大人オリジナル小説

白楼雪短編集(R18BL)
日時: 2022/03/23 02:43
名前: 白楼雪


私の気紛れゆっくり更新短編集です。

最近長編が多かったので、短編を書こうかなと思いました。
遅筆ながら徒然なるままに書いていきます。

色の濃い短編となると思います。

上手く書いていければ、いずれ官能の短編集も書き始めるかもしれません。

それでは始めます。

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Re: 白楼雪短編集(R18BL) ( No.2 )
日時: 2022/03/30 05:31
名前: 白楼雪

ビールを注いだグラスを傍らに、慣れた手付きでサイト内のとある小部屋にログインすると、藤途はスマホの時刻を確認した。
時刻は午後十時数分前。約束の時刻は午後十時なので、急用でもなければそろそろ彼も現れる頃だろう。
そんな事を思いながらスマホで電子書籍を片手間に観ていると、数分も待たずに一人の人物が小部屋にログインしてきた。
藤途が今利用しているネット内の小部屋は所謂鍵付きと呼ばれる部屋で、予めパスワードを登録して置く事により決まった人物だけが利用可能な上、その空間内の事は不特定多数の者に見られる心配のない、一種の簡易な完全個室となるのだ。
正確に言うのならばやはりサイト内の部屋なだけあり、規約やそれについての罰則等も有りはするのだが、パスワードを必要としない部屋に比べれば規約は少ないので、人目の気になる会話を楽しむならば鍵付きの部屋は実に使い勝手が良い。
『こんばんは。水色さん』
ログインしてきた水色という人物に、俺はメッセージを送る。
すると空かさず返事が返ってきた。
『こんばんは、紫さん。少し待たせた?』
紫と言うのは、藤途のハンドルネームであり、このサイトに登録した際から使い始めた名前だった。
ネットと言うものは便利な反面、とても危険な物でもある。
その為、個人情報は必要最低限残さない事が大切で、名前もその一つと言えるだろう。
偽名と言うと聞こえは悪いが、現代では電子の世界も広く深い。そこで推奨されている物でもあるのだから、それも時代の流れと思い受け入れていくべき事柄である。
『いや、俺も入ったばかりでしたから。それより、明後日の場所と時間、決めてしまいましょう』
藤途の送ったこのメッセージは、数日前に水色と話したとある話に関係している。
水色という人物と初めて会話をしたのは、藤途がこのサイトを知って一週間程過ぎた頃だった。
このサイトは大人向けの、その中でも男性同士の交遊出会いサイトであり、俺自身の悩みを考えるには最適なサイトだと初めは考えていた。しかしその思惑は数日もせず外れていたと気づく。
此処のサイトの意図と利用者の事を考えれば、自身が同じ男性が好きなのかも未だ分からず情事をする気持ちもない藤途は、常連の利用者に煙たがられる事も多くなる。
純粋に男性同士の恋愛や情事を好む者に、悪意がなかったとは言え『俺には分かりません』等と突き放すような言葉を告げてしまった事も確かにあった。
その結果他の利用者との会話に悩み始めていた時、声を掛けてくれたのが水色だった。
水色はここのサイト歴半年程との事だったがとても面倒見が良い印象で、鍵のない部屋でも他の利用者にも穏和に会話を重ねて見えたものだ。
そんな優しい人物は俺とも親しげに話し掛けてくれて、色々な事を教えてくれた。
そうして仲良くなって暫くすると、ある日俺は水色に鍵付きの部屋に誘われたのだ。

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