大人オリジナル小説

ケモナーズ・メディスン ~ 獣人界の獣医師 ~
日時: 2017/01/25 13:17
名前: アスペル亀
参照: http://ncode.syosetu.com/n0674do/

犬科、猫科、ウサギ科、etc...
多種多様な獣人たちが暮らす現代社会を舞台にした医療小説です。
獣人の世界で活躍する人間の獣医師が診る、症例と獣人生の物語。

動物病院はもちろん、保健所での安楽死や食肉処理施設の屠殺解体などの社会のタブーも題材にしています。
ファンタジー世界ではありますが、内容はできる限り現実を投影させています。


*他サイトにて投稿中だった作品の中から、特に反響が多かったエピソードをピックアップしています。
ケモナー好きな絵師様、ガチで募集中です。

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Re: ケモナーズ・メディスン ~ 獣人界の獣医師 ~ ( No.15 )
日時: 2017/01/25 12:59
名前: アスペル亀
参照: http://ncode.syosetu.com/n0674do/

人気のない真夜中の埠頭に、一隻の船が着岸する。
大勢の少年少女の獣人たちが、詰め込まれていた。

 世界各地から誘拐された者もいれば、売買目的で闇のブリーダーによって生産された者もいる。

「今回はコーギー属とマラミュート属の仔犬が入ってるらしいぜ。ネコ科はどうか分からんが、希少なAB型の血を持つ血統が手に入ったって噂だ。あんたんとこの供血猫にどうだい?」
 札束の入った巨大なケースを片手に持つアランが院長に言う。

「AB型じゃ需要がねぇーよ。必要になったら寄こしてくれ」

 埠頭の錆びれた倉庫の中、アランを筆頭に数人のブッチリーノ・ファミリーのメンバーが黒服にサングラスの格好で取引を待つ。その中に、院長とロンも立たされていた。

 平然と構える院長を他所に、ロンはこれから起こる柴組一派の襲撃を思い、緊張で身構えていた。

 カイは配下の組員を引き連れ、来るその時を待ち、拳銃の安全装置を解除する。

 獣身売買の現場を押さえ、ファミリー側の構成員を皆殺にし、ブッチリーノへの強請りへと持っていく孝作であった。

 これが成功すれば、柴組連合が圧倒的な有利に立てる。
甲斐・土佐組連合の親子盃は確実となり、秋田組を凌いで組織を牛耳ることができる。
失敗は許されない、獣人生最大の賭けであった。

 着いた船から、北の王国の最大マフィア組織、シベリアン・ファミリーの幹部が姿を現す。
ハスキー属の銀色の被毛を海風に棚引かせた青い瞳が、一切の情には応じない構えを見せ付ける。

「約束の品だ。金は?」

 アランが静かにケースを置き、中身を開けて見せる。

「よし、いいだろう。あと今回の品の中に、キツネ族の少女が混じっている。処理はそっちでしてくれ。サファイア色の被毛だから、毛皮くらいは高くつくはずだ」

 アランのケースを受け取り、船から手枷と首輪に、チェーンリードで繋がれた少年少女の獣人たちが降ろされていった。

 カイは、息を潜めながらスマフォのシャッターを回す。画像のデータは、その場で柴組本部へと送信していった。

これで決まった!
俺たちの勝利は確実だ!
後は、この場に居る獣人どもを皆殺しに・・・

 カイのスマフォに突然着信が入る。
會長からだった。

 カイは慌てて応答を押す。
マメシバ属の長老らしい、落ち着いた高めの声が聞こえてきた。

「カイよぉ。お前ぇ、今、一体何をしてんだ?」

 カイは返答に困った。會長の言っている意味が分からなかった。

「ウチは、ブッチリーノ・ファミリーと今後も共存の方向で合意したんだ。それなのにお前ぇって奴は、何をこんな分けの分からない画像を送ってきやがる?」

 カイは、身震いを抑えきれない声で返答する。
「あなたからの・・・ご命令でしょう・・・?」

「何言ってんだ?お前ぇ、秋田組から連絡受けてねぇんか?あいつらは、お前ぇみてぇな好戦的な立場を他所に、きちっとブッチリーノ・ファミリーと話つけてきたんだぜ?俺は奴等に盃をやる予定だ。組織の存続のためにも、柴犬種の存続のためにも、お前ぇら闘犬種は、用済みだ」

 事の事態を悟ったカイの目に、涙が溢れ出る。

 会長は、自分らと同じくして、秋田組も動かしていた。
それで最終的に有利になった方を取ったのだった。

この前言っていた“野犬”というのは、秋田組のことを暗に仄めかしていたことだったのか!

 今となっては、自分らがその野犬に貶められてしまっている。

この場、この状況で、俺は・・・

「誰だテメェら!親分!こいつら柴組の連中です!銃を構えてやがります!下がってください!」

 ブッチリーノ側の獣人が、一斉にマシンガンを取り出す。
全ては、悟られていた。

 手も足も出ないカイの目の前で、全ての部下は射殺された。
甲斐属、土佐属の男たちの死体群が出来上がる。

 事態を飲み込めたロンも、涙を止められなかった。
しかし、感情を抑えるしかなかった。
取り押さえられるカイを見て、今にもふち切れそうな理性の中、ただ一人平然と構える人間属の男の姿を、心の拠り所にしていた。

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