大人オリジナル小説

ケモナーズ・メディスン ~ 獣人界の獣医師 ~
日時: 2017/01/25 13:17
名前: アスペル亀
参照: http://ncode.syosetu.com/n0674do/

犬科、猫科、ウサギ科、etc...
多種多様な獣人たちが暮らす現代社会を舞台にした医療小説です。
獣人の世界で活躍する人間の獣医師が診る、症例と獣人生の物語。

動物病院はもちろん、保健所での安楽死や食肉処理施設の屠殺解体などの社会のタブーも題材にしています。
ファンタジー世界ではありますが、内容はできる限り現実を投影させています。


*他サイトにて投稿中だった作品の中から、特に反響が多かったエピソードをピックアップしています。
ケモナー好きな絵師様、ガチで募集中です。

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Re: ケモナーズ・メディスン ~ 獣人界の獣医師 ~ ( No.23 )
日時: 2017/01/25 13:10
名前: アスペル亀
参照: http://ncode.syosetu.com/n0674do/

獣人畜棟にいるジュンコの前のシンクの上には、数分前に屠殺されたばかりのウシ科畜獣女たちの頭部が並んでいた。

 彼女たちの頬は、まだ仄かな桃色を呈している。
瞳は光沢が消えているが、流れる涙の分泌は続き、物言えぬ姿に変えられた表情を濡らす。
それぞれの頭部の後ろには、切り落とされた手足と乳房、背割りをされた胴体、取り出された消化器、生殖器、泌尿器等の内臓が陳列する。
見事なまでに”解体”された美獣女たちが置かれた空間に、彼女たちの体温が湯気となって空中へ飛散してゆく。

 それぞれのパーツ個体が、別のパーツと混同されないように、すべてに個体識別番号トレーサビリティが充てられていた。
その番号が掛かれた札が、バラバラとなった彼女たちの今の”名前”だった。



 見方によれば、とても残酷なことをやっているかもしれないが、これは社会に必要なことだった。

 屠殺現場は、その性質故、同和地区問題などの差別的な印象を持たれる。
故にここで働く従業員には、子供が親の仕事でイジメにあったりすることを恐れ、近所には隠して生活している者もいた。
しかし、こういう仕事を引き受ける者も、存在しなければならない世の中である。

 ジュンコは、そのことを良く理解していた。
これから行うBSEの異常プリオン検出の為の延髄摘出も、社会に必要だから行う仕事だ。

「ただいま来ました!お頼み事とは何ですか!」
 レミルが息を切らせてジュンコのもとへ到着した。
ジュンコは静かに腕時計を見て言う。
「あ〜あ〜、2秒遅刻だ・・・・それにタバコくせぇし・・・・」
「いや、姐さんだって吸ってるじゃないですか!?それに一生懸命来ました!なんでもしますんで、どうかご勘弁を!」

 汗だくで必死な表情のレミルに、ジュンコは突然目を合わせ、厚い唇を悩ましく動かし、囁きかけるように話し出した。
「あ、そう?・・・・じゃあ、お前に・・・・お前だけに・・・・教えてあげるよ・・・・二人っきりだもんな・・・・」
「え!??」
 レミルがキョどる。
30超え童貞犬の彼には、ちょっとした異性の仕草でも、魔法にかかったような状態に陥る。
彼はジュンコにとって、何より便利でお気に入りの玩具であった。
「俺でよければ、何でもします!」
「やった・・・」
 ジュンコは手前のウシ科獣人の頭を逆さにした。
その獣人の脳幹部が顕になった。
そこから見える一つの部位を指さす。

「延髄の採取方法だ。BSEのプリオンがあるかもしんねぇから、アタシは触りたくねぇ。だからお前にやり方教える。よろしくな!」

 レミルはすぐに自分の単純さを後悔した。

ああ〜、そういうことですか・・・
まぁ、そりゃそうですよね〜・・・
僕みたいな童貞犬が、貴女のような美女から好かれるなんて、有り得ちゃいけないことっすからね・・・

・・・というか
 レミルは、あることに気づいた。

ジュンコ技師長って、やっぱり普段ははっきりとしゃべれるんだ・・・

「よし、アタシのしゃべる通りに動きな。そうすりゃ延髄とれっからよ」
ジュンコは普段の”溜めた様な話し方”をしていない。
 一刻も早く次の用事に取り掛かりたかったのだ。

「いいか?一回で覚えろよ!まずは延髄を包む硬膜を指で破って・・・」

 ジュンコの指示どおりにレミルは動く。
第四脳室、小脳から伸びる延髄には顔面の各部位へと連絡する神経が分枝している。
レミルの指がそれらを刺激し、獣女の唇、頬、耳介、眼瞼が、まるで生き返ったかのようにピクピク痙攣する。
肉体は、脳の信号が動かす機械であることが認識される。
それなら、彼女の脳は、今、どういう思いを発しているのだろう?

 レミルの脳に、さっき見ていた連れられるホルスタイン属の畜獣女たちが浮かび上がる。
今触っているこのコも、とても美人だ。スタイルも抜群だっただろう。

もし、こんな運命に生まれていなくて、普通に街で出会っていたら、きっと恋に落ちたにちがいない・・・
俺は、今、そんな彼女の頭の中を・・・・

「よし、それでいい。じゃあもう、後はできるな?残りも任せた。アタシは用事があるから、頼んだぜ」
 ジュンコはその場から立ち去った。
一人残されたレミルは、考えることをやめ、ひたすらに作業を進める。

仕方ねぇよな・・・
これも、必要なんだから・・・・

 レミルは作業を続けながら、タバコを取り出し火を付けた。
健康に害であることは分かっていたが、止める動機が得られないまま、未だ禁煙は成功していない。

どうせ生涯独身だろう。
親より長生きできりゃあ、それでいいや・・・

 陳列した畜獣女達の顔が、とても色っぽく見えてしまっていた。

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