいたことを言おうとするとに人差し指を立てながら喋る。それが格好いいと思っているのだ。だけど、正直僕にはそうは思えなかった。
「あいつ、桜井も馬鹿だよな。あんな問題も解けないだなんて」
「え?」
こいつ…いや、片瀬は何を言っているのだろうか?
「え?って何だよ」
「いや、片瀬はあの問題が解けたのかと思ってさ。僕は、半分までしかわからなかった」
「いや、まぁ俺も半分までだったけどさ…。普通は、少しは解けるもんだろう?だけど桜井は、少しもチョークを黒板に付けなかったんだぜ?馬鹿だよな」
何故だろうか?
何故、桜井にそこまで求めるのだろうか。
例え桜井が少し黒板にチョークを付けたところで、君に何か利益はあるのかい?
そう、問いただしたくなった。
だが、桜井が少し黒板にチョークを付けても、今度は「桜井の奴、半分も解けてなかったぜ?馬鹿だよな」と言うのだろう。
「うん」
こんなことを思っても、絶対に口にしてはいけない。
言ってしまったら最後。なにもかもがバレてしまう。それだけは嫌だ。
だからまた僕は言った。
「そうかもしれないね」
「だろー?」
片瀬が首を頷かせながら言った。
僕は今日、たった今、片瀬が嫌いになってしまった。
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