大人オリジナル小説
- 白楼雪短編集(R18BL)
- 日時: 2022/03/23 02:43
- 名前: 白楼雪
私の気紛れゆっくり更新短編集です。
最近長編が多かったので、短編を書こうかなと思いました。
遅筆ながら徒然なるままに書いていきます。
色の濃い短編となると思います。
上手く書いていければ、いずれ官能の短編集も書き始めるかもしれません。
それでは始めます。
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- Re: 白楼雪短編集(R18BL) ( No.7 )
- 日時: 2022/05/23 23:43
- 名前: 白楼雪
「え?いや、待ってください先輩。そこ、ホテルじゃないですか」
矢崎の見せる画面に動揺した藤途が目の前の彼に小声で追求すると、矢崎が藤途の額を指先で軽く弾く。
「意識してんじゃねぇよ。此所だと確り話も出来ないだろうが。それともあれか?お前はうっかり会社の他のやつがこの店に入ってきて、話を聞かれても気にしないのか?」
スマホを手元にスクロールしながら話す矢崎に、俺は言葉が見つからずにいた。
彼の言う通り、ここの喫茶店は藤途達が勤めている会社から近く、同じ会社のコーヒー好きの社員が店に来たとしても可笑しくはないだろう。
ここ数年。社会は同性愛への理解も高まり、矢崎や俺自身がそう思われたところで会社から解雇等をされる可能性は低いが、人の口に戸は立てられない。誰かが社内で話せば、俺も彼も居心地が悪くなる可能性は高い。
「わかりました。行きましょう」
藤途が答えると矢崎も喫茶店の伝票を指で這わせ、角テーブルから掬い取る。
その動作に俺が慌てて伝票を渡して貰おうとするが、矢崎はそれを軽くあしらうように一足前を歩き喫茶店のレジ前にて早々に支払いを終えてしまった。
「ありがとうございました。またのご来店をお待ちしております」
レジを担当した店員に見送られ、矢崎と藤途は店を出た。
「相変わらず上手いコーヒーだったな」
店を出て藤途の前を歩く彼は上半身を解すように軽く伸びをして吐息を吐く。
「そのコーヒー代。俺の分はあとでホテルで渡しますね」
呆れたように矢崎の背を眺め歩いていると、彼がホテルへの道を歩きながら聴こえない振りをした。
その為藤途は少し歩調を速め、矢崎の隣に並び歩き澄ました表情をした。
「わかったよ。後でな?」
隣を歩かれれば流石に無視は出来ない。
諦めたように彼は苦笑した。
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