大人オリジナル小説

ケモナーズ・メディスン ~ 獣人界の獣医師 ~
日時: 2017/01/25 13:17
名前: アスペル亀
参照: http://ncode.syosetu.com/n0674do/

犬科、猫科、ウサギ科、etc...
多種多様な獣人たちが暮らす現代社会を舞台にした医療小説です。
獣人の世界で活躍する人間の獣医師が診る、症例と獣人生の物語。

動物病院はもちろん、保健所での安楽死や食肉処理施設の屠殺解体などの社会のタブーも題材にしています。
ファンタジー世界ではありますが、内容はできる限り現実を投影させています。


*他サイトにて投稿中だった作品の中から、特に反響が多かったエピソードをピックアップしています。
ケモナー好きな絵師様、ガチで募集中です。

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Re: ケモナーズ・メディスン ~ 獣人界の獣医師 ~ ( No.13 )
日時: 2017/01/25 12:58
名前: アスペル亀
参照: http://ncode.syosetu.com/n0674do/

「あんたらが新しい先生か?どうだね?ワシのコレクションは?美しいだろう?」

 ドン・ブッチリーノは、”面談”にやってきた院長とロンを自室へと誘う。

 部屋一面に、おそらく全て仔犬だろう、何も衣類を身に着けていない何種類ものイヌ科の少年達が立ち並んでいた。

 ロンは、彼らが全く微動せずに固まっていることに直ぐに気づいた。

 全員、生きたまま変えられた”剥製”であった。

 ロンが恐怖で萎縮する。

 中央のテーブルにブッチリーノが座った。

 足元にはサファイア色の被毛をしたメイド姿の美少女が、横座り(女の子座り)をしていた。
頸には首輪がつけられている。ブッチリーノはチェーンリードを短く握った。

「この子は、今のワシのメイドでクーと言うんだ。いつもワシの傍に置いている。気にせんでくれよ」

 ブッチリーノがチェーンリードを揺らした。

 クーは、長いまつ毛で大きく見える瞳の視線を終始落としたまま、ブッチリーノの鼠蹊部へと顔を近づけた。

 ズボンのジッパーが静かに開かれる音の後、クーは頭部を前後に動かす。
陰圧で唾液と口唇が弾ける音が響く。

 部屋中がブッチリーノの膿皮症と包皮膿症の臭いで包まれ、ロンは思わず嗚咽した。
さらに、クーがよく見たら美少女ではなく、いわゆる男の娘であったことに、身の震えを覚えた。

 ロンのドン引きを他所に、ブッチリーノはクーに”ご奉仕”を続けさせながら言う。

「あんたらには、今日からこのワシの行動すべてに付き添ってもらう。因みにあんたらで三番目の主治医だ。まぁ、よろしく頼む」

 イタグレ属の男が巨大なバケットを持ってきて、テーブルに置いた。
イヌ科の獣人と思われる男が、その中に詰められていた。
バケットからはみ出た前肢から、粘性を持った血が滴り落ちる。

 ロンの意識がトびそうになる。

 イタグレ属の男がブッチリーノの代わりに言う。

「この医者は、結局ドンの咳の症状を治せなかったんだ。散々注射やら採血やらさせておいて、この前のレントゲン検査で、さらに酷くなってます、だなんてぬかしやがった。
この結果は当然だよな。お前らも、こうならないように、しっかりとドンを頼んだぜ」

 震えを隠すことのできないロンの横で、ようやく院長が口を開く。

「さっきカルテを見ました。咳が治らないのは当然です。肺水腫になってるのに、飲んでるのはエース阻害剤だけではね。利尿剤と気管拡張剤をすぐに追加します。幸い、腎臓はまだ丈夫みたいなので」

 目の前の異常な光景にも全く動じずに治療方針を話す院長に、場の誰もが唖然とした。
そのことも気にしていないかのように、院長は続ける。

「ステロイド剤は中止します。代わりに免疫抑制剤とシャンプー療法で皮膚炎は対処します。インシュリンも今使用しているのを止めて、俺の指示する薬を使ってください。
食餌も管理させてもらいます。俺の指示するフードをすぐに取り寄せて、決まった時間に決まった量を食べてもらいますから」

 イタグレ属の男がドスの効いた声で言う。
「てめぇ!ドンに指図するってぇのか!?今この場で撃ち殺されてぇか!」

 ロンはすぐに謝ろうとしたが、先に院長が口を出した。

「治りたいんですよね?なら、俺を信じてください」

 これまで眉一つ動かさなかったブッチリーノの表情が一瞬緩んだように見えた。
そのただの一言は、奇妙な程に彼の心を掴んだようだ。

「・・・・信じろ?・・・か。初めて言われたな、そんなこと・・・・治せるか?」

「俺の治療方針に従うなら。あなた次第ですから」

「いいだろう。あんたの言う通りにしよう。アラン、すぐにこの男の言う薬とフードを手配しろ!」

 イタグレ属の男はアランと言うらしい。
アランは院長を一度睨んだ後、扉の外へと走った。

「あと、もう一つ」院長が繋がれたクーを見て言う。

「何だ?」

「そいつでの”戯れ”は、もう止めた方がいいですよ。”濃厚接触”が過ぎますぜ」

この男は、突然、何を・・・・!?

 クーは鼓動が急激に早くなるのを感じた。





 マメシバ属の會長は、甲斐属のカイを引き連れ、趣味の幻獣狩りを楽しみながら”今後の予定”について話し合っていた。

「お前んとこのロンって土佐属の男から、何か連絡はあったのか?」
 會長は猟銃を構え、数百メートル先のユニコーンの母子を狙う。

「は!上手く潜入に成功したそうです」

「そうかぁ。よくやった。これでお前ぇに気持ちよく”親子盃”やれるってもんだよぉ!頑張ってくれ!」

「は、はい!ありがとうございます!」

 親子盃を貰えることは、今後の組織の主導権を甲斐・土佐組連合が貰えることを意味していた。
會長引退後の椅子を、同系列の秋田組と争うカイにとって、今回の計画は命に代えても成功しなければならなかった。

「早速だがカイよぉ?ブッチリーノがシノギでやってる獣身売買のシンジケートの情報が欲しい。今度どこで取引が行われるのかとか詳細な情報がな」
 母ユニコーンが少し動いたので、會長は標準を合わせ直しながら言った。

「は!直ぐにロンに伝えます。」

「あともう一つ、ブッチリーノの方からも”野犬”が入り込んだらしい」

「まさか!?」

 草をせっせと食べる子供のユニコーンの背中を、母親が優しく頬で撫でおろしていた。

「お前ぇ、徹底的に調べろ。そして、消せ!」
 會長の猟銃の音が、山中に響き渡った。

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