大人オリジナル小説

ケモナーズ・メディスン ~ 獣人界の獣医師 ~
日時: 2017/01/25 13:17
名前: アスペル亀
参照: http://ncode.syosetu.com/n0674do/

犬科、猫科、ウサギ科、etc...
多種多様な獣人たちが暮らす現代社会を舞台にした医療小説です。
獣人の世界で活躍する人間の獣医師が診る、症例と獣人生の物語。

動物病院はもちろん、保健所での安楽死や食肉処理施設の屠殺解体などの社会のタブーも題材にしています。
ファンタジー世界ではありますが、内容はできる限り現実を投影させています。


*他サイトにて投稿中だった作品の中から、特に反響が多かったエピソードをピックアップしています。
ケモナー好きな絵師様、ガチで募集中です。

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Re: ケモナーズ・メディスン ~ 獣人界の獣医師 ~ ( No.22 )
日時: 2017/01/25 13:09
名前: アスペル亀
参照: http://ncode.syosetu.com/n0674do/

屠畜場内では、法律の下に屠殺された産業幻獣の解体作業が大勢の作業員たちの手によってコンベアー方式で執り行われている。
ペガサス類の羽を切り落とす者、ドラゴン類の鱗を剥がす者等
頭と内臓はそれぞれのレーンに乗せられ、一つ一つ病変が無いかを検査員が確認する。

 作業員の一人であるレミルは、流れてくる胴体の背割り作業を任されていた。
その日はペガサス農家からの大量搬入で、いつもの1.5倍の稼働を強いられた。

 逆さに吊るされ運ばれてくる屠体は、死んでからまだ数分も経っていないせいだろうか、頭部も手足も無い状態でも、剥皮され顕になった筋肉の部分部分がピクピクと震えている。
まだ体温の残る全身からは湯気が立ち上り、作業をする彼の眼鏡を曇らす。

 レミルは電動ノコギリを屠体の脊柱に平行して二つに切り分ける。
それぞれ単純作業で分けられたうちの一つの業務だったが、一般獣人の二倍も三倍もあるペガサスの胴体を正確に切るのは、かなりの足腰への労力を要した。
今日は百頭以上は処理をし、業務が終わったのはもう夕暮れ時だった。

「くそっ、今日は数が半端ねぇ日だ。腕の感覚がねぇよ」
 レミルが休憩所で同僚に愚痴る。

 激務の後の疲れを、缶コーヒーと煙草で共有する同僚も頷いて応える。
「マジでそうだな。俺も内臓検査だったけど、流れてくる量がマジ半端なくって、どれがどのロットの内臓か分からなくなりそうだったわ」
「これもウシ科から出たっていう例のBSEの影響なんかな?」
「ぜってぇそうだろ。このままだとこの国の食肉産業はストップしちまうかもしれないからな。農家も慌てて”在庫”を残さないよう今のうちに持ってくるんだわ」
「つーと、俺らも仕事無くなるってわけ?ヤバくね?」
「上のお偉いさんたちは、失業保障とか考えてくれてないみたいだぜ。今は”火消し”でそれどころじゃないって話だ」
「マジかよ?ひでぇな。俺たちにはこの仕事しか無いっていうのに・・・」

 同僚の缶コーヒーを啜る音が、寂しく響く。
レミルも短くなった煙草を限界まで吸い込む。

「おい見ろよ、アレだぜ」同僚が遠くの別棟の入り口に目をやる。
 レミルは眼を細めて何とか裸眼で目視しようとする。

 その棟の前には大型のトラックが止まっており、荷台からは”積み込まれていた”ウシ科の畜獣女たちが、鎖で繋がれ並ばされていた。
全員、裸である。白と黒のコントラスが強調された躰が、ホルスタイン属の獣人たちであることをすぐに認識させた。

やべぇ、すげ〜いい乳・・・

 レミルは裸眼をやめ、すぐに眼鏡に切り替えた。
「どうせあいつら、あそこで屠殺されるんだろ?最期に一度ヤらせてくれてもいいのになぁ」
「マジか?お前相当溜まってんな〜」
 同僚が吹き出す。
「あ、そうかお前、確かまだ童貞だったな、ぷくくくく」
「いや違うから。俺はデキないんじゃない、やってこなかったんだ」
「酷い負け惜しみだぜ〜。何なら今から彼女らに頼みに行ってみたらどうだ?誰か一人ぐらいはヤらせてくれるかもよ?」

 レミルは、鎖に引きずられながら棟の中にゆっくりと歩かされる彼女たちの方を見つめている。

「おい、まさか本気にしたんじゃねぇーだろうな?ジョーダンだよ。お前は真面目っつーか、そういう所あっからよ。今夜、風俗行くか?アンジーちゃんっていう、超A級のトイプー属のコが入ったらしいぜ!」
「いや、本気になんかしてねぇし。俺はただ・・・」

 突如、レミルの携帯が鳴る。
レミルは、着信者の履歴を見て、慌てて応答した。
まだ付いてる煙草の火を消すことよりも、それは優先された。

「はい、レミルです!ただいま作業員の休憩所に同僚とおります」
「おい!俺のことまで出すなよ!」
 その電話の向こうに誰がいるのか、同僚も悟ったようだ。

「おい・・・・レミル・・・・・120秒で来い・・・・・・お前にやってもらいたいことがある・・・・」
 電話が切れ、瞬間にレミルは走り出す。
落ちた煙草を同僚は拾って代わりに灰皿に入れる。友人としてレミルの立場を憂えた。


 レミル・ラブラドール
イヌ科レトリバー属の獣人。男性。34歳(=彼女いない歴)
全身黒色の被毛を持ち、瞳も鼻も何処に付いてるのか一瞬わからないことからイジメられてきたが、今では自虐にしている。
由緒ある血統に生まれたが、生まれつきレトリバー属としては体が小さく、学才もあまり芳しくなかった為、家計からは出来損ないの烙印を押され育ってきた。
かつての夢は警察庁に入り嗅覚捜査官となることだったが、それも終入れ、屠畜場の作業員として勤務をしている。

 現在、人間属の獣医師、そして北の王国の食品厚生省食肉衛生検査技師長ジュンコの、パシリ一号に君臨していた。

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