大人オリジナル小説

瑠璃色の菖蒲(合作r18BL短編集)
日時: 2022/04/25 23:12
名前: 白楼雪+ゆうりん@ベルトルトは神

 ゆうりん@ベルトルトは神さんとの合作BL短編集です。
 R18有の合作は初なのですが、よろしければ温かい心で見守ってください。

 一応一本目は私、白楼が務めさせて戴きます。

※ ご意見・ご感想等は、雑談の方にある私のトピにお願いします。
  荒らし、乗っ取りはやめてください。
  その他「雑談したい」「合作したい」「意見交換してみたい」等も、
  雑談の方に来てもらえると助かります。

 それでは亀更新ながら始めさせて戴きます。


※ 2019/8/29  閲覧数1000突破しました。
         いつも合作短編集『瑠璃色の菖蒲』を読んで戴きありがとうございます。
         これからもゆっくり頑張りますので、よろしくお願いします。

※ 2019/11/17 閲覧数1500突破しました。
         今年中には三本目を終えたいと思ってはいるので、応援していて下さい。
         なお、終えたいという気持ちと、終わる事は別です(苦笑)頑張りはします。

※ 2022/4/25  閲覧数7000突破しました。
         三年過ぎた今も読んで戴いている。
         その事に感謝しております。
         これからも新たな物語を綴り続けます。頑張るぞ!

Page:1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51 52 53 54 55 56 57



Re: 瑠璃色の菖蒲(合作BL短編集) ( No.23 )
日時: 2019/06/01 02:03
名前: 白楼雪



   *****


薄暗い室内。アナログ時計が秒針を刻む音。カーテンの隙間を縫うようにこぼれ落ちる僅かな陽光。
何時もと変わらない静かな朝だった。
「………ん、………朝…か」
スマホから流れるアラーム音に、片瀬が朧気な意識を取り戻す。
時計を見れば朝の八時。今日は遅番なので、もう少しゆっくり寝ても良いだろう。
昨夜は鷲見と身体を重ねた事で、身体には疲労が残っていた。
「……あれ?…鷲見、さ…」
そう、何時もと変わらない静かな朝、一人きりの寝室にベッド。
鷲見の姿は見当たらず、片瀬の手のひらがベッドのシーツに触れる。
温もりは片瀬の寝ていた場のみ。鷲見の眠っていた辺りに温もりはなく、シーツはひんやりと冷めていた。
まさか、昨夜の事は夢だったのだろうか?
本当に自分は欲求不満で、身体をもてあまし、あんな妄想に更けていたというのだろうか。
確かに、偶然深夜に外を歩き、容姿がそれなりに整った大男を拾い、怪我の手当てをしてやる。そんな出来すぎたドラマのような事が、容易く起きるわけもない。
それこそ夢幻と言われても不思議はないだろう。
「そうか、そうだよな…」
無意識に自身ががっかりしている事など、片瀬は気づかずにリビングに歩を進めた。
薄型のテレビに、硝子製のテーブル。二人がけソファーに黒のラグマットと、いかにも男性らしく、それでいて片付いたリビング。
重たい身体を引きずるよう片瀬がソファーへと距離を詰めたその時、傍らにあった小さなゴミ箱が右足の爪先に触れた。
こんな疲れた朝は、そんな些細な事も煩わしい。
ゴミ箱を隅に寄せようと縁を掴んだその時、予期せぬものを見つけた。
血に汚れた包帯とガーゼ。
瞳に驚きの色を浮かべ、片瀬は寝室に急ぐ。
「夢…、じゃ、なかった」
寝室のテーブルには昨夜置いておいた薬箱が、蓋を開けていた。
新品の包帯も二つ程無くなっており、昨夜渡した薬もない。
夢でも幻でもなかった。その事が片瀬の腰から力を奪い、片瀬はその場に座り込んだ。
へたりこんだベッドの傍ら、小さな紙切れが片瀬の指先に触れた。
『世話になった』
たった一行の簡素な言葉。
だが、片瀬にはそれだけで充分だった。
「幻想みたいな奴だったな」
ぽつり呟き、苦笑を溢す。
寂しさは、ないわけではない。でもきっと、これで良かったのだろう。
たった一夜の幻想の様な時。しかし、確かにあった一時だった。
いつか、どこかであのコートの男を見かける時があるならば、その時はどうか怪我をせず健康でいてほしい。




Fin

Page:1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51 52 53 54 55 56 57