大人オリジナル小説

ケモナーズ・メディスン ~ 獣人界の獣医師 ~
日時: 2017/01/25 13:17
名前: アスペル亀
参照: http://ncode.syosetu.com/n0674do/

犬科、猫科、ウサギ科、etc...
多種多様な獣人たちが暮らす現代社会を舞台にした医療小説です。
獣人の世界で活躍する人間の獣医師が診る、症例と獣人生の物語。

動物病院はもちろん、保健所での安楽死や食肉処理施設の屠殺解体などの社会のタブーも題材にしています。
ファンタジー世界ではありますが、内容はできる限り現実を投影させています。


*他サイトにて投稿中だった作品の中から、特に反響が多かったエピソードをピックアップしています。
ケモナー好きな絵師様、ガチで募集中です。

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Re: ケモナーズ・メディスン ~ 獣人界の獣医師 ~ ( No.21 )
日時: 2017/01/25 13:09
名前: アスペル亀
参照: http://ncode.syosetu.com/n0674do/

 バーバリは宮殿へ戻ってからも終始ふてくされていた。
マンチカン属の高官が困り顔でフォローを続ける。

「プリンセス、あんな下賤な人間属の言うことなんて気にしてはなりません。
それよりも、貴女をあんなところでバイトさせたなんて知れたら、お父様がどれだけお怒りになることやら・・・」

「あなたはお父様の顔色がすべてなんでしょうね?あたしのことなんて見えてないんだから、ほっといてよ!」」
 バーバリは皮肉たっぷりに言い返す。

 これまで、この宮殿内だけが彼女の世界だった。
必要なものはすべて側近のメイドが用意し、自分で自分の行動予定を立てることも不要だった。
この中では、何でもしてくれる。しかし、何一つできることはなかった。

 その結果があの恥辱だ。
あの獣医師に睨まれた時、あたしは世界では全くの無力だと気づかされた。
いままで認識してきた世界は、周りの甘やかしによって成り立っていた、飼い猫の世界だったってことに。

「あたしは自立したいの!自分の足で、歩ってみたい」
「お気持ちはお察ししますが、プリンセスにはこの国の象徴として、多くのご公務に勤しまなくてはならない義務が・・・」
「なら、だれかをあたしに変装でもさせてたらいいじゃない!居ればいいんでしょ?プリンセスが居れば!」
 高官は、癇癪を起すバーバリに対し、その提案も悪くないと一瞬思ったが、やはり保身を考えると賛成はできなかった。

「そろそろ、北の王国の首相との晩餐会のお時間です。こちらにドレスをご用意してありますので、メイド達に着替えさせてもらって・・・」

「服ぐらい自分で着れるわよ!」

 バーバリは衣裳部屋に入り、カーテンを引きちぎる勢いで閉めた。
ここから逃げ出せる場所がないか、宮殿の内部の構造を思い出したが、とても実行できる力は自分にないと思い知らされるばかりだった。

外に出たい・・・
呼吸が変になりそう・・・

・・・・院長先生

 バーバリは自分の胸を圧迫しだす不思議な感覚にしばらく酔いしれた。






 ニュースでは、北の王国で起きているある異常事態が連日で報道されていた。
この国も対岸の火事では無いことから、多くの報道関係者がこの話題を追っていた。


 食肉用ウシ科獣人から、BSE陽性!

 古来より畜産国であり、産業幻獣の酪農が盛んな北の王国では、ウシ科獣人を乳用、及び食用として育成する文化も存在し、その扱いや倫理面から多くの非難が寄せられており、今回の事件でその反感はより一層強くなることが予想される。



「あちゃ〜、もうこれでこの国は終わりっすね。罰っすよ、罰。あんな可愛い女の子たちイジメて、最後は喰っちゃうんだから」
 一面トップの新聞記事に、ロンは得意気に持論を語る。

 院長はパソコンのメールをチェックしながら静かに返す。
「俺たちだって、クジラ科獣人育てて喰ってるじゃねーか」
「あれは水性獣人だから幻獣の部類ですよ。それに上手いじゃないっすか〜」
「お前の好物、何だっけ?」
「牛タンっす〜」
「・・・」

「それにしても、あのお姫さん、また来たりしませんかね?看護師でいいから雇えだなんて、この仕事舐めてやがりますよ。まぁたしかに美人で紅一点にはもってこいかもしれないっすけど、俺に調教任せてくれるならなんとか一任前にはしてやりますけどね」
 ロンは、バーバリを入れたいようだった。

 院長は話を全く聞いていない様子で、一つのメールを熟読している。
同じ人間属の獣医師、ジュンコからだった。

「よぉ、院長。今度の北のBSE査察、お前も参加しろ。断るなら全力であんたを潰す。OKなら返信よこせ」

 院長は何も書かずにそのまま返信をした。






 北の王国
 神獣歴135295年度畜獣女品評会

 全国の畜用ウシ科獣人が集められ、その”育成”具合を競う国民的行事であった。
幼獣時より畜主に飼養され、その躰付き、容姿、調教具合、性感部の感受度などが品評される。

 連れられたウシ科獣人たちは、上は24〜25歳から、下はまだ10代にも満ちていないような幼獣女までいた。
全員、手枷をされ、各々が鎖で繋がった首輪を付けられ並ばされる。
貞操帯以外は身に着けさせられているものは無く、搾乳作業で酷使された大小様々な乳房を全員が突き出している。

 どの獣人も、飼育家の生活が懸かってる”商品”なだけあり、顔だちから足の先まで、男獣人をそそる躰に仕上げられている。
しかし、ほとんどが見えない箇所に痣や傷を持ち、日々の過酷な調教飼育はなるべく隠そうとする風潮もあった。

 ボヴィーナは過去2回連続で最優秀畜獣女に選ばれていた最高の品だった。
今回の大会でも優勝候補の彼女の躰に触ろうと、多くの来賓が群がった。

 無数の男獣人がボヴィーナの躰を貪る。
乳頭に吸い付き汁を味見しようとする者や、花輪を吊り上げ歪む表情を堪能する者もいた。

 赤らんだ彼女の頬を一筋の涙が通るのを、誰も気にしない。

 その瞳は、ただ遠くの空を見つめていた。

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