大人オリジナル小説

ケモナーズ・メディスン ~ 獣人界の獣医師 ~
日時: 2017/01/25 13:17
名前: アスペル亀
参照: http://ncode.syosetu.com/n0674do/

犬科、猫科、ウサギ科、etc...
多種多様な獣人たちが暮らす現代社会を舞台にした医療小説です。
獣人の世界で活躍する人間の獣医師が診る、症例と獣人生の物語。

動物病院はもちろん、保健所での安楽死や食肉処理施設の屠殺解体などの社会のタブーも題材にしています。
ファンタジー世界ではありますが、内容はできる限り現実を投影させています。


*他サイトにて投稿中だった作品の中から、特に反響が多かったエピソードをピックアップしています。
ケモナー好きな絵師様、ガチで募集中です。

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Re: ケモナーズ・メディスン ~ 獣人界の獣医師 ~ ( No.4 )
日時: 2017/01/25 12:51
名前: アスペル亀
参照: http://ncode.syosetu.com/n0674do/

Case 2 夜街の片隅で 


 高くそびえるオフィスビルが立ち並び、多様な科属が入り混じった無数の獣人の群れがスクランブルを行きかう世界。

 成獣不妊法が施行されても、獣人達の持つ果てしない欲求が渦巻く。
それでも健全を目指す街の中には、やはり日の当たらない闇社会が存在していた。

 裏風俗である。

 不妊法を免れる特権階級の獣人たちで営む合法の風俗店と比べ、未だ避妊を受けてない法対象の獣人を集めた法外の営業店の方が、実際の市場の中心を占めていた。

 女の子は全て訳アリ嬢の為、運営側からすればリスクは伴うがその分収益率は高く、何よりも”質的”面で圧倒的に合法店のコたちを上回っているという事実があった。

 バックには当然、任侠世界が絡んでおり、警察の末端組織とも密接に金やサービスのやり取りがあり、業界では事実上の公認状態となっていた。

 繁華街からあぶれた狭い路地裏の通り、とある雑居ビルの地下に一つの裏風俗店があった。

 どう見ても場違いな白衣を着た人間の男は、周囲の目線の一切を気にしていない様子で、その店の入り口へと歩いていく。

 ビルの入り口前に立つの若いボーイ(クマ科ツキノワグマ属)が、その男を制止する。
「お客さんですか?なら科属名言ってくれますか?」

 男はボーイをちらっと見たが、そのまま止まらずに入り口に入ろうとする。
「おい、あんた聞いてんのか、コラ?ちょっと待てよ!」
 ボーイが男の肩に掴みかかろうとした時、ビルの中から少し年配のボーイ(クマ科ヒグマ属)が慌てて出てきた。

「おいやめろ!この人に触るな!
 どうも院長、すみません、こいつまだ新人なんですよ、ささ入ってください」

 ヒグマのボーイに連れられて院長は、暗く狭い階段を降り、突き当りの何の装飾もされていない錆びた鉄鋼扉を開いた。

 中は階段の静けさとは一変して、激しいサウンドの音楽が響き渡り、色とりどりのライトが天井や壁を余すとこなく反射させている。

 目が慣れてくると、無数の仕切りが広がり個別のブースが何部屋か作られているのが解る。器用なことに、そのブースの中には光が入らないよう設計されていて、薄暗い赤や黄色の光が中から漏れ出ていた。

「ここじゃあ声がよく聞こえないんですが!奥は静かですんで!」
 大音量にかき消されないようにヒグマのボーイが叫び、院長をさらに奥の部屋へと案内した。

 店の音が少し遠くに感じられる廊下まで歩き、奥の何も書かれていない部屋の扉を入る。

 中には、パーマヘアーにアロハシャツを着た50代くらいのイヌ科コリー属の女性が、おそらく店の嬢だろう、ロングヘアーで下着姿の20前後と見られるイヌ科プードル属の女性に語り掛けている様子があった。

「よお。おばちゃん」
 院長が挨拶する。強面の表情を一切動かさず、露の笑顔も作らずに言うが、パーマヘアーの女は満面の笑顔で感情たっぷりに返す。
「院長ちゃ〜ん!来てくれはったんや!あんがとぉぅ〜!」

「まず最初にこれ、今月の分」
 院長は白衣のポケットからジップロックに入った大量の錠剤を取り出した。

「きゃ〜!ありがと〜!これで皆、虫予防ができるわ!」
 渡したのは寄生虫予防薬だった。

 獣人にとって、各々の科属で特異性はあるが、ノミ・マダニ、フィラリア、回虫などの寄生虫は天敵である。
特に体を商売としている風俗嬢にとって、こういった感染症対策は絶対にやっておきたいことであったが、裏風俗である以上、その予防薬の入手は一般的ルートでは不可能であった。

「はい、これ謝礼ね」
 院長は厚い札束を受け取り、白衣のポケットに押し込む。

「その子?」
 院長が部屋の隅で膝を抱えているプードル女性を見る。うつむいたまま視線は虚ろだ。
「名前は?」

「アンジーよ、源氏名やけどね」と、おばちゃんが言う。

「あんたに聞いたんだけど?なんかしゃべれんの?」

 次なる症例の獣人だった。

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