大人オリジナル小説

白楼雪短編集(R18BL)
日時: 2022/03/23 02:43
名前: 白楼雪


私の気紛れゆっくり更新短編集です。

最近長編が多かったので、短編を書こうかなと思いました。
遅筆ながら徒然なるままに書いていきます。

色の濃い短編となると思います。

上手く書いていければ、いずれ官能の短編集も書き始めるかもしれません。

それでは始めます。

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Re: 白楼雪短編集(R18BL) ( No.8 )
日時: 2022/06/07 23:14
名前: 白楼雪

 ※※※

矢崎が手慣れた様で取ったのは高層階のツインルームだった。
高層の為、周辺の建物も気にならない。それでいて男二人で泊まっても違和感のない部屋という、先輩である彼の手腕には呆れと尊敬の交ざりあう溜め息が溢れそうな気持ちにさせられるものだ。
「何か飲むか?といっても、ミネラルウォーターかドリップコーヒーか。ろくな物がないな」
紺のスーツの上着を脱ぎ片側のベットに放り置くと、矢崎は腰を屈め小型冷蔵庫を開け問い掛ける。
そんな彼の背を眺めながら、藤途も矢崎の上着の置かれていないベットに、自身の濃紺のスーツの上着を畳み置き、深緑のネクタイを片手の指で緩めた。
「ミネラルウォーター、ください」
ベットに腰を下ろし、矢崎の背に声を掛けると、彼はミネラルウォーターのペットボトルを二本取り、冷蔵庫を閉めた。
「ほれ、とりあえず飲め。結構冷えてるぞ」
矢崎は人好きのする笑顔で藤途にペットボトルを一本差し出すと、当たり前の様に対面のベットに座る。
ツインのベットというのは寝所自体は離れているのだが、いざ対面すると思いの外距離が近い。
今、矢崎が俺の手を掴み引き寄せようとすれば、簡単に抱き寄せられる事だろう。
つまりは、この距離感がとても危うく、逆に藤途が目の前の世話好きの先輩を押し倒す事も簡単に出来てしまうという事だ。
「先輩は、随分と無防備ですね」
気を落ち着かせようとミネラルウォーターのボトルの蓋を開け、冷えた水を喉に流す。
数口程飲み喉を潤した藤途の一声は、矢崎に呆れた言葉だった。
だが、矢崎が無防備というのは、俺の勘違いだったらしい。
藤途がペットボトルをベットに付属したスタンドテーブルに置くと、不意に矢崎が藤途との距離を詰める。
「俺が無防備?俺から見れば、何の疑いもなく此処まで着いてきたお前の方が、ずっと無防備だと思うぞ」
互いの唇が近い。吐息の掛かる距離というのはこういうものを言うのだろうか。
男同士、口づけを重ね合いそうな距離だと言うのに、何故嫌悪ではなく心音が甘くざわめくのか。
やはり俺には、同性との情事や恋愛に抵抗がないという事なのかもしれない。
悲しいような、納得してしまうような不思議な心境に落ちている藤途の様子に、矢崎が苦笑を溢した。
「抵抗しないのか?それとも、このまま続けてやろうか」
藤途の脇腹から背に手を這わせ、抱き引き寄せられる体勢になりながら、それでも何故か藤途に抵抗の意思はなかった。
このまま矢崎に身を任せれば、今の藤途の悩みである同性への恋慕の是非が解るのだろうか。
そしてその理由も解決策も見つかるのかもしれない。
「良いですよ。俺、先輩になら抱かれても良い気がしているんです」
唇が触れそうな距離のまま挑発的な声音で告げると、藤途から矢崎の唇に淡く口づけを重ねた。

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