大人オリジナル小説
- ケモナーズ・メディスン ~ 獣人界の獣医師 ~
- 日時: 2017/01/25 13:17
- 名前: アスペル亀
- 参照: http://ncode.syosetu.com/n0674do/
犬科、猫科、ウサギ科、etc...
多種多様な獣人たちが暮らす現代社会を舞台にした医療小説です。
獣人の世界で活躍する人間の獣医師が診る、症例と獣人生の物語。
動物病院はもちろん、保健所での安楽死や食肉処理施設の屠殺解体などの社会のタブーも題材にしています。
ファンタジー世界ではありますが、内容はできる限り現実を投影させています。
*他サイトにて投稿中だった作品の中から、特に反響が多かったエピソードをピックアップしています。
ケモナー好きな絵師様、ガチで募集中です。
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- Re: ケモナーズ・メディスン ~ 獣人界の獣医師 ~ ( No.11 )
- 日時: 2017/01/25 12:56
- 名前: アスペル亀
- 参照: http://ncode.syosetu.com/n0674do/
都心から少し離れた緑豊かな高級住宅地。
そこに千坪は超える敷地に建てられた和風の大邸宅に、数台の黒塗りベンツが入り込む。
柴組連合會の総本山である。
柴、秋田、土佐、甲斐の四大勢力を取り仕切る柴組の組長である會長がそこにいる。
マメシバ属の小柄な風貌は、とても任侠会のボスとは思えないほどの幼さを印象付けるが、組織の黎明期から生き抜いてきた大長老は、どの構成員たちからも敬わられ、そして恐れられる確かなオーラを纏っていた。
甲斐・土佐組連合の若頭である甲斐属のカイは、ロンと院長を引きつれて長い和式廊下を歩く。
厳かな雰囲気に緊張するロンが、気を晴らす目的で院長へ言う。
「有難いことだと思えよ。俺だって初めて入れてもらえるんだ。會長に直々お会いできるんだ。會長はイヌ科の中のイヌ科で、お前のような人間属なんかペットにすらされねぇのが本来ってもんを・・・」
「ごちゃごちゃ五月蠅ぇんだよ、黙れロン!」
カイの恫喝にロンは萎縮し口を噤む。
「すまねぇ、先生。こいつみたいなのを部下に持つと、苦労するぜ?」
「ああ、そうみたいだな」
院長は全く落ちつた様子で返した。
三人は黒服の柴属の男たちが何人もガードをする會長室へと入る。
「義、忍、仁、愛、犬」と書かれた巨大な掛け軸をバックに、豪華な椅子に座り杖を立てたシニア犬のマメシバ属の男が睨みを付ける。
カイは姿勢を改め、視線をまっすぐ定めて言葉を発する。
「お世話になっております!會長!本日は、お伝えしていました獣医師をここへ連れて参り・・・」
「カイよぉ、お前ぇ、秋田組の若い衆をシメたそうだな?」
會長の言葉にカイはさっきのロンと同じ状態になる。
「ブッチリーノ・ファミリーと戦争になるかもしれねぇって時に、なに呑気に兄弟喧嘩してんだ?お前ぇはどこまで親不孝者なんだ?」
カイの血の気が引く。その緊張の中、ロンも生唾を飲む。
「秋田組の中に、うちの縄張りでのシノギを横取りしようとした者がおりまして、そのケジメとして・・・」
「言い訳なんか知ったことか!」
會長は持っていた杖をカイの頭へ振り下ろした。
全くの手加減はなく、甲斐の頭部から血が流れ出た。
ロンは尻尾が完全に又の間へ入り込んでおり、溢れる恐怖と動揺を抑えるのに必死なことが容易にわかった。
カイは動じずに、そのままの姿勢で話す。
「すみませんでした、會長。落とし前は、自分の肉球で・・・」
「お前ぇのカサカサな肉球なんて欲しくねぇよ。そんなことより、腹減ってねぇか?いいもん食わせてやるよ」
會長は側近の幹部に、カイへの”ご馳走”を持ってこさせた。
それを見て、カイは表情を歪めた。
ロンも思わず声を発する。
「ひでぇ・・・あんまりだ・・・・」
巨大な皿には、山盛りのタマネギが載せられていた。
「ささ、遠慮なんかいらねぇから、全部食ってくれよ?俺からのご馳走だ、食えねぇわけはないよな?」
「おじき!止めてください!イヌ科の俺たちがそんなの食ったら、貧血で死にますよ!」
ロンがたまらず叫ぶ。
「てめぇは黙ってろ!」
カイも叫ぶ。
ゆっくりと皿に口を近づけ、會長を睨んだ。
「・・・・いただきます」
カイはそのまま大量のタマネギにかぶり付いた。
手を出せないロンの目に涙が浮かび上がる。
何て言うケジメの付け方だ・・・
これが、柴組本家のやり方かよ?ブッチリーノ・ファミリーのことも言えねぇじゃねぇか・・・
全てのタマネギを平らげたカイを見届け、會長は今度は院長に話しかけた。
「それじゃあね、獣医の先生、どうする?」
「は?どうするも何も、タマネギ中毒には個体差あるだろ?症状でるまで数日かかることもあるし、それまで水を飲みまくるんだな。すこしでもアリルプロピルジスルフィドの成分を薄めておけ。
つーか、食ったの分かってるんだから、今吐けよ」
全くの動揺も無い院長の様子に、ロンは救われた想いが湧き出た。
「俺だったら、タマネギじゃなくてチョコレートを食わせるね。テオブロミンは数時間で確実に神経をヤレる。全身が硬直性の痙攣を起こして、周りをビビらすにはうってつけの症状だ。
ジアゼパムを打てばすぐ止められることもできるから、それさえ持ってりゃあ相手を脅すことだってできるしな」
ロンは、一瞬でも救われた想いを感じたことを後悔した。
會長は初めて笑顔を見せて言った。
「いいね、あんた!合格だ!チョコレートか〜、次はそうしよう!おい、カイをトイレに連れてやれ」
項垂れるカイをロンが誘導する。
院長を椅子に座らせ、會長は真剣な表情に戻り言った。
「先生、あんたにやってもらいたい仕事がある」
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