大人オリジナル小説

白楼雪短編集(R18BL)
日時: 2022/03/23 02:43
名前: 白楼雪


私の気紛れゆっくり更新短編集です。

最近長編が多かったので、短編を書こうかなと思いました。
遅筆ながら徒然なるままに書いていきます。

色の濃い短編となると思います。

上手く書いていければ、いずれ官能の短編集も書き始めるかもしれません。

それでは始めます。

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Re: 白楼雪短編集(R18BL) ( No.18 )
日時: 2022/09/29 22:36
名前: 白楼雪

 ※※※

不慣れな事は常に、心身の負荷が大きいものだ。
「先輩、加減ってものを知らないんですか」
疲労の色が、藤途の声に滲み流れる。
同性と初めて情事を重ねた俺は、皺の寄るベットに俯せで寝転がり不服な表情を枕で隠す。
矢崎がホテルを調べていた時は訝しさを懐いたものだが、今になってみれば男二人で泊まれる部屋を取って貰った事に助かった気がした。
異性との情事というものも大概疲労感があるものだが、記憶を辿ってもこれ程までの疲労は未経験だろう。
「加減したつもりなんだがな。ちゃんと慣らしてやっただろう」
苦笑混じりに聞こえた彼の声は隣ではなく、ベット横の備え付け机の隣。背もたれ付きの椅子に座る矢崎のものだった。
矢崎も先程まで俺と快楽を味わい合ったというのに、方やベットにて倦怠感に沈み。方や白いバスローブに身を包み、飄々と椅子に背を預けているのだ。
疲れた。腰が痛い。眠い。けれどシャワーで身体を浄めたい。
藤途がその思考に渦巻いていると、矢崎は冷蔵庫から出したミネラルウォーターを二本片手に、ベットの端に座り直した。
「ほら、冷たいものでも飲めば、少しは楽になるぞ」
愉しそうな声で告げる矢崎は、促す意図で俺の頬にミネラルウォーターのボトルを触れさせる。
柔らかな材質のプラスチック越しに、冷えた水の感覚が藤途の熱を奪っていく。
「ありがとうございます。序でにボトルの蓋も開けてくれませんか。俺、先輩のおかげで疲労困憊なんで」
満悦気味な先輩に僅かな不満を感じた俺は、せめてもの返しとして不満を滲ませた声で願い事を発した。
矢崎を受け入れたのは、確かに藤途自身ではある。互いに合意の上の情事だという事も自覚してはいた。
しかしそれでも、疲労と腰痛。そして瞳に映る無駄に頼りになる彼に、少しばかり甘えたい気持ちもあったのだ。
その事から俺は瞳を細め、不満を露に悪態をついたのである。
「仕方ない後輩だな。ほら、溢すなよ」
その思いを察しているかは分からないが、矢崎は微笑みボトルの蓋を緩め外した。
手渡そうとする矢崎に答えるため、俺は怠い身を起こしてベットに座り、ボトルを受け取る。
「はぁ…生き返る」
ボトルに口を付け僅かに傾けると、熱の籠った口内から舌に。そして喉から胃へと冷たく心地好い水分の染みる感覚に安堵の吐息を溢した。
心地好さに瞳を細め一言溢す俺に、矢崎は小さな笑い声を発した。
その声音に気が付き藤途が睨むと、彼は片手で口元を隠し誤魔化してみせる。
後に身を動かせる程度に回復した後輩と、労り不満を受け流す先輩は、共に一夜を過ごした。

fin

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