大人オリジナル小説

ケモナーズ・メディスン ~ 獣人界の獣医師 ~
日時: 2017/01/25 13:17
名前: アスペル亀
参照: http://ncode.syosetu.com/n0674do/

犬科、猫科、ウサギ科、etc...
多種多様な獣人たちが暮らす現代社会を舞台にした医療小説です。
獣人の世界で活躍する人間の獣医師が診る、症例と獣人生の物語。

動物病院はもちろん、保健所での安楽死や食肉処理施設の屠殺解体などの社会のタブーも題材にしています。
ファンタジー世界ではありますが、内容はできる限り現実を投影させています。


*他サイトにて投稿中だった作品の中から、特に反響が多かったエピソードをピックアップしています。
ケモナー好きな絵師様、ガチで募集中です。

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Re: ケモナーズ・メディスン ~ 獣人界の獣医師 ~ ( No.9 )
日時: 2017/01/25 12:55
名前: アスペル亀
参照: http://ncode.syosetu.com/n0674do/

 ロンは黒塗のベンツで街中を快走する。
道路はやや停滞気味な車群が一定速度で進んでいるが、そこだけぽっかりと空間が与えられたかのように近づく車はない。

「これからお会いするお方には決して失礼の無い様にな!でないと、お前なんてあっという間に湾の底だぜ!」

 ロンは助手席に座る院長に恐怖を植え付けようとする。
院長は終始憮然としている。
反応の無いことにイラつき恫喝を入れようと思ったが、彼を送り届けることが今の仕事。余計なトラブルは生みたくなかった。

 車は古い雑居ビルの密集する狭い路地に入る。
日中を通して日の当たらないだろう、細長い数階建ての建物の一室に向かった。

「なんだよ?お前、保険局の獣人じゃねぇのか?」
 院長が初めて声を発する。

「は〜?そんなこと言ったか〜?お前の勘違いじゃねぇの〜?」

 二人が入ろうとした部屋の扉ガラスには、”柴組系列、甲斐・土佐派閥連合會連絡事務所”と書かれていた。
国内最大級の指定暴力団組織で有名な柴組の舎弟組織、甲斐・土佐組の”縄張り”だった。

「おじき!例の獣医を、連れてきました!」

 ロンが扉を開けると同時に、大声で中の構成員たちに叫ぶ。

 屈強な体格に、傷だらけの厳つい顔面をしたイヌ科の男たちが、一斉に睨みをきかせる。
部屋の中はタバコの煙が充満していて、ヤニのこびり付いた天井や壁に、ほとんど機能していないだろう茶色い換気扇がくるくる廻る。

 扉から中央のテーブルを挟んで窓際には、事務所のトップだろう、片目の潰れた年配風の甲斐属の男が腕を組み眼を飛ばしている。

「いよ〜、そいつか?ロン?人間属たぁ驚いたぜ?」
 手前のソファーに腰掛けるサングラスを掛けた幹部が話し出す。

「まぁ、先生や、よく来てくれたねぇ。悪いけど、ちょっとだけ待っててもらえるかい?」

 サングラスの幹部は、対面側に座る秋田属の男を向く。
まだ若い青年であろう秋田属の彼は、利き腕には小刀を持ち、もう片腕の手のひらをテーブルの上に広げていた。

「うちの派閥はすんげぇ優しいからよ〜、秋田犬のワケェもんの”これ”で、”示し”を付けたってことにしてやらぁ。ほら、やれよ。」

 秋田属の男は小刀を自分の肉球に突き刺す。
どす黒い静脈血が溢れ出て、たちまちテーブルを染める。
血管がちぎれる程に顔面に力をいれ、歪みの限界を超えた表情のまま、なかなか切り落とせない肉球についに叫び声が上がる。

 数分かけて、ようやく肉球が腕から分離した。

 秋田属の男は直ぐに傍に会ったガーゼで止血をする。
苦痛に悶えた顔面の赤みはなかなか引かず、全身の筋肉が硬直したまま痙攣を続けている。

 サングラスの男は切り落ちた肉球をガーゼで包み、甲斐属の男に渡した。
その男は、それを直ぐにゴミ箱へと放り込んだ。
熟練されたドスの利いた声で、話し出す。

「はい、ごくろうさん。もう帰っていいよ。お前んとこの親分に言っとけ!どっちが本当の柴組の盃相手か、よく考えろってな!」

 秋田属の男は、引きつった顔面のまま痛みと悔しさに悶える。

 終始、ここでの”やり方”を院長に見せつけてやれたロンは、得意気に話す。

「どうだ?あんたもああなりたくなけりゃ、大人しく俺らのいうこと・・・・って、おい!」
 院長はロンの話を無視して、秋田属の男に近づく。

「俺んとこ来りゃあ、肉球治してやるよ。治療費さえ払えばな」

この状況で、この男は何を言ってやがる・・・?

 現場の誰もがそう思った。

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